飯塚祐紀 七段vs塚田泰明 九段 NHK杯 1回戦
解説 森下卓 九段

清水「みなさま こんにちは ごきげんいかがでしょうか 司会の清水市代です 競い合い高め合う、技と読みの数々 今日はどんなドラマが生まれるでしょうか」
清水さんの前説、毎回違うことを言ってくれるんだよね 面白いわ
そして、髪型も毎回違う! 今回は髪が上にボリュームアップして、男の子みたいになってる
正直、似合っていないけど、毎回違うので楽しい 毎週楽しみにしているよ

さて、今週は飯塚と塚田か ベテランどうしで、え~っと正直、このメンツでは先週より客が減るな(^^;
でも勝負の内容がどうなるかは、わからんもんね 好局を期待だ

飯塚は1992年四段、竜王戦4組、B1 予選シード NHK杯本戦は6回目の出場
塚田は1981年四段、竜王戦4組、C1 予選で門倉、青野、瀬川に勝ち 22回目の本戦出場
ちなみに、門倉戦は千日手、青野戦は千日手が2回続いたとのこと 激戦を勝ち抜いてきたとのことだ

解説の森下「相居飛車の中でも、横歩取り系の将棋になるのではないか 棋風的には、飯塚は受けに強い、塚田は攻め100パーセントのキャッチフレーズがありますので、受けvs攻めの、せめぎあいになるんじゃないかと思われます」

事前のインタビュー
飯塚「塚田先生は以前研究会などで色々と将棋を教えていただいた先輩です すばらしいキャリアと華麗な攻めを持った、立派な棋士だと認識しております 塚田先生は攻め将棋なので、私は距離をとって、丁寧に一手一手指してみたいと考えています
 NHK杯は色々なファンの方によくお声をかけていただきます 一つでも多く勝てるように心を込めて指せればと思っております」

塚田「飯塚七段は非常に粘り強くて終盤が崩れないという印象です たぶん相居飛車の将棋になると思います たぶん8年ぶりの出場だと思いますので、1回くらい勝ちたいと思います」

先手飯塚で、ノーマル角換わりになった 私は、やったーと思った 
私は横歩取りよりも角換わりが好きなのだ(^^;  相腰掛け銀の定跡形に進んだ 
森下「塚田は、十八番の横歩取りをせずに、角換わり腰掛け銀で受けて立とうということなんですね 最近流行りの一手損角換わりに対して、これは正統角換わりという名前がついています」

後手の塚田が何気なく右桂を跳ねて攻撃の準備をしたが、これに森下が反応
森下「これぞ塚田九段、という手です 常識では『後手としては避けたい』と言われている局面に誘導した 塚田があえて指しているので、何らかの意図があるのだろう」

飯塚から先攻した 例によって4筋からの仕掛けだ
森下「飯塚の攻め方は、一気に決着をつけるのではなく、ゆとりを持たした手順です」
解説だが、森下はうまく、丁寧にしゃべってくれる
清水「角換わり腰掛け銀は、定跡を知らないと、怖くて指せないですね」
森下「定跡を知らないと、一番ひどい目に遭う戦型です 研究が命の将棋です」
まだ仕掛けの段階だが、私はすでにあまりの難解さに、「角換わり相腰掛け銀の定跡を勉強しよう」
という気は完全に失せている(^^;

塚田からも攻め、攻め合いになった
森下「塚田は中学2年でアマチュア準名人、16歳でプロデビュー」
それはものすごい経歴だね 今の塚田は活躍していないが・・・(^^;

さて、森下によると、昔の竜王戦での▲谷川vs△森下とほぼ同じ局面に進んでいるとのことだ
塚田の△6四角に、飯塚の▲5九角という受け、これも前例どおりとのこと
塚田の跳ね出した桂が負担になるかどうかか 盤上全体を使った、すごい難しい局面になってるなー! 
う~ん、これ以上ないくらい、本格的な将棋だ 角換わり腰掛け銀の教科書に載ってそうな局面だな

ここで、森下がギャグを出した
森下「飯塚が、距離をとって戦う、と言ったのは、座る位置のことだったのでしょうか(笑)」
飯塚、そうとう盤から離れて座ってるもんね(笑)
清水「飯塚は、『いーちゃん』と呼ばれてみんなから慕われている 飯塚の好きな言葉は、『時間は前にしか進まない』ということだそうです」
森下「私が感心した言葉は『過去から見たら今が一番年を取っているが、未来から見たら今が一番若い』という言葉です 若い頃、これを聞いたときは、ふ~ん、としか思わなかったんですけど、年を取った今は、なるほどと思うようになりました」
うむ・・・ もう自分も年だから、とあきらめるのではなく、今が一番若いんだ、と思って何でも
チャレンジすべし、ということだね 私も覚えておこう

局面、飯塚が念願の桂得を果たした
森下「桂は取り頃でしょう この桂得は、こうなってみると痛かったかなと思われる」
ちょっと飯塚がいいのか・・・ 塚田、何か挽回する手はあるか? 
塚田が思わぬところに銀打ちの勝負手を放ったが、森下には完全に読み筋だった
森下「この銀は、飯塚の駒組みの死角を突いた一着と言えます」
てきぱきとその手の意味を解説する森下 うわー、さすがにタイトル戦で類似の局面を指しているだけあって、手がすごい見えてる! 今日の森下はつえーな 

飯塚の飛車がついに攻撃に参加した
森下「もう受けがないです」
この日の森下は解説が冴えていて強かった そして、解説どおりに指した飯塚も強かった
即詰みに討ち取り、全く危なげなく、きれーいに勝利! 97手で飯塚の勝ち さすが、B1だけあるわー

局後、森下「この定跡は、ちょ~っと後手がつらいと言われている定跡なんですよね それを塚田先生が指されましたから、う~ん、やっぱりなかなか定跡をくつがえすというのは容易じゃあなかったでしょうかね」

前例どおり、定跡どおりに指して負けた塚田、いったい何がやりたかったのか・・・(^^;
塚田にとっては、せっかく厳しい予選を勝ち抜いてきたのに、この内容では残念だっただろう
しかし、私にとってこの一局、一時間半、たっぷりプロの角換わり腰掛け銀の定跡の棋譜並べの実演を堪能させてもらい、非常に充実した時間だった 森下の解説が良かったしね 
飯塚は全くノーミス、疑問手ゼロの会心譜だったね 腰掛け銀講座のような内容の一局だった
NHK杯もまだ1回戦だし、こういうのもあってもいい さあ、来週はハッシーの登場だ 全力で応援したい