一点突破 岩手高校将棋部の勝負哲学
岩手中・高等学校 囲碁将棋部顧問 藤原隆史著   観戦記 大川慎太郎著
ポプラ新書 780円+税 2014年6月5日 第1刷発行
評価 A
コンセプト<生徒を伸ばし、大会に勝つための、今まで岩手高校で培ったノウハウの数々を名顧問が語る  そして、2013年全国高等学校総合文化祭の観戦記>

中学・高校の部活動が強豪であるかどうか、それは顧問の先生が熱心かどうかに懸かっている・・・ そんな風に思っているのは私だけではないでしょう
どんな部であれ、毎年、強い部があれば、それはもうほぼ100%、顧問の先生が熱心である部です この岩手高校将棋部も、そんな部です 顧問の藤原先生が、とにかくすごいです この本に書かれてある、これだけの哲学と、強くなることへの執着心を持っていれば、7年連続表彰台も理解できます とにかく、いいと思ってやれることは全部やる、といった感じです それも、部員も顧問も、日々楽しそうに部活をやって、結果を出しているところがすごいです 部活に出るかどうかも、その日何をやるかも部員の自由、学年での上下関係もない、革新的です

フジTVが同校を取材して放送した「ザ・ノンフィクション 偏差値じゃない ~奇跡の高校将棋部~」も、私は観ましたが、その中でも藤原先生は、部員の活躍をスポーツ新聞みたいな記事を作って壁に貼り出してやる気を出させたり、部員の中川慧梧君を乗馬クラブへ連れて行って馬に乗せて姿勢を良くさせたり、と、非常にユニークなやり方で指導していました 何より、弱く自信のなかった部員にわざと下級生たちの指導をまかせ、化けさせたのは感動的でした  

藤原先生は岩手高校のOBなのですが、自身は高校時代、「ペンフレンド部で、もの足りない3年間を過ごした」とのことでした  ご本人にそんな思い出があるからこそ、楽しく充実した部活にしてやりたい、という気持ちが強いのかもしれません そして、その超熱心な顧問に報いたい、団体戦に勝つことでお礼をしたい・・・ そういう部員たちの気持ちが、岩手高校将棋部の強さになっているのでしょう 

フジTV「ザ・ノンフィクション」の最後のナレーション
「人生の豊かさは、胸を熱くした思い出や、涙にくれた切なさの数で決まるはず 夢中になること、勝っても負けてもいいから何かに没頭すること 人生の行方を決めるのは、偏差値じゃない」
(今なら、ネットで検索すれば、この番組は観れます)

私も、こんな先生に出会いたかったですねえ・・・ 2013年の高校選手権の観戦記の記事も、よく出来ていて、団体戦の臨場感が味わえます 高校野球を観るのもいいですが、夏の高校将棋も観戦に値しそうだと思いました 囲碁将棋チャンネルで取材してくれませんかね そのための専門チャンネルでしょう

以下に、本文より、私が特に心に残った箇所を、挙げておきます

「私も授業以外に年間100日くらい部の遠征などで出張しているが、生徒たちの成長を実感できる楽しさがあって、これを辞めたいと思ったことは一度もない。誰かの成功例をそっくりそのまま真似するのは、極めてナンセンスだ。他人の成功例は参考程度でいい。(中略)「自分たちにできるやり方で一番よい方法は何か」を試行錯誤すること。そして体験から得た実感や反省など、自分でなければ知り得なかったことから多くを学ぶこと。成功の秘訣は、じつは他人でなく自分の中にある。世の中には、社会人になっても学校に嫌な思い出があって在籍していた歴史さえ抹消したいと思っている人もいるだろう。しかしいったん岩手高校で預かったからには、そんなふうにはさせたくない。(中略)とにかく「学校へ行けば仲間に会えるから」ということでだんだん楽しくなるような環境を作ること。楽しくなければ生徒は来ないのだ。」