広瀬章人 八段vs森下卓 九段 NHK杯 1回戦
解説 阿久津主税 八段

遅めの更新になってしまい申し訳ない 私は体調が悪いと寝ているしかないので、そこは勘弁してほしい 
清水「日曜のひととき、研ぎ澄まされた好手、妙手の数々をお楽しみください」
あれ~、清水さん、それ、前にも言ったよ もうセリフがネタ切れか(^^;
今日は広瀬(27歳)と森下(47歳)か 新A級の広瀬は、講座の講師をしていて、もちろん楽しみだが、森下は電王戦に出る前から好調で、今、銀河戦では3連勝中なのだ けっこう注目の一戦だ

広瀬は2005年四段、竜王戦2組、A級 予選はシード 8回目の本戦出場
森下は1983年四段、竜王戦2組、B2 予選で横山、石川に勝ち 24回目の本戦出場

解説の阿久津「広瀬さんは現代の若手の将棋、主導権にこだわる将棋 ずーっと受けに回るのを嫌う どんどん攻めをつなげていくのがうまい  森下は人柄はまじめで、それが将棋にも出ている 手厚い棋風で一手一手着実に進めてくる なかなか崩れないのが持ち味」

事前のインタビュー
広瀬「森下九段は居飛車党の本格派というイメージですね 手厚い棋風なので押さえ込まれないように気をつけたいと思っています  戦型予想は、振り駒の結果によって最近は変えているので自分次第によって戦型は決まるかなと思っています 4月から講座の講師を務めていますので、なるべく長く一局でも多く指したいというのが本音なので、まずは今日の対局をがんばりたいと思います」

森下「広瀬さんは彼がまだ中学2年生で、奨励会二段のときから知っているんですけども、とほうもない天才だと思いましたね 実はNHK杯は5年ぶりの出場なんですけども、いきなりその天才と当たって(^^; しっかりがんばりたいと思います」

阿久津「広瀬がどんな戦型を選ぶかわからないが、森下が受けてたつ展開になるだろう」

先手広瀬で、対局開始 広瀬の戦型選択ががぜん注目された ここは振り穴をやって欲しい・・・!
講座であれほど詳しくやっているんだもの、振り穴を選ぶ一手! と思われたが、違った
広瀬は矢倉を選択 あらー まー、しょうがないか 今の広瀬は、先手なら居飛車ということか

森下が矢倉に追従し、がっぷりの相矢倉コースか、と思われたが、なんと森下が変化した
急戦矢倉の右四間だ(ただし腰掛け銀ではない)
私は、おおーやったーと思った 私は急戦矢倉が大好きなのだ(^^;
この森下の作戦は、ちょうど3日前に銀河戦で放送があった、▲高橋vs△森下で、森下が採用した作戦ではないか その将棋は、森下が怒涛の攻めを敢行して、快勝譜を作り上げている
(対局日は2014年4月10日)

阿久津「森下の作戦は、主導権を握ろうという積極的な作戦なんです でも、最後に玉の薄さがたたって、負けてしまうことが多い」
うむ、そのとおり しかし、だからこそ、ロマンがある戦法と思う これで後手が勝てれば、相矢倉という戦型自体がなくなるのだからね

駒組みが続く 両者、居角のまま待機している 森下はカニ囲いから雁木に組み替えて戦機を待つ
両方の端も突き合い、そろそろ駒組みが飽和か、と思われたところで、広瀬から仕掛けた
それに応えて、森下も攻めた
阿久津「どっちが早いかという攻め合い 私は森下のペースだと思いますね」
おお~、早くも阿久津が森下ペースの発言だ いっけ~、森下、急戦矢倉で矢倉をつぶせ~!

広瀬が長考しているので、雑談になった
阿久津「森下システムという、森下の名前がついた戦法があるが、それは森下の棋風が出てる戦法なんです 矢倉の先手番の戦法なんですけど、相手が攻めてきた形によって受けに回る、相手が攻めてこなければ、充分な形を築く」
うむ、ここの阿久津の説明はわかりやすかった

阿久津「私がNHKの将棋講座の講師をしていたときは、NHK杯の1回戦で負けると、ちょっとこの後やりづらいなあーと思って対局していました 広瀬さんも今、そのプレッシャーと戦っているんですかね」
うん、きっとそうだろう 1回戦で勝てば、2回戦まで間があるから、その間ファンから応援されるだろうしね

清水「森下は、最近、座右の銘を、『淡々』から『情熱』に変えたそうです」
これ聞いたことがある ここ最近の森下はやる気が復活したようだね 

森下の攻めに対し、広瀬が時間を使っている 森下の攻めは継ぎ歩から桂を使おうという、かなり自然な攻めで、読みやすいところなのだが・・・
阿久津「広瀬の時間の使い方は変調 苦しいと思っているのだろう 広瀬らしくない使い方」
残りの考慮時間が、広瀬▲3回vs森下△8回まで差が開いた どう処置するかと見ていると、広瀬の決断は、9筋の歩を屈服! 9筋が一方的に詰められてしまった 
うーん、こういうことになって幸せになった人を見たことがない 広瀬、つらいなー

ただ局面、まだまだ先は長い 森下は攻撃の第2派、角道を開けて、総攻撃だ
広瀬も局面を複雑にさせて踏ん張る 中央で歩が3つもぶつかり、面白くなってきたー
清水「激しくなってきました」
阿久津「森下は一番最強の手段でいきましたねえ」
清水「『情熱』ですから」

森下、優勢なのだろうが、どうするのか 私にはどう攻めをつなぐのか見えない、と思っていたところ、なんと、飛車をズバッと切っていったーーーーー おおおーーー これは決断の一手!
そうかそれで角を出ておいて、良しということか ってあれ? 今、飛車を渡したから、王手角取りがかけられてしまうじゃん! えええ、まさか、見落とし?? 王手角取り、見落としか??
も、森下ならやりかねん! 大ポカか?? ・・・だが、この日の森下はそんな弱くなかった(^^;

なんと、王手角取りをかけさせたあとの、竜と飛車の両取り、お返しの技があったのだった! 
おおおおーーー、お、見事! 森下、やるぅぅぅ~ この読みには阿久津も絶賛、
阿久津「いやー これはすばらしい手順ですねー わざと王手角取りをかけさせて」

そしてさらに森下の好着想は続いた なんと、じっと、と金作り! これが間に合うと見てるのか・・・
阿久津「いやー 森下らしい一着ですねー 距離感を見切ってる 勝ちましたという宣言の手ですね 広瀬、手段に困りましたね」 

大立ち回りがあったから、盤上、混乱しているのかと思いきや、冷静になって見てみると、広瀬玉のほうだけ終盤になっていて、森下玉は全く安泰 手がかりすらなし うわわ、これは大差だ
阿久津「森下は着実に逆転の目を摘んでいっている」

以下は森下は全く危なげなく寄せきり、広瀬を圧倒! つ、強い・・・ 114手で森下が圧勝した

阿久津「森下さんらしからぬというとアレなんですけど、普段とはすごい違った積極的な将棋で、中盤、王手角取りをわざとかけさせて、きれいに反撃を決めたという快勝譜だったと思います」

感想戦で、広瀬「仕掛けちゃったのが、やりすぎでしたかね」
清水「広瀬八段としては、予想外の展開でしたか」
広瀬「んー あまりやったことがないんですけど」
森下「昔、流行った将棋ですね」
広瀬「あまり考えずに組んでみたんですけど」

この将棋を見て、私は対局の最中は、急戦矢倉のほうの森下を応援して見ていた
でも、終わってみると、広瀬~、なんで振り穴を採用しなかったんだーーと思ってしまった
これは私だけではないだろう 視聴者は講座で毎週、振り穴を勉強しているのだ
講師が振り穴を実際に指しているところを見てみたいと思うのはごく自然な欲求だろう・・・
ああー 広瀬~ 本局ではいいところなく惨敗 ああああー、広瀬の力は絶対にこんなものではない
せっかくの機会を、もったいないーーorz

一方、森下は良かった! 飛車を切るタイミング、そして阿久津も絶賛したように、大駒の激しい
振り換わりを読みきり、最後はじっと、と金を間に合わせたという完璧な寄せ すばらしく強かった 
良かったよ まさに会心譜だったね パチパチパチ 「淡々」から「情熱」に変わったのは伊達じゃないね
同じ戦法を採用した銀河戦でも、いい内容だったしね これからもこの調子で!

ベテラン森下が若手A級の広瀬を圧倒した 
森下の好調ぶりも光ったが、感想戦を聞いていると、経験の差が勝敗を左右したと思える一局だった