菅井竜也 五段vs髙﨑一生 六段 NHK杯 1回戦
解説 戸辺誠 六段

今日は菅井の登場だ 菅井は、7月19日に電王戦リベンジマッチでまた習甦と戦うのだ
「10年後は(コンピュータより)自分のほうが強いイメージは完成している」と語る菅井、
NHK杯ではどんな戦いぶりを見せてくれるのか、注目の一戦だ

清水「日曜のひととき、究極の好手、妙手の数々をお楽しみください」
・・・清水さん、相変わらずハードルを上げる発言だ(^^;

菅井は2010年四段、竜王戦5組、C1 総合成績優秀のため予選シード 3回目の本戦出場
高崎は2005年四段、竜王戦3組、C1 予選で小倉、泉、中田宏樹に勝ち 4回目の本戦出場

解説の戸辺「菅井君は人柄が明るくて、将棋もすごく積極的 序盤から動いていく もともと振り飛車党だったが、最近は居飛車にも挑戦している 新しい菅井五段が見れるんじゃないか
高崎六段のほうは、昔からずーっと振り飛車 20年近く振り飛車なんじゃないか どこにでも振れる、しぶとさ、粘りに定評がある」
現在、菅井22歳、高崎と戸辺は27歳とのこと ちなみに、高崎は「たかざき」と濁るのだそうだ 

事前のインタビュー
菅井「高崎六段は振り飛車党で、中終盤が強いなと印象を持っています 戦型予想は、振り飛車の将棋かなと思っています 
 自分らしい将棋を指して、最善を尽くしたいと思います」

高崎「菅井さんは意欲的な序盤と、鋭い中終盤に特徴があると思います 最近居飛車もやっているようなので、今日は対抗形になるんじゃないか 前回は3回戦止まりだったので、今回はそれ以上を目指したいと思います」

インタビューを聞いていた戸辺「高崎は、小学生名人戦に出たときに、『優勝して帰ります』と言って優勝したことがある 高崎は今日は後手番なので、角交換四間飛車を目指すんじゃないか」

先手菅井で、初手▲2六歩 注目の菅井の作戦は居飛車だった 
対して高崎は角交換から四間飛車に振った 戸辺の予想、ズバリだ
清水「さすが戸辺先生、戦型予想がバッチリ」
戸辺「わりと普段から、研究会とかで指すことが多いんで それと、僕も振り飛車党なので2人の棋譜はよく並べるんですよね 角交換四間飛車は後手番で今一番流行っている戦法と思います」
この角交換四間飛車は、2013年に藤井が升田幸三賞を受賞しているね

さて、高崎が向かい飛車に振りなおし、例によって逆棒銀を仕掛けようとしたところだ
ここで戸辺が▲5六角と筋違い角を打って、けん制した これは研究範囲か・・・
雑談で、清水「菅井は、去年のアンケートで、趣味は?という質問に、『居飛車を指すこと』と答えていましたが、もう今は公式戦で指すんですね」
うーむ、私としては今のプロは振り飛車党が少ないので、あまり転向してほしくないが、若いうちに色々やってみるのもいいんだろうね 大山15世名人も若い頃は居飛車党だったと聞いたことがあるしね

盤面右側で桂が交換になり、そろそろ本格的な戦いかな、と思っていると、
菅井の指し手は、なんと▲9八香! うわーー 駒が交換になってから、ゆうゆうとクマろうってか
思いつかないなーー!
戸辺「現代流ですね 王様が戦場から遠いので、損にならないという最近の考え方です」
菅井がクマる間に、高崎から特に手がなかったようで、菅井の穴熊が完成した  
戸辺「高崎としては押さえ込み、金銀を押し上げて、食い破られないように指していく方針」

どちらから手を出すのか、と見ていると、菅井からだった 
盤面右側で仕掛け、垂れ歩を放ち、それを高崎が守ったところを、逆モーションで歩のぶつけ、相手をほんろうする攻め方
う、うまい これは実に巧妙な手の作り方・・・
戸辺「菅井がうまくやったんじゃないか 今は菅井のほうが局面をつかんでるんじゃないか ただ、高崎はこういうところから、しぶといですよ」

高崎は攻められた飛車側はもう放置して、玉側の攻めに勝負をかけた
菅井も強手で対抗、角を切り飛ばしちゃった!
戸辺「切りましたか 穴熊らしい戦い方ですね」
菅井の穴熊、飛車までくっついてきて、めっちゃ堅い しかし、攻めは切れずに続くのか?

形勢判断がわかりにくい終盤で、戸辺がなんだか気になることを言い出した
戸辺「菅井、ちょっと変調かな? 高崎のほうは、馬を引きつけて、受ける楽しみが出てきた 菅井のほうは、もう少しうまくさばけたはずと思ってるんじゃないか 高崎は特別すごい妙手を繰り出したわけじゃないが、うまく対応した」
ええ~ 菅井、ピンチなの? いったい、どっちがいいの?

戸辺「相手の手に乗りながら、離れずについていく これが出来ると、振り飛車のスペシャリストの域に入ってくる」
穴熊に対し端攻めで迫る高崎、高崎のほうがいいのか? 高崎の美濃囲いとの耐久度は差は?

高崎が馬を切って迫る
戸辺「馬切りはないかなと思ったんですけど、決断の一手、勝負手ですね」
しかし、ちょっと手が進んでみると、
戸辺「高崎は攻めさせられている、ちょっとつらくなりました」
考慮時間も、菅井▲5回vs高崎△0回  あららら、形勢が逆転したの?

菅井がド急所に角を打ち込んだ 見るからに厳しい・・・
戸辺「急所の一手ですよねー 狙いが2つある」
これが決め手になったようだ 守って安全勝ちを狙うかと思ったら、菅井は踏み込んだ
戸辺「これで一手勝てると見て攻めた」
清水「菅井は手が早いですね まだ考慮時間もありますのに、どんどん指しますね」

もう全て見切った、後は手続き、といわんばかりの菅井の速攻の寄せが、見事に決まった
高崎玉に必至がかかり、高崎、無念の投了 103手で菅井の勝ち
菅井の玉はまだ2手くらい余裕があった 穴熊がかなり原型を残したままの勝ち
菅井は3回、考慮時間を余していた 菅井の快勝だった

戸辺「中盤で高崎のほうが盛り返したんじゃないか、と思ったんですけど、んー、終盤に入ってからの菅井の寄せ方が早かったですね 高崎のほうとしては、こんなはずではという感じだったと思う それだけ菅井の終盤に入ってかたの鋭さが目立った」 

感想戦に入る前の映像で、高崎が「方針がわかんなくなっちゃったもんなあ」と
言っていたのが印象的だった 受けきり勝ちを目指すべきか、攻め合いを目指すべきか、
わからなくなったという意味だろうか
感想戦で、戸辺「やっぱり穴熊に組み替えたのがうまかったですね」
高崎「見えないんですよね いつまでたっても、向こうの王様が」
そうだなあ 穴熊の遠さがモロに勝因になっていた一局だった
角交換四間飛車に対して、▲5六角で逆棒銀をけん制しておき、自分だけ穴熊に潜る・・・
菅井の作戦がドンピシャリ当たったね

ただ、この一局、私は期待が大きすぎたのだろうか、消化不良だった
菅井の振り飛車が見れるものとばかり思っていたし(^^;
あと、戸辺は手の解説は丁寧にしてくれたが、形勢判断がわかりづらかった
形勢が揺れ動いた難しい将棋で、仕方なかったのか・・・
それと、穴熊の将棋だと、私はたいがい穴熊じゃないほうを応援して見ているので、
今回のように穴熊の遠さを存分に活かされて負かされるのを見るのは、気持ちが落ち込む(笑)
端攻めも、効果なかったしなあ 高崎には、振り飛車党らしくこういう難局でもっと粘りを見せて欲しかった

まあしかし、菅井の強さはそこそこ見れた 菅井、習甦とのリベンジマッチでは、まさかの居飛車投入もありうるのか?と思わせたこの一戦だった