香川愛生 女流王将vs熊坂学 五段 NHK杯 1回戦
解説 中村修 九段

清水「日曜のひととき、究極の好手、妙手の数々をお楽しみください」
さあ~、やってまいりました、年に一度のお楽しみ、1回戦最後の対局は、恒例の女流棋士の登場だ

今年の女流は、去年の女流王将戦で里見さんから初タイトルを獲った香川愛生(まなお)さん!
立命館大学で、アマ強豪の中川慧梧さんといっしょに勉強していたシーンがTVで放送されていた

そして対するは、四段になってC2に参加したとたん、3年連続降級点を取り、最速でフリークラスに落ちる、という、前代未聞のことをやってしまった伝説の棋士、クマーこと熊坂!
クマーは今年でフリークラスに落ちて10年目、このままでは来年には引退に追い込まれるのだ
このNHK杯が全国のファンに見せる最後の勇姿の可能性が高い

ある意味、最強の女流vs最弱の男子プロという見方が出来るんではないか
今年のNHK杯の開幕戦のとき、解説者の前期優勝者の郷田が、トーナメント表を見て、「注目カードは香川vs熊坂」と言っていたのだ いったいどんな将棋になるのか? 
ムチャクチャレベルが低いのか?  それとも、クマーと言えども男子プロ、それなりに強いのか?
女流は2004年に中井広恵女流が佐藤秀司に勝って以来の、10年ぶりの1回戦突破の大チャンス!  
大注目の一戦だ どっちを応援するか迷うが、やはり私としては女流に勝ってもらいたい

TVに映った2人、香川さんは黒の服だが、ミニスカート! 視聴者サービスか? いいねいいね(^^;
クマーは頭が見事にハゲ上がっている 37歳、もうこんなにハゲてるのか ちょっとかわいそう・・・

香川は中村修門下、2008年15歳でプロデビュー 現在21歳 関西所属、立命館大学在学中 
女流棋士出場者決定戦で、甲斐女流二冠に勝ち、本戦初出場
ちなみに、昨年度の成績は、24勝10敗 0.706 通算成績(昨年度まで)は、47勝23敗 0.671

熊坂は2002年四段、竜王戦5組、フリークラス 予選で北島、窪田、村山に勝ち、本戦初出場
ちなみに、昨年度の成績は、4勝9敗 0.309 通算成績(昨年度まで)は、108勝143敗 0.430
クマーは竜王戦は6組じゃなくて、5組なのか そして予選で、なんとあの村山慈明に勝ったのか!
村山と言えば、昨年度の勝率1位賞を取った棋士、そんな人に勝てるのか
だがしかし、昨年度は4勝しかしていない(^^;  NHK杯の予選の3局は昨年度中に行われている
ということは、他棋戦ではたった1回しか勝たなかったということだ やはり香川さん、チャーンス!

清水「中村九段、いよいよ今日は、愛弟子の解説となりましたが」
中村修「2人とも初出場なんで、思い切っていい将棋を指してもらいたい、それだけなんですけどね 香川さんは初めは振り飛車党だったんですけど、最近居飛車もやるようになって、何でも指す感じ 攻めっけが強い
熊坂さんは、振り飛車中心なんですけど、相手に合わせて色んな将棋を指すタイプ 相振りも得意 粘り強さが持ち味」

事前のインタビュー 
香川「子供の頃からずっとあこがれていた棋戦だったので、自分が出れるなんでちょっと夢みたいな気持ちです 熊坂さんには私が小学生のときに、子供スクールで指導していただいたことがあるので、すごく優しい先生という印象があるんですけど、今日は厳しく教えていただけるんだろうなと思っています 解説も師匠なので、恥ずかしくない将棋が指せたらと思います」
 
聞いていた中村修「さっきあの、対局前になんか一言、アドバイスしてくださいって言うから、『甘えないように』と答えました(笑)」
うわ~、厳しい(笑) 面白いね

熊坂「良い緊張感を持って、持ち味を出したいと思います 香川さんは女流棋士の中で、非常に勢いのある方です 勢いに負けずにがんばりたいと思います 一局一局、丁寧に指したいと思っています」
私はこのインタビューを見ていて、クマー、いい表情でハキハキと答えているな、と思った
でも、対局中に、清水さんは「熊坂さん、対局前、緊張してましたね」と言っていたが・・・

聞いていた中村修「熊坂は非常にまじめでね、僕は彼が小学生のときに幹事だったもんで、小さいときから知っているんですけど、棋士になってからなかなかチャンスが捕らえられなかった NHK杯は大きなきっかけなんで、これからがんばって欲しいと思う」

しつこいようだが、クマーが3期連続降級点で、フリークラスに落ちたときの成績をもう一度振りかえっておこう
C2で、初参加の2002年度は2勝8敗で一つ目の降級点、
2003年度は3勝7敗で2つ目の降級点、2004年度は2勝8敗で3つ目の降級点だ
うーむ、やはりこれはこれからも記録として残るな・・・(^^;
中村修はこれからがんばって、と言ってるが、とにかくもう時間が残り少ない! このNHK杯、とにかくまず1勝だな

さて、いよいよ対局開始 先手香川で、早々に三間飛車を宣言 
早石田の乱戦もあるのか、と思ったが、クマーは居飛車の持久戦で無難に受けて立った 
中村修「香川が相振りを誘ったが、熊坂が居飛車にした 熊坂の囲い、天守閣美濃はめずらしい」
香川の▲石田流の浮き飛車+本美濃vsクマーの△居飛車+天守閣美濃、とう対抗形だ

序盤の駒組みの間、ちょっと雑談になった
中村修「香川は大学生とぶつかり稽古その他でがんばっているが、それが早指しでいい成績を上げていることにつながっている気がする 早指しだと香川も甲斐さんに勝てることがある 女流王将も早指し棋戦、早指しは安定感がある 普通にやったら熊坂に勝てない気がするが、今回は早指しなんでね
熊坂は成績が上がらなかったので、このNHK杯に賭ける思いがある、背負っているものが違う ただ、それだけにプレッシャーがある 予選で村山に勝った将棋はすごくいい将棋だった TVで流れないのはもったいないんですけどね」

このクマーが村山に勝った将棋っていうの、見たかった 
NHKの予選の模様を、結果だけでもいいので、トーナメント表を出して、誰が勝ちあがったか、特集してほしい 将棋フォーカスでぜひ放送してもらいたいね

さらにちょっと雑談で、清水情報によると、香川はフランス語が趣味なこと、クマーはスポーツがうまいこと、住んでいる仙台で、「杜(もり)の熊さん将棋教室」というのを開いているとのことだ

さて、まだもうちょっと駒組みなのかな、と思ったところ、香川さん、いきなり歩を突き捨てて仕掛けて行ったあ! おおーー もう行くのか 決断いいなあ そして、ドーンと銀もぶっつけたあ 元気がいいね
中村修「あー、どう対応するか迷うなあーこれ こういうところが香川は早指し慣れしている」
香川さん、あんまり緊張してない証拠かもしれない、いいぞいいぞ  

中村修「香川の仕掛けは無理気味に見えたけど、ここまで進んでみると、うるさい感じ」
良し良し、と思って観ていたら、クマーが力を見せた 発想を変えての、先に歩の叩きの利かし一発!
中村修「ここで打たれると迷いますね」
あら、クマーも緊張してないっぽい そして進んでみると、中村修「これなら熊坂としても充分の分かれ」
んー、歩の叩き一発でムードが変わっちゃったか

しかし、香川も果敢に攻める 中村修が解説で指摘したとおりの手を指してる いいんじゃないの!
中村修「形勢はわかりませんが、香川のペースかなという感じ この将棋、どっちも負けて欲しくないっていうのが、本音」
うん、でも、私は香川さんを応援してる やっぱり、女流が男子に勝てるチャンスってめったにないからね

香川ペースと中村修は言ったが、クマーも飛車をいい位置に振ってきて、うまく対応したようだ
形勢は、難解か・・・! がんばれ、香川さん!
そしたら、この難しいところで、香川が力を見せた 5段目を銀打ちで補強! ここが急所の地点か? 
中村修「そちら!! これはいい手だね いい手かな? これ時間ないとわかんないですね」

中村修がこの銀打ちがいかにいい手だったかを解説している おお、これは行けるのか?
と思ったら、クマーがバシッ!という手つきで指してきた 
中村修いわく、「これしかない」という対応だそうだ うわー、なんかいい勝負になってきたな
この手を見た香川「いやー そうか」とつぶやいた

ここから香川も、中村修のおススメどおりに指して、間違わない
女流にありがちな、解説者が「あっ それは!」という手をやってしまわない
考慮時間の残りは、もうお互い数回だ しかし、これ、均衡が取れた好局になってるぞ どうなる!?

香川のさっき打った銀が、クマーの天守閣美濃の玉を上から攻撃、こりゃ、香川、行けるか~!
清水「息詰まる攻防が」 うん、形勢、どっちがいいんだ? やっぱり香川が押してるか?
飛車を打ち下ろし、攻めの態勢を整えた香川 このまま寄せれるのか・・・

そのときだった クマーが受けの勝負手を放った!! △1二角!! 自玉の腹から受けの端角打ち!
おおー! こ、これは!?  
中村修「あれ! すごい手が出たねー! いやすごい手が出ました 出ましたよ 出ました 清水さんが番組の冒頭に言ってるじゃないですか それくらいすごい手が出ましたね」
清水「絶妙手が出ましたか」
中村修「出ましたよこれ 銀2枚を狙ってますからね」 
魅せたなーー、クマー!! やったなーー クマーの絶妙手が観れて、私もうれしい!
しかし、香川さん、踏ん張れ~ もともと難しかったところに妙手が出て、さらにヒートアップする盤上!

残り考慮時間、お互いに1回ずつ、もう最終盤だが、まだ形勢判断がつかない中村修
中村修「熊坂陣は、バランスが悪くてどこを守っていいか、よくわからないですね」
と、言うが、香川の手番が来ると、中村修「んー どうやるか難しいですね」 
どっちやねーん(笑) クマーの絶妙手を乗り越えて、勝て、香川~! 

クマーも飛車を打ち下ろし、美濃崩しの急所の歩の攻めも入り、香川玉も火が付いた
そして残りの考慮時間が両者なくなり、30秒将棋に、形勢はまだわからない 
こ、これはいい勝負だーー ど、どっちが勝つねーん!? 秒読みでの力、そして寄せの力の勝負!

そして、クマーがまたすごい手を放った 美濃囲いに対して、一段金を打つ重い攻め!! 
中村修「いやぁ~!通常、こういう手は敗因であることが多いんですよ 絶対詰まない形になりますから」
こ、これは~ 将棋のセオリーとして、こういう攻めをやったら、相手玉が一瞬ゼットになるから、
やったらダメと言われてる攻めではないか~
でも、金を打ったときのクマーの手つきは力強かった どこまで読み切っているのか・・・

中村修「通常、感覚的には香川勝ち あ、でも合駒請求があるから、香川の持ち駒が一枚足りないか? しかし熊坂は、いい度胸ですね △1二角が妙に利いてますね」
ど、どっちが勝ってるんだ 香川は最善と思える手で迫る 今の香川の手は、詰めろになってるか?
清水「いい将棋ですね すごいですね」
中村修「微妙ですねー」

そして、クマーが、自玉に詰みがあるかどうか、見切れるかどうかという究極の選択の場面を迎えた!
クマーが自玉に詰みなしと読み切れば、香川の美濃囲いの金を取って勝ちだ 秒が読まれる・・・!
中村修「(熊坂が金を)さあ取れるか! 取れるか! 取れるか! 熊坂ぁー!! 金取れー!! 良し、取った!! 良しってことはないけど(^^;」
このときの中村修、大声で叫んでいた
おおーーい、なんで中村修は、ここにきてクマーの応援をしているの~ 爆笑した
あんたの弟子は、香川さんのほうやで~(笑) 思わず本音が出たのか~(笑) 

クマーが自玉に詰みなしと読み切った! あとは本当に詰みがないかどうかだ 香川~ 詰ませ~
中村修「トン死してもおかしくないけど、残ってますかー?」 
清水「すごい将棋になりましたね 中村九段まで判断がつきかねてます」
中村修「△1二角が奇跡的に利いてますね」

追う香川、逃げるクマー もうここ以外は詰む、という逃げ道だが・・・ そこに玉が次々逃げていくと、
詰みは・・・・・・ ギリギリ、なかった!! ああーー、つ、詰まなかったか うううーー、お、惜しいーー
もう運の領域と言ってもいいくらいの、逃れっぷりだった ああー香川さん、負けたーー  
96手でクマーの勝ち カンナちゃんの96手という声を聞いて、ええっ、もっと長手数やっていたんでは
ないの、と思ったのは私だけではないだろう 実に濃い一局だった! すごい好局だった!

清水「ものすごい終盤戦になりましたが」
中村修「非常に面白い将棋でしたね 香川さんが仕掛けから押していた感じがしたんですけど、△1二角あたりから熊坂さんが持ち味を出してきた 最後、ホントどちらが勝ちか難しかったですね」

ここまで、番組として最高だった しかし、感想戦が10分ほどあったのだが、中村修が「仕掛けのところから」と言ってしまったため、肝心の終盤が、時間が足りなくて放送枠に入らず!
おい~、10分ということは分かってるんだから、終盤をやってくれなきゃ、ダメだろう
清水さんも、フォローしてよ 「10分しかないんで、終盤を」と清水さんが言えば、そうなるだろう
終局直後、クマーは「(終盤の)金打ったとき、危なかったかな」と言っていたのに・・・

ともあれ、まさか、このカードが1回戦で一番の好局となろうとは・・・(^^;
仕掛けたところから、ずーっと競っていて全く目が離せなかった
好局を通り越して、お互いに力を存分に発揮した名局だね、これはね 
香川さん、女流の連敗は止められなかったが、間違いなくここ10年の女流の中で一番いい内容だった
クマーも△1二角や、最後の見切りで、力を見せた さすが予選を勝ち抜いてきただけあった

両者初出場のプレッシャーなんか微塵も感じさせない、実に見事な戦いぶりたった 
2人に拍手を送りたい! よくやった、素晴らしかったよ パチパチパチ
4月にこの両者のカードが発表されてから、私は今日までずっと期待していた 
その期待を裏切らない、いやそれどころか、大きく上回る面白さだった 良かったよ!

あの終盤の中村修の叫び、「さあ取れるか 取れるか 熊坂ぁー」は、今後活躍できる場がある
香川さんと、もう引退のクマー、思わずクマーの心情を察してクマーのほうを応援してしまったと
いうことだろうと私は理解している ホント、面白いシーンだった(^^; 
NHK杯史上にまた名場面が誕生したね(笑)

これで1回戦が全て終了した 来週からは2回戦で、シード棋士が出てくる  
甲子園の影響で、10時20分開始だそうだ 2回戦も、楽しみだ