平成26年版 将棋年鑑2014 レビュー前編
日本将棋連盟 発行 マイナビ 販売 4600円+税 2014年8月1日初版
棋譜以外の記事の評価 B

将棋年鑑を買ったので、レビューしてみたいと思います と言っても、棋譜以外のところです ネットのどこを探しても、案外、将棋年鑑のレビューというのがないので、やってみようというわけです

私は将棋年鑑は毎年買っているわけではなく、気が向いたら買っているという状態です 何しろ、私は棋譜を全く並べないので、データと読み物の所のためだけに5000円近くの本を買うのは気が引けるわけです で、おととしは買ったものの、読み物であまり良い記事がなかったです それで、去年は買いませんでした でも、今年は巻頭特集が良さそうだったのと、棋士へのアンケートの質問を、これまでの倍の20問に増やした、ということで、何かブログを書くときの参考になれば、ということで買いました マイナビのHPから、コンビニ払いで買いました 8月1日に家に届きました

棋譜以外の読み物の記事を、レビューしてみたいと思います 量が多いので、前編と後編に分けます

まず、プロ棋戦の結果の記事から
これは、昨年度の棋戦を振り返るのに、ちょうどいいですね 私はNHK杯と銀河戦と順位戦以外のことは、あんまりチェックしてないんですよ あれ、タニー、竜王戦の2組で優勝してたのか、とかね 各棋戦ごとの簡単な解説を読み、トーナメント表、リーグ表の結果を確認するのは楽しいです  

主要アマ棋戦についても結果が載っていますが、私はさすがにアマ棋戦までは関心はないです TVで放送とかがあれば観るんですけどね

さて、目玉の巻頭特集のレビュー
<特集1> 河口・先崎対談 2人の語り部が1年を振り返る (分量8ページ)
これは面白かったです 2人が話し言葉で7大タイトル戦を振り返ってくれ、読んでいて楽しいです 例えば、王座戦の羽生vs中村太地について、河口「これは今期一番いいシリーズだったね」 先崎「番勝負全部がいい将棋でしたね」
王位戦の羽生vs行方は、河口「今回羽生さんとやって、正直いいところなかったよね」 先崎「ちょっと行方さんに肩に力が入っているかな、という感じでしたね」 こんな風で、率直に言ってくれていて良かったです

しかし、里見香奈さんの話題になったときに、河口さんに次のような発言がありました 
河口「ものすごく頑張っていたから、三段に上がったときはすぐにでも四段になれるんじゃないかと思ったけど」
この発言は私は信じられませんでした すぐにでも四段??? 何を根拠に??? 奨励会は、三段になってやっと半分きた、という世界ですよ??? 一番最近の三段リーグで上がった2人は、星野三段が在籍14期(7年)、宮本三段が18期(9年)ですよ 河口さん、大丈夫ですか?  しっかりしてくださいよ・・・

それから、電王戦について、先崎さんが「今人間とコンピュータの棋力はいい勝負、棋力は同じだけど、神経をすり減らしながらやる人間は、そうでないコンピュータには勝てないんです」という趣旨の発言がありました  しかしこれは残念ながら私には全くむなしい、現役プロが言ってはいけない言い訳にしか聞こえませんでした 負ける、ということは相手より弱いということと同義、と現役プロなら自覚を持ってしかるべきでしょう 今後、コンピュータがもっと強くなっていっても、この言い訳を使い続けて、
「いやあ、勝てないけどプロは棋力では互角です」と言い続けるつもりなんですかね?

文句が多くなりましたが、対談自体は、とても面白かったんですよ(^^; 良かったです 対談形式でタイトル戦を振り返ってくれる特集、毎年あったらいいですね 

<特集2> 女流棋士40年の歩みと若手女流特集 (分量6ページ)
女流の歩みのページ、たった1ページか(^^; 簡単な年表と短い解説があるだけ その「女流棋界の変遷」と書かれた年表では、例によって女流棋士の独立問題、LPSAについては全く触れられていません 連盟にとって、もうその問題は、なかったこと、にしたいのでしょう 問題が起こったから、なかったことにして無視する、という態度、これはダメですねえ

そして、残り5ページは、若手女流5人に、1人1ページ使って「81の質問」をしています
長谷川優貴女流二段(18歳)、北村桂香女流1級(18歳)、山根ことみ女流1級(16歳)、竹俣紅女流2級(16歳)、和田あき女流3級(16歳)というメンバーです こりゃまた、若いを通り越して、幼いのいっぱい集めたなーー(笑)
 
プロとしての実績、あるのか? 昨年度までの通算成績は、長谷川さんは22勝17敗、北村さんは7勝6敗、山根さんは2勝1敗、竹俣さんは4勝8敗、和田あきさんは3級なので実績なし まともに実績と呼べる数字があるのは長谷川さんだけじゃん(^^;

81の質問の中で、印象深かったものは、Q最高で何手詰の詰将棋を解いた?というものです
長谷川 昔師匠に教えてもらいながら解いた45手詰  北村 たぶん25手くらい、かなり時間がかかりました(笑)  山根 忘れました(笑)  竹俣 37手詰  和田 45手詰

竹俣さんと和田さん、すげーな! ところが、和田さんは、Q対局前に必ず持っていくものは?という質問に、「3手詰ハンドブック」と答えていらっしゃる 45手詰を解いたことがある人が、3手詰ハンドブック持っていくんかい! これには笑いました 

あともう一つだけ、竹俣紅さんの答えで、Q今思いつく限り一番長いスペルの英単語は? という質問に、竹俣「Supercalifragiisticexpialidocious」 なんと、33文字! 調べたら、実際に確かに存在する単語 けど意味はわかりませんでした 竹俣さん、すげえー 他は特に面白い答えって、なかった感じです  とにかく、あまりにマニア向けな人選すぎたな・・・ 

< 特集3> 佐藤康光が語る第3回電王戦 (分量16ページ)
これは良かったです! トッププロの康光が、図面を使って5局について詳しく感想を述べてくれています
第1局 ▲菅井vs△習甦 
「戦前の予想を覆すコンピュータの完勝。習甦のMVPも十分うなずける。」
第2局 △佐藤紳哉vs▲やねうら王 
「前回も今回もコンピュータは穴熊に囲った将棋はなく、好感がもてる。 また、結果的に穴熊に組ませて勝った本局は、現代将棋に対する一つの問題提起といってもいいだろう。」
第3局 ▲豊島vs△YSS
「(事前の対策について)バグを見つけるためだけの作業は、時間の浪費と言わざるを得ない。」 「角交換して▲2一角と打った。この局面、プロ同士の対局なら、ほとんどの人はこうは指さないだろう。この順は無理というのがプロの第一感である。」 「彼の真摯な事前準備が勝利に結びついたことは間違いない。」
第4局 △森下vs▲ツツカナ
「ツツカナがどんな意図で指したのか分からないが、古い形に新しい風を吹き込んだもので、序盤戦術としては今回の5局の中で一番感心させられた。」 「危険そうでも一つ勝ちがはっきり見えていれば良いというのがコンピュータ的な勝ち方だったのかと思う。」 「序盤からの工夫もあり、非常に面白い内容の一局だったと思う。」 
第5局 ▲屋敷vs△Ponanza
「Ponanzaの指した手は△1六香。思いもよらぬ1筋に香が放たれた。ここで感じるのはコンピュータの多重性だ。人間でいえば性格に当たるものが、コンピュータの場合一つのソフトの中に多重的に存在しているように思う。後に見せる終盤の鋭い手に比べて、この香打ちは正反対。鋭い人は指さないタイプの手であるといってもいい。しかし、コンピュータの場合、このような2種類の手を同じソフトが指してくる。人間にとっては両方学ぶことは難しい。むしろ学ぼうとすると、両方とも取り入れられなくなってしまう危険性がある。」 
総括として、「コンピュータのレベルがかなりのところまで達していることはもはや疑いようがないだろう。」

この康光さんの文章を読んでの私の感想は、なんといっても第5局で取り上げた箇所です コンピュータが多重的な性格(棋風)を持つのに対し、人間は性格は一つしか持てない、こう言っている点です プロ棋士の中でも、飛びぬけて自由な発想を持つ康光さんがこう言及しているのは、非常に重いですね やはり、今後、人間がコンピュータに追いつこう、勝とうとするのはもう無理があるのではないでしょうかね

とりあえず、ここまででいったんUPしておきます
あとの 特集4、詰将棋の世界 ~看寿と現在~  特集5、上野裕和の最新将棋事情 棋士へのアンケート、その他のコラム等、それから、今回の年鑑の私の不満と今後への希望は、後編(あさっての土曜)まわしとします