渡辺明 二冠vs佐々木勇気 五段 NHK杯 2回戦
解説 屋敷伸之 九段

清水「日曜のひととき、究極の読みと技の数々をお楽しみ下さい」
さあ、今回から2回戦だ シード棋士が登場してくる 今日は渡辺二冠(30歳)のお出ましか! 
対するは、若手有望株の一人、佐々木勇気(20歳) 佐々木は昨年度の加古川青流戦で優勝している
1回戦の阿部隆との一局では、終盤の長い難戦を勝ちきったものの、途中、疑問手もあり、
私は「この内容では次の渡辺戦は厳しいのではないか」と感想を書いている さて、どうなるか

渡辺は棋王、王将を保持 永世竜王資格保持者 2000年四段 竜王戦1組、A級 1回戦はシード
13回目の本戦出場  渡辺は竜王戦は今期、2連敗してしまったので、来期からは2組だね

佐々木はスイスのジュネーブ生まれ 2010年四段、竜王戦5組、C1 1回戦で阿部隆に勝ち
2回目の本戦出場 なんか、すごい所で生まれてるな 国際協定でも結ばれてそう(^^;

解説の屋敷「渡辺は居飛車中心の本格派 佐々木も居飛車でよく攻める本格的な将棋 2人とも終盤力が強い」

事前のインタビュー
渡辺「NHK杯は多くの人が観ている棋戦なので、毎年がんばりたいとは思っているんですけど、去年は自分にとっての初戦で負けてしまって、オープニングの画面からも姿を消してしまったので(笑) 今年はオープニングの画面に残れるようにがんばりたいと思います 佐々木君とは初手合いなんですけども、年齢は10くらい離れていて、彼が四段になった年齢とかが自分のときとほとんど同じなので、10年くらい前の自分を見ている感じがします」

佐々木「渡辺二冠は、常に第一線で活躍なさっている先生だと思います きれいな攻めが決まっている印象があります 自分らしい将棋が指せたなら、最高です」

佐々木のインタビューを聞いていた屋敷「なんとなく、ういういしいというか、緊張している感じがうががえました 相手が渡辺二冠ということで、秘める思いが強いかなという感じがしましたね」
うん、佐々木勇気、緊張してけっこうカタくなっている感じ 渡辺相手に、どう戦うかな

先手渡辺で、屋敷の予想どおり横歩取りになった ▲中住まいvs△8四飛+中原囲い△5二玉型だ
清水「この2人は、小学4年で小学生名人になっている 佐々木は16歳でプロデビュー」
へー、佐々木って、そんなすごいエリートだったのか ちなみに、渡辺は15歳でプロデビューだ
屋敷「渡辺は勝ち方がうまい 優勢になってからのまとめかたがうまい 受けがしっかりしている もちろん、攻めも鋭いんですけどね 一手違いで競り合うよりも、大差で勝つ印象」
   
さて、早々に佐々木が左桂を5段目に跳ね出し、屋敷が「もうかなり勝負所と言った感じがします」
と言ったのだが、進んでみると、局面は案外落ち着いた 横歩取りらしく、四段目~六段目での空中戦という感じになっている 中盤の力勝負だ どちらが制するか・・・ 

考慮時間の残りが、渡辺▲7回vs佐々木△1回まで差が開いた んー、大丈夫かな 
佐々木の手番、屋敷が「ここは何かありそうなので考えたい」と言っていたところ、
佐々木は桂2枚のつなぎ打ちで勝負を賭けた! おー、相手に竜を作らせてもいいということか
屋敷「かなりの迫力の手で、どちらが早いかという攻め合いになりましたね」
おー、一気に終盤になったな 形勢はどっちがいいのだろう?

バシッと金を取った佐々木、清水「渡辺は今少し首をかしげていましたが」
屋敷「渡辺は何かひねり出さないといけない このままだと、金の丸損になる」
おー、渡辺、ピンチか 佐々木が追い詰めているのか いいぞいいぞ こりゃ、面白くなってきた
そのときだった、渡辺が、取られそうな桂をジャンプ!
屋敷「桂を逃げながら攻めた手 なるほど、ひねり出してきましたね なるほど」 
佐々木も負けじと、屋敷に賞賛される歩の突き出しを指す 渡辺も勝負手を次々繰り出してくる
佐々木~ がんばれ~ 形勢はちょっと押してるっぽいぞ 若手が二冠王を超える所を見せてくれ~

そしてここから、力と力のねじり合い、と呼ぶにふさわしい終盤が延々続くことになった
清水「すごいですね 渡辺二冠をあせらせる佐々木五段」
屋敷「そんな人は、なかなか見たことないです(笑) 渡辺はいつ見ても冷静な感じで変わらない 闘志を全面に出しているのを見たことがない 冷静に考えて冷静に指し手をつないでいく でもさすがにこの局面は苦しいと見ているんじゃないか」  

考慮時間の残り、差があったのに、渡辺▲1回vs佐々木△1回に!
屋敷「やっぱりちょっと渡辺は苦しそうな顔をしてますね あまり見たことがない表情になってきました」
おおー、佐々木、二冠王を、相当追い詰めてるぞ このまま行け~!

だが、まだお互いにそんな早い寄せはないようだ 長い終盤になったなー
屋敷「まだかなりどちらも難しい感じがしますね まだまだ長くなりそう」
長期戦かぁー しっかし、次の手の予想が全然できない将棋だな ただもう観ているだけだ(^^; 

そして、佐々木が飛車を取られるのを放置して攻め合いを決断、いよいよ寄せ合いか!?
渡辺も、それなら取る、と自陣の危険を放置して飛車を取った うわー
一応、私は考えながら観るんだけど、この一局は全然手が見えないわ ダメだ(^^;
屋敷「簡単に佐々木が勝ちそうという感じもしない すごい際どい終盤になりましたね 渡辺が寄せきれるかどうか 大熱戦ですね」

これは相当な熱戦! 屋敷「渡辺の王手が相当続く」
佐々木は詰めろ逃れの角を放つ そしてその角が香車で狙われた瞬間、なんと中合いの銀捨て!
銀の中合い出た~ こんな手はめったに実戦で見れないぞ
清水「好手、妙手の連続ですね」 屋敷「ですね」

屋敷「かなり際どいです 私には判断できません 渡辺も読み切れてる顔じゃない」
渡辺は竜を捨てて迫る、渡辺も必死だ
ここからは精神力の勝負にもなってくる 心、技、体、総合力の勝負だ
頭に手をやった佐々木 どうする~ と思ったら、佐々木、なんとまた桂の中合い!
中合いが2回も! すげー こ、これで助かった!?  と、ところが! 佐々木が玉を逃がすうちに、
なんと、佐々木の急所の攻め駒が、角での両取りで抜かれる王手が発生してしまったではないか!
うおー、角で両取りのラインが出来たのか・・・ これが渡辺の真の狙いだったのか あ、あらああー
なんという渡辺の終盤力 これが二冠王の底力か こりゃ、ダメだぁー 

バシッ!と駒音高く両取りをかけた渡辺
清水「今、手つきがどっしり、落ち着いて」 屋敷「確信を持った感じでしたね」
あああー、これで渡辺玉のほうは、全く手がかりが消え、安全になってしまった
やっぱり、二冠王の壁は厚かったか 佐々木、これまでだな まー、よくやったよ

と、思われたその直後だった 何気なく佐々木が香車を取ったと思われたのだが、その香車を使い、なんと王手竜取りの田楽刺しという、初級者どうしで見られるような手筋が炸裂! 
屋敷「田楽刺しですね よく見たら・・・ なるほど!? あれ、けっこう大変そうですね もうすぐにでも渡辺の勝ちかなと思ったんですけど、かなり大変そうですね あれ、また一波乱という感じ」
おいおいおい、どうなってる?? 

画面に、明らかに様子がおかしい渡辺が映し出された
清水「渡辺、天を仰いでますが」 
屋敷「渡辺は、あれっていう感じでしょうね 佐々木は狙ってましたね」
うおおおー、あの渡辺をして、こんな、あからさまな田楽刺しを食らうとは! 初級者レベルのうっかり!!

渡辺はまだ踏ん張ろうとするが、一気にムードが逆転模様、
勢いづいた佐々木、歩で渡辺の玉頭を叩いたその手つき、力強かった
清水「佐々木の愛読書は詰め将棋本ということです」
屋敷「渡辺は勝ちを確信したと思うんですけど、竜を消されちゃいましたからね 将棋はホントに勝つまでは油断できない とんでもないところに落とし穴があった」

佐々木、飛車で王手馬取りをかけた 長かった戦いも、ここまでか? 渡辺、投了か?
が、まだ手があった! なんと今度は渡辺が桂で中合い! うお、一局の中で中合いが3回も! すげえー
屋敷「すごい勝負手ですね なるほど これは迷うんですよね」
佐々木、どうする? 馬を取って、長くなるが安全に行くのか? と思って見ていると、佐々木は桂のほうを取って、詰ましに行った~!! おおーー つ、詰むのか!?

手に汗握ったのだが、ここから佐々木は実に早かった! 全く、何の迷いもなく、ビシビシ指して、ピッタリ渡辺玉を詰まし上げてしまったではないか! おおー、今取った桂も必要になる詰み筋で、そんなすごく簡単な詰みというわけじゃないぞ す、すげええー 佐々木勇気、つえええー 
渡辺が「負けました」と言ったとたん、私は思わず、「おおーー!」と叫んでしまった 
156手で、佐々木の勝ち 長い長い戦いにようやく終止符が打たれた
か、勝った 20歳の新鋭が、二冠王相手に、超がつくぐらいの、このねじり合いを制した・・・

清水「ものすごい将棋になりましたけど」
屋敷「大激戦でした 何が何だか、という感じで(^^; すさまじい終盤だったですね 最後はやはり渡辺二冠の貫禄でうまくまとめたかな、と思ったんですけど、そこからまたドラマがあった」

こ、こりゃー、ホントに大激戦中の大激戦だったな 屋敷の「何が何だか」という表現がピッタリだった
私はこの一局を通して、次の手が全然見えなかったわ(笑)
特筆すべきは、佐々木勇気の精神力の強さ! これだけの長い戦いで、最初から最後まで、全く表情を変えないとは! むしろ、「冷静」と解説があった渡辺のほうが表情を変えていた   
王手竜取りを狙った執念もそうだが、最後の渡辺の桂での中合いに対しても、迷うことなく、ノータイム指しで一気に詰まし上げてしまうとは、佐々木勇気、恐るべし!
脳が疲れるということがないのか? これぞプロフェッショナルというべき、終盤の耐久力!

佐々木勇気20歳、会心の一局で、見事に二冠王を撃退した これはすごい!! パチパチパチ
中合いが何回も出てきたり、あの渡辺がモロに王手竜取りの田楽刺しを食らったり、と、見所満載、実に面白い一局だった 長くて、観ていて疲れたけど(^^; 観た甲斐が存分にあった一局だった
佐々木勇気五段が総合力で、あの強い渡辺二冠王を上回ったのだ、素晴らしかったよ!