金井恒太 五段vs久保利明 九段 NHK杯 2回戦
解説 鈴木大介 八段

まず、昨日の夜のBSフジテレビの将棋ウォーズの特番の感想を少し
つるのさん、もー、全っ然ダメダメ! 何あれ、角を丸々タダであげてしまう手を2手も連続して指すって
どういうわけ? いつも将棋ウォーズで遊んでいるって言ってたのに、何だあれは・・・
三段免状を返上しないといけないくらいの、ありえない手2連発 マウスミスじゃないし、考えられないミス
つるのさん自身、対局後かなり落ち込んでいたね(^^; つるのさんには強くあって欲しいのだが、残念だった 

さて、今日は久保の登場か 現在、振り飛車党では最強の存在、華麗なさばきを見せて欲しい
対するは若手の金井、活きのいいところを見せるか

金井はオーストリアのウィーンの生まれ 2007年四段、竜王戦5組、C1 28歳 1回戦で阿部光瑠に勝ち
4回目の本戦出場 阿部光瑠戦では、223手の長手数を冷静に乗り切って相入玉で点数勝ちしている
久保は1993年四段、竜王戦2組、A級 38歳 1回戦はシード 19回目の本戦出場

解説の大介「金井は礼儀正しい好青年 関東の若手の代表格  研究熱心で、序盤が行き届いている印象があります 
久保はさばきのアーティスト 優勢なときはさばきでどんどん行くんですけど、苦しくなったときの粘りが、プロから恐れられている それが久保の真の姿」
久保の粘りを象徴する一局として、前期順位戦の最終戦、三浦との戦いは271手で深夜2時まで続いた大激戦(三浦勝ち)は有名だね この一局は昨年度の名局賞特別賞を受賞している 

事前のインタビュー
金井「久保さんは華のある将棋で、振り飛車党として最先端を走り続けているという印象 (去年のNHK杯2回戦で久保と戦った)1年前よりも厳しい戦いになると思っていますけども、強い気持ちで勇気を持って指したいと思っています」

久保「金井さんとは去年も自身の初戦で当たったんですけども、終盤の切れ味が鋭いなというイメージがありましたので、その辺りを意識して指し進めていきたいと思います 振り飛車で行くことになると思うんですけど、さばきと言いますか、その辺りを見ていただけたらうれしいかなと思います」

ちなみに、去年のNHK杯での対戦は、金井の居飛車に久保の4・3戦法(一手損の石田流)だった 
じっくりした序盤から、最後は詰むや詰まざるやで、華麗な詰みを決めた金井が117手で快勝している

先手金井で、居飛車超速▲3七銀vs△ゴキゲン中飛車になった 両者、サウスポーなんだね
大介「ここ1年くらいですかね、ゴキゲン中飛車の勝率が著しく落ちているんですよね たぶん4割ないんじゃないかなと体感的には思いますね 一時期は後手番で5割以上勝っていたんですけどね この超速▲3七銀と、▲5八金右超急戦、どちらも有力 角交換振り飛車も流行しだしたので、ゴキゲン中飛車は減ってきている」

金井は舟囲い、久保は美濃囲いという軽い囲いで、さっそく戦いが始まった
そして、すぐ金井に驚きの一手が飛び出した 
自分の飛車が2四に居るのに、▲2五歩と打って、飛車にヒモをつけたのだ
大介「はあ~ これは新手ですね 金井は速かったですね」
対して、久保もすぐ対応した 久保もその手は研究済み、研究範囲ということが明白だ

さて、形勢はどうか? 手が進むと、金井は自らの角道を止める手を余儀なくされた
大介「金井の▲2五歩の新手を、久保の研究が上回った感じがする これは振り飛車がさばけてますね」
たしかに、こうなってみると、金井の▲2五歩は意味のない駒になっていて、空振りしている
大介は、銀をぶつけていけば、さばけて久保が有利になると解説
こりゃー、久保は逃さないだろう なんたって、さばきのアーティストだもんね

と、ところが! ここから久保の指した手は信じられないものだった なんと、△2八歩と打って、先手の2九の桂や1九の香を狙いにいったのだ んんーー? こ、これは?
大介「なんで銀をぶつけないんでしょう 不思議ですねー!?」
2九の桂には逃げられ、久保は1九の香を3手もかけて取りにいく展開になった
1九の香、3手もかけて取る駒か??? いったいどうなってる??

符号が続いて申し訳ないが、久保が隅っこの香を取りに行っている間に、金井が▲9六歩、と突いた一手が大介も指摘していた手で、この一局のド急所の一手だった  これで8八の壁角が使えるようになった
大介「今度は金井が良くなったと思います いやー、久保はなんで銀をぶつけなかったのか」

その後も、何度も「久保、銀をぶつけたかった」と連呼する大介
本譜の展開を観ていると、たしかに、そのほうが良かったとしか思えない 
久保は両取りの「ふんどしの桂」を放つが、金井に無視されて、どっちでも好きなほうをどうぞ、とされてみると、大した威力がなかった
大介「久保、大苦戦ですね 駒割は金井の銀損だけど、駒の働きが違う  金井は去年久保に勝っているんで、自信を持って指している感じ 久保は雰囲気が押されています」

久保、このまま負けるのか?と思ったところ、味のいい歩の突き出しを見せた
大介「素晴らしい手です これはぜひ覚えて欲しい、高段者クラスの次の一手ですね」
おおー、ようやく久保らしい手が出たか、と思ったのだが、この手に対する金井の反応がまた良かった
大介「金井、実戦的な、冷静ないい手です 相手が苦しがっているのがわかってるんで、急がなかった うまく指してますね」
ここの金井の対応は、地味ながら見事だった 局面が今どうなってるのか、きちんと把握できている証拠だ

金井のじっくりした、と金での攻めが間に合ってきて、
大介「自分なら、やれやれ終わった終わった、という手」
ここ、ちょっと笑えた 私も楽観派なので、こう思うときがよくある 
けど、将棋では形勢が良くなったからといって、こういう思考をするとロクなことがないが(笑)
それにしても、この中盤、ずーっと久保の飛車が全く働きがない、寂しいことこの上ない駒になってるなあ ・・・さばきのアーティスト、どうした?

大介の解説によると、金井が一気の寄せを逃した、とのことで、どうなるかと思ったのだが、久保が秒を読まれて指した手、それは自爆と思える一手だった!
指した瞬間、私は、な、何~ そこの歩を突いたら、桂打ちの空間が出来ちゃうじゃん!と心の中で叫んだ
そしたら、金井も見逃さず、桂を打って両取り な、何だ、今の久保の手は??

久保は飛車でこの桂を食いちぎったが、飛車を取られてしまった 
大介「緊急事態発生ですね つらいでしょうね 久保がね」  
どう考えても、おかしすぎる今日の久保 な、何でだ・・・

かなりの差がつき、後は金井の寄せを見るばかりとなった もうプロなら逆転はない形勢 
金井は危なげなく寄せきり、勝利を手にした 95手で金井の勝ち 内容的に大差があった印象だった

大介「ゴキゲン中飛車の最新形で、私も知らないような新手がお互い飛び出したんですけど、わずかに金井のほうが駒が中央に出て行って優勢になって、▲9六歩から角を活用した辺りですかね  あの辺から一気に優勢を拡大して、その後、優勢を維持して勝ちきったという一局、金井の完勝だったと思います」

感想戦で、久保は▲2五歩は知っていた、ということだった
中盤、久保「相手から手がないと思って、ゆっくりやっていたら、▲9六歩が厳しかったですねー 何やっていいかわかんなくなりましたね」 とのこと

金井の完勝・・・ いや、金井がどうこうより、この一局、久保の指しまわしが、謎すぎる!
中盤で大介のお勧めの、銀をぶつける筋を逃したのも、さばきのアーティストらしからぬ失態だし、何より、△2八歩はないやろ~ 1九の香を3手もかけて取りに行くなんて、イモ筋すぎるで! マジで、たかだが24の二段の私ですら、△2八歩は「そもそも考えない手」だもん・・・

久保は飛車も、作った馬も、全く活躍の場がなし 終盤では久保は相手に桂打ちのスペースをわざわざ作ってあげる、という「自爆」も出て、ホントに全くいいところなく負け ううううーーーーんんんん こ、これは残念 残念すぎるorz
「さばきのアーティスト」が、「自爆のアーティスト」になってしまった ガクッ

ああー、久保の華麗なさばきはどこへやら・・・ 居飛車党の私ですらこれだけ残念なのだから、振り飛車党のファンはもっとガックリきたと思う ここのところ、いい内容の将棋がNHK杯で続いていただけに、一休み、という一局だった  来週以降に期待したい!