大石直嗣 六段vs稲葉陽 七段 NHK杯 2回戦
解説 糸谷哲郎 六段

清水「日曜のひととき、究極の好手、妙手の数々をお楽しみください」
例によって、清水さんのハードルを上げてしまう発言から、今週もNHK杯が始まった
今日は若手どうし、大石と稲葉か 大石は前期NHK杯で羽生を破ってベスト4、稲葉は前期銀河戦で優勝
という、輝かしい実績を引っさげての2人の登場だ 視聴者の期待に応えてくれるか?

大石は2009年四段、竜王戦4組、C1 前期ベスト4により予選シード 24歳
稲葉は2008年四段、竜王戦2組、B2 1回戦で田村に相振りで勝ち 26歳

解説に糸谷が映った うわあー、なんか顔がぷっくりしてる 明らかに太ったな!
まだ25歳というのに、もう中年太りか(^^; 糸谷は現在、竜王戦の挑戦者決定戦を羽生と争っている
あと1勝で挑戦者になれるところまで来ている がんばって、「糸谷竜王」になって欲しいものだ

清水「糸谷さんは大学院生という顔も持っているということですが」
糸谷「哲学、思想関係を研究しております」
大阪大学大学院文学研究科在学ということだ 哲学者と言えばソクラテス、
私は大河内 一男という東大の総長が言った「太ったブタよりもやせたソクラテスになれ」という
言葉を思い出した 糸谷、太っていて哲学研究者が務まるのか(^^;

糸谷「大石は森信雄門下の弟弟子、非常に実戦的な棋風 玉を固めて、力強く攻める まさに現代将棋の考え方を踏襲している 稲葉は冒険家タイプ 見たこともない将棋を作り出していく 新工夫が色々なところで見られる棋士です
お互いに関西棋士でライバル関係の2人 稲葉の新工夫を大石がどう受けて立つかが見所になりそう」

事前のインタビュー
大石「稲葉七段とは練習将棋を含めてたくさん指してきましたが、鋭い攻めに加えて最近では粘り強く戦っている印象を受けます 初戦から強敵ですが、自分の将棋が指せるようにのびのびと指したいと思います」

稲葉「大石君は居飛車、振り飛車、何でも指しこなすんですけど、勢いのある将棋ですね ここ2~3年、よく勝っている印象ですね 大石君が前期ベスト4に勝ち進んだというのは自分にとっても刺激になったんで、本局はぜひとも勝ちたいという気持ちでがんばりたいと思います」

両者の対戦成績は、大石3勝、稲葉5勝ということだ ここ2年で少なくとも5局も指しており、まさにライバル関係だ

先手大石で、相掛かりになった 
糸谷「ウチの森門下には、山崎、澤田、千田と、相掛かりを得意にしている棋士が多い 山崎は、『相掛かりは道なき道を行っているようなものだ』と言っていた」

開始早々、稲葉が、さっそく工夫を見せた △7四銀型、いわゆる鎖鎌銀(くさりがまぎん)で早々に大石の角頭に襲い掛かったのだ 大石はたまらず自ら角交換 これで一手損だ
そして、大石は7六の歩を稲葉に△7六銀とタダで取られてしまったではないか 
ええ~、何これ、プロがこんなあっさり歩をタダで取られていいのか? 
もうこれ、序盤重視の人なら、やる気をなくしそうな展開ではないのか 大石、どうなってる?

糸谷「大石、一手損と一歩損をひっくり返そうというのは難しい」
さらに私が重視したのは、稲葉の銀が△7六銀と、もうこんなところまで進出している、ということだ
これは相当大きいのでは?

符号が続いて申し訳ないが、かなり気になった変化があったので調べてみた
大石が敵陣に▲6三角と打ち込んだところ、稲葉は△7二角と合わせて消しに行き、無難に局面を収めた
しかし、糸谷がちょっとだけ言っていたが、△7二角でなく、ここで△6五角という手はなかったのか?
狙いは超単純、先ほどの△7六銀と連携しての8七の地点を突破の1点狙いだ

この一局の最大の疑問として私の頭に残った もし△6五角なら大石はどう対応したのだろう?
激指定跡道場3に訊いてみた すると、なんと▲6三角と打ち込んだところの局面、形勢はなんと±0!
完全に互角、±0点で六段+++の思考完了! な、何~ 後手の稲葉有利じゃないのか?
△6五角には、以下▲4八玉と右玉で備えておき、△8七銀成▲同金!△同角成▲8三歩!△同飛▲7二銀で、以下全く互角の難解で激しい戦いが予想されるということだ 激指先生、さすがだな
それにしても、この序盤で全くの互角だったって、そんなことが有り得るのか・・・

本譜も、大石は右玉にした 私はそうかー、右玉という手があったか!と納得した
しかし、苦しくなったので流れで右玉にしたのであって、初めから右玉の作戦ではないと思って観ていた
糸谷「右玉は私はけっこう好きなんです 全体のバランスがいいので、相手の攻めをうまくかわせることも多いですね スキができるとすぐ負けになるんですけど」

雑談で、糸谷「大石は一門の中では私の後輩の中ではリーダーシップを取っている まじめで後輩たちの信頼が厚い、面倒見がいい 前期のC2の順位戦では全勝昇級した」
清水「大石は研修会の幹事も、されているんですよね」
糸谷「森門下は、みんな勝手にバラバラにやれという方針(笑) 森先生は、温かく見守ってくださるタイプで、あまり口出しはされない」
あの~、稲葉が前期の銀河戦で優勝したことにも触れてあげて~(^^;

大石が右玉にしたことが好判断だったようで、駒組みが延々続くことになった
私が驚いたのが、稲葉がじっくりと駒組みに付き合ったことだ 稲葉の△7六銀まで進出した右銀、なんと3回も引いて、自陣に引き返していってしまったではないか 
私がもし後手側だったら、相当ありえない考え方だ 7六というのは敵陣まであと一マス、
絶好の位置だと思うのだ それを3回も引くなんて・・・ 攻撃の銀は前に居てナンボ、でしょ? 

大石が、盤面右側で勢力を握り、位を張ってきた 稲葉は玉を固めて対抗
糸谷「『位取りには堅い玉』 今、作った格言なんですけど(笑)」
こういうの、面白いね 将棋の考え方も変わって来ているんで、どんどん新しい格言がでてきたらいいね

この将棋、中盤が異様に長い将棋になっていった というのも、どちらからも仕掛けないのだ
お互いがひたすら自陣の整備に手を費やして、攻めは、行くぞ、と見せかけるだけ、という展開だ
稲葉が7筋で歩の成り捨てから攻めようとしたのだが、大石は右金をなんと7七まで移動させて耐える、という構想を繰り出した これには糸谷もびっくりだ
糸谷「おおー! わざわざ玉のそばの金を遠ざけてでも受ける すごい辛抱ですね」

そして、また手の渡し合いに・・・ いったい、本格的な戦いはいつ始まるねん!
糸谷「(攻めると見せかけて、実際は行かない) 相手に混乱を起こさせる、早指しでのテクニックです」
双方、こんな手の応酬 何なんだ、この将棋は(^^; 右玉ということもあって、正直、わけがわからん
大石は自陣左側の金2枚を3手かけて立て直そうと狙う構想を見せ、糸谷をも驚愕させた
糸谷「はあ~! これはすごい手ですね~ これは稲葉の読み筋にない手です」

手の渡し合いが行われているうち、形勢が変わってきた、と糸谷
糸谷「大石がペースを握り返している 稲葉は何か攻めがないとおかしい」
稲葉は「いやぁー」とため息をついて、戦いを起こした やっと角と歩以外が駒台に乗った 
番組開始からほぼ1時間! 長げえーーー(笑)

ようやく戦いになり、手が進んでいくが、指すほどに稲葉のため息が聞こえてくる
攻めがつながる様子が全然ないのだ 大石に丁寧に受けられて、稲葉は駒損が拡大していく一方だ 
稲葉「いやあー」 この後も3回くらい言っていた(^^;
糸谷「稲葉の攻めが足らない 苦しい」
清水「大石の陣形は、銀多伝でしょうか」
おおー、そういえばそうだな 平手で銀多伝、実にめずらしいな

大石は稲葉の攻めを全部めんどうを見て、ハッキリ切れ筋に持っていった
稲葉「いやあー」 大声でこう言い、もう、明らかに困ってる稲葉 声を殺そうともしなくなった
糸谷「大石は、と金を間に合わせるだけで勝ってしまおうということですね もうだいぶ差がついた ホントに、全駒みたいになってしまって 大石の駒が稲葉の駒全部を吸収する勢い」 

「全駒」という言葉まで飛び出し、大勢は決した 稲葉は指し続けるが、大石の逃げ道封鎖の桂捨てという鮮やかな決め手が出た 稲葉はほぼ最後まで指し、ようやく投了を告げた 151手で大石の勝ち 

清水「息づまるというか、渋い応酬が続いたのですが」
糸谷「稲葉がうまい序盤作戦でちょっとリードしたように見えたんですけど、そこから大石の金2枚を寄せての受けが見事でしたね 結果的にはちゃんと全部受け切って勝った 大石の力が発揮された一局」

な、長かった~ 観ているこっちが疲れたよ・・・
鮮やかな手っていうのが、ホント、大石の最後の桂捨て、その一手だけだったと思う(^^; 
あとは中盤、延々様子見、手の渡し合い 何なんだ、この一局は こんな内容はめずらしいな
それにしても稲葉、攻めが完全に、完璧に切れ筋に陥ってしまったなあ 
男子プロがあそこまで見事に受けきられるっていうのは、私はあまり記憶にないわ
稲葉自身も、途中からは、あまりに手がなくなったので、「いやあー」を連発だった 

私としては、序盤に稲葉の手で、無難に△7二角でなく、△6五角で一気に勝負に行って欲しかった
△7六銀まで出れたのだから、8七を狙って欲しかった 
せっかく出た銀を3手もかけて自陣まで引いてっていう発想、私にはないわ
稲葉の右銀は、6三から出て7六で歩を取り、また6三に戻った
つまり、1歩を取るためだけに6手もかけた計算になっていた 私には考えられないなあ

「右玉に不思議の勝ちあり」というのは、私が思っている格言だ 
序盤、大石は早々に7六の歩をタダ取りされ、糸谷は「これでは大石、面白くない」と言っていたのだが、激指の検討モードは±0だった いったいどう観れば良かったのか 右玉は不思議だ
その後は、金銀4枚を全体的に配置して受けきるという大石の構想がハマッた一局だった
それにしても、長ーい中盤、どちらからも仕掛けない、延々続いた手の渡し合い、
これが24歳と26歳の将棋なのか 若いってことは、将棋が渋い、地味ってことなのか(笑)?