ベスト8の3試合目、佐藤天彦、羽生に続きベスト4を決めるのは誰か
おお~、渡辺と康光の激突か 大物どうしの対決だ 解説は、前期優勝の稲葉、聞き手は山田久美女流だ

渡辺は今期ここまで4勝5敗 Gブロック最終戦で山崎に勝ち、決勝トーナメント1回戦でナルゴン(畠山成幸)に勝ち
康光は今期ここまで8勝2敗 Hブロック最終戦で村田顕弘に勝ち、決勝トーナメント1回戦で村中に勝ち
今期の成績は、渡辺はいまひとつ、対して康光は好調だね

解説の稲葉「渡辺は現代的な将棋、玉を固めて細い攻めをつなぐのがすごくうまい 事前研究も深くて、勝ちやすさを重視した将棋
康光は序盤から自由、時に大胆な作戦を用いる 中終盤は力強くまとめてくる 渡辺とは対照的な将棋かなと思う お互いに銀河戦は3回優勝している」
2人の対戦成績は、渡辺17勝、康光21勝とのこと

最近、個人的にちょっと気になっていることなのだけど、棋士の駒の置き方がどうかだ
今回の2人、渡辺は駒を升の下のラインに合わせて置いている 康光は普通に駒を升の真ん中に置いている
駒を下のラインに合わせて低く構える置き方、プロ間でかなり流行しているなあ
そのうち、上のラインに合わせて、高く構える置き方をした棋士が出て来たら、どうするんだろう
すぐに襲い掛かるよっていう置き方だ さすがに、なんかそれは相手に失礼な気がするがどうかな

さて、先手渡辺の居飛車に対し、後手の康光の選んだ作戦は、角交換のダイレクト向かい飛車!
私は、やったーと思った 振り飛車が見たかったんだよね
渡辺は研究範囲、とばかりにすぐに▲6五角と両成りに打ち、早々に駒交換がある手順に進んだ
稲葉「激しい変化になってますけど、定跡どおりの、よくある進行です」

渡辺は角と歩を、康光は角と金を駒台に乗せる、という、このダイレクト向かい飛車の独特の序盤だ
稲葉「角交換はよくあるんですけど、金まで駒台に乗る定跡はめずらしいですよね」
▲6五角の変化を、後手側を持って互角に受けきれると、最初に見抜いた人は素晴らしいねえ
誰だか知らないけど(^^; 後手番の作戦の幅が広がるのは、将棋の面白さが広がり、大変いいことだと思う

最初の駒交換が終わり、まだしばらく駒組みかな、と思っていると、康光がいきなり魅せた
稲葉「康光側としては、銀が上がりたいのですが、すぐ上がると▲5五角の、飛車香両取り (それも飛車にもヒモがついてない)があるから、銀は上がれないんですよ」
と言った直後、康光はなんと銀上がり~!! おおおーー
渡辺に、飛車香両取りの▲5五角を打って来いと誘う康光の序盤の構想!!
稲葉「いや~! いや~! すごいですね」
山田女流「康光らしい手ですね」
こ、これはすごい こんな序盤に相手にわざと両取りをかけさせて、それで指せるっていう驚愕の発想、今までで見たことないわ~ すげえーー これぞ康光流!
稲葉「相手が弱かったら、うっかりしているのかと思いますけど、康光は読み筋ですからね」
この一手だけでも、並のプロには絶対指せないぞ 康光、魅せたな~ パチパチパチ

渡辺は挑発に乗らず、▲5五角は打たなかった じっくりと受ける方針のようだ
渡辺はパッと見には意味不明の端歩突きを指すなど、実に繊細に指している
稲葉がすかさず解説してくれるおかげで、ようやくなるほど、と意味がわかる
山田女流「解説を聞いてみないと、何で端歩なんだろうって思いますけど、ちゃんと意味があるんですね」
うむ、もし解説者が山田女流だったら、全然解説できないと思う(笑) 
さすがに重量級の2人、序盤からこのレベルの高さ! いいよいいよー

どちらから動くのかという場面で、先に重大な決断を下したのは、康光だった 
△5四角と筋違い角を打ち、何が何でも、飛車先を逆襲しますよ、と宣言だ
稲葉がまた変化を色々と解説してくれ、すぐには渡辺が悪くなるわけではない、とのことだ
山田女流「なんか、うまくできてるパズルを見てる感じですね」
全くだわ 変化は多くてもまだまだ互角か 形勢を良くするのは大変だな~

何だか、この対局、空気が重い ピリピリしているのが、局面や2人の時間の使い方から伝わってくる
今までの、他の対局とは違う これはすごいな~ 盤面から、空気の重さを感じさせるとは・・・!
稲葉「康光の陣形はバラバラですけど、こういうのを康光はうまくまとめるんです 私はマネができないんです(^^;」
▲自然な形で受けようとする渡辺vs△強引に技をかけにいっている康光という図式だ

難解な中盤に突入した ホントに難解、居飛車vs振り飛車の対抗形の手の見え方には
私は少々自信があるのだが、この一局は手が見えないな  
康光の後手側は金が一枚持ち駒、その分、玉の守りが薄いのだ 
一手で局面がガラッと変わってしまうし、やったらその分、やり返される、という計算をしないといけない
果たして、どっちが読み勝つか?
稲葉「渡辺が少し失敗したような感じがある 少し受けが変調  渡辺は少し苦しいくらいの変化でもしょうがない」
いやあー、渡辺は、丁寧に受けようという意図が手から伝わってきたけどな それでも悪くしたのか

そろそろ終盤、渡辺は、遊んでいた銀を使い、玉頭銀に出て勝負をかけた これが間に合うか?
康光、相当手が広いところだ どうする・・・? と思って観ていると、金をベタッと打って、強引に相手の飛車を取りに行った~ うわー、こりゃ、またかなり強引だな 発想は康光らしいが、どう出るか?
稲葉「金・・・ 金ですか 狙いがわからない」
解説の稲葉は、ちょっと真意がわからないといった感じだ

この康光の金打ちに対し、渡辺が実にうまく立ち回った 飛車を取られる最後のギリギリまで働かせた
そして飛車を犠牲にして豊富になった持ち駒で反撃に転じた渡辺、玉頭銀の上からの攻めと、垂れ歩の横からの攻めで、厳しく康光玉に迫る  康光も強気の攻め合いに出たのだが・・・
稲葉「ホントにこの渡辺の攻めを康光は受けきれるのかな 渡辺が良くなった感じです」
渡辺の、あの間に合うのかと思われた玉頭銀が、ものすごく攻めに効いてきている

手が進んだが、稲葉のコメントが明快になってきた
稲葉「はっきり渡辺が良くなりましたね 渡辺がどう勝ちを決めるか」
そして、渡辺の手は緩まなかった 最善と思える順を逃さず、きっちり寄せを決めて、確実に勝ちきった
77手で渡辺の勝ち 最後は差がついていた 

稲葉「康光が意欲的な指し回しで少しペースを握ったのかという感じでしたけど、渡辺は玉形をうまくまとめて、反撃がうまかった」

感想戦で、序盤の康光の▲5五角の両取りをわざとかけさせようという構想には、渡辺「最初、ポカなのかと思った いやー びっくりしました」
中盤以降は、2人が何を言っているのかが、実に難しかった(^^;
まあ、対局者の2人も、どうすれば良かったのか、苦慮している局面が多くあった
普通の居飛車vs振り飛車の対抗形とは、何か違うな~
それにしても、感想戦で出るどんな変化に対しても、候補手がポンポン口から出るのは、さすが渡辺や康光としか言いようがないね 一流プロがホントにすごいと思う瞬間だ

康光の直接の敗着は、強引に金で飛車を取りにいってしまったこと、ということだった
康光は飛車は取れたのだが、その飛車が攻めに役に立たなかったから、負けたということだ
そこを見切って、渡辺は飛車をわざと取らせて、攻め合いを選んだのだ うーん、強いわ
今回は渡辺が一枚上手だったね 
序盤~中盤は康光がリードしたようだが、渡辺が終盤で一気に抜き去った、という内容だね

感想戦の最後に、山田女流「佐藤九段は、こちらの解説陣が驚く手がけっこうあって」
康光「そうですか けっこう自然に指したつもりですけど」
これには、みんな笑っていた  康光、終盤では失速したけど、序盤の▲5五角の両取りをわざとかけさせようという手順、あれはホント、魅せたわ まあ、また例によって、怖すぎて他の棋士は誰もマネしない手順だろう(笑)

この一局、序盤から緊迫感が盤面から伝わってきて、空気がピリピリと痛いのが感じられた対局で、すごく良かったわー 全体を通して、ものすごい緊張感だったもん これぞ、一流プロどうしの将棋!
盤上の空気が画面を通して伝わってくる、TV将棋の醍醐味だ 満足だ!