ベスト8の最後の一戦 郷田と松尾、安定感のある実力者どうしの対戦だ

松尾はFブロックでナルゴン、屋敷に勝ち最終勝ち残り、決勝トーナメント1回戦で村田顕弘に勝ち
今期の成績は7勝1敗 
郷田はDブロックで丸山に勝ち最終勝ち残り、決勝トーナメント1回戦で永瀬に勝ち
今期の成績は7勝4敗
2人の対戦成績は、松尾1勝、郷田4勝

解説の稲葉「松尾は居飛車党の本格派で研究が深くて、最新形に精通している 松尾流と呼ばれる形もいくつかある バランスのいい棋風
郷田も居飛車党の本格派、最新形というよりは、自分なりのこだわりを持った戦型を貫くタイプ 長考派だけど、早指しも強い 戦型予想は、両者、居飛車は何でも指せるんで、相居飛車の中のどれか 矢倉かな」

先手松尾で、なんと中飛車を選んだ まあ、松尾はたまにやっていた気がする
稲葉「松尾が飛車を振りましたね びっくりしました(^^;」
松尾の▲5筋位取り中飛車+金銀分裂型の美濃囲いvs郷田の△居飛車の舟囲い急戦形になった

お互いに軽い囲いで、戦いが開始 松尾が十字飛車の筋で、郷田側の3四の歩、
いわゆる玉頭の歩をかすめ取った 
稲葉「松尾がスキを見つけて突破するか、郷田が松尾の飛車を押さえ込むか 差がつきやすく、どっちかが必勝形になりやすい展開」

この将棋、ここから、松尾の飛車をめぐる、盤面右、お互いの玉側での縦の戦いになった
通常の対抗形の展開とは違うな~(^^; そして、松尾が積極果敢に1筋から端攻め!
稲葉と聞き手の山田久美女流「激しくいきましたね~」

たびたび郷田が長考しているので、雑談があった
山田女流「稲葉さんは前期の銀河戦で優勝されましたが、考慮時間の使い方で気をつけていたことというのはありますか?」
稲葉「10回ある考慮時間は、まとめて使うと損と思ったので、なるべく小刻みに使うように心がけていました」
へ~、そうか ・・・ここで、ちゃんと考えてみることにする

ある局面から、3手指すと仮定して、最初の1手を指すのに考慮時間を一気に3回使ったとすると、
3分30秒考えることになる その後の2手で30秒ずつだから、3手で合計4分30秒だ
それを、1手ずつに分けて3手で各1回ずつ考慮時間を使うと、1手ごとに1分30秒考えれる計算だから、
3手では合計4分30秒・・・! あれー、結局、おんなじじゃん 
一気に使おうが、小刻みに使おうが、合計の数字では全く変わりないんじゃん(笑)
あ、この計算はNHK杯でも全く同じに成り立つんで、知っておくべきだな(^^;

郷田は、松尾の端攻めに対し、交換になって持ち駒になっていた角を打って受けた
松尾は攻めの左桂を活用させ、稲葉に「振り飛車らしい手ですね」と言わせている

郷田はどんどん時間を使い、まだこれからと思わせる局面で、30秒将棋になった
山田女流「早くも30秒将棋になりました」
稲葉「いやー すごいですね 時間がないと、いやあー、なんですけどね(笑)」

難しい中盤と思われる 松尾は5三の地点に、と金を作るべく垂れ歩の攻め
郷田の玉は、舟囲いで毎度おなじみの定位置である3二に玉が居るので、と金はいかにも厳しそうだ
稲葉「5三の、と金作りに対する受けがなかったですかね 郷田は攻め合いに出ましたね」

郷田も時間をなくしたが、松尾ももう全て使い切った 両者、▲0回vs△0回の30秒将棋だ
松尾も長考派だな~(^^;
局面、5三の地点に松尾の待望の、と金ができた
稲葉「これで郷田からの攻めがなければ、はっきり松尾良し」

自陣に火がつき、なんとか攻めたい郷田、秒を9まで読まれてギリギリ着手、持った駒が盤上でふらつき、乱れてしまい、指した駒が盤上で立ってしまった 「10」とは言われなかったが、あやうく時間切れだ
「すいません」という仕草を見せ、頭を下げる郷田 松尾は「いえいえ、いいですよ」と大きくうなずいて、「問題ないですよ」、とジェスチャーで返事をした
お互いのこういうところは、見習いたいねえ やっぱり気持ちよく、紳士的な態度で臨みたいものだ
マナーの悪い人どうしだと、時間ギリギリで着手した駒が盤の上で立ってしまっても、指した側は何にもあやまらないだろうし、指された相手は、時間切れの反則負けだ、と言いだしかねない
そんなプロは観たくないからね その点、この2人はマナーがいいわ

郷田は松尾の飛車を狙って攻め、飛車をどうにか取ったのだが、その代償が大きすぎた
飛車と、桂香香の3枚換えだ それに、郷田は5三の地点に、と金も作られている
稲葉「松尾がはっきり良くなった」
松尾の美濃は堅い 郷田の玉、舟囲いはもう見る影もない 

松尾が攻めかかり、郷田はどうするかと思っていると、攻めを催促! 
稲葉「これはまた、勇気にある手ですよ」
おおー、まだどうにかなるのか、と思ったが、松尾の攻めが的確で、郷田玉は召し取られてしまった
83手で松尾の勝ち 短時間で快勝だった 「5三の、と金に負けなし」の格言どおりになった

稲葉「すごく激しい将棋でした 最後は一方的になってしまいましたけどね 郷田が飛車を取れるかどうかの戦いの中で、松尾がうまく立ち回った 端攻めから積極的に動きつづけて、うまく戦果を上げた」

感想戦で、郷田「端攻めに対して、角を手放して受けたのが、もうすでに覇気のない手でした」
とのことだった 38手目の角打ちがもう早々に敗着か 残念だったな

感想戦の中で、稲葉が「この手はどうでしたか」と何度も割り入って訊いていて、対局者の2人が「なるほど、そうですね~」と納得していた
うん、今回の稲葉くらい、遠慮せずに感想戦に入っていって、いいと思う
TV棋戦の解説者は、TVで放送される時間の感想戦には、これくらい積極的に対局者に訊いて欲しい
ホントにじっくりした感想戦は、TVの放送時間が終わってから、たっぷりいくらでもやればいいのだ
解説者が対局中に解説していて、疑問が残った点を、感想戦で対局者に訊いてみて欲しい
それは多くの視聴者が望むことだと思う

稲葉が、裏芸とも言える中飛車で、郷田に快勝という一局だった
どうも、振り飛車側に十飛車の筋で3四の歩、舟囲いの玉頭の歩を取られると、居飛車側はその後の構想が難しくなるようだ
形勢は互角かもしれないけど、その後の手が広く、まとめにくくなる、というやつだ
あの強い郷田ですら、対応を誤ってしまったという内容だった

これで、ベスト4の準決勝は、羽生善治名人 vs 松尾 歩七段、 佐藤天彦七段 vs 渡辺 明二冠
この組み合わせとなった タイトルホルダーどうしの決勝も良し、松尾と天彦の決勝でも良し、面白い対局を見せて欲しい! 私個人としては、松尾に優勝して欲しいかな 
私は友人から「お前の将棋は、松尾と棋風が似ている」と言われたことがあるからだ(^^;