飯塚祐紀 七段vs西川和宏 五段 NHK杯 2回戦
解説 久保利明 九段

いやー、すごかったですねえ、土曜の電王戦タッグマッチ・・・ 
何がすごいって、プロ棋士たちが身につけていたデバイス(機器)ですよ
今まで、私はコンピュータのハードとソフトの進化ばっかり心配してました
でも、問題はそれだけじゃなかったですね コンピュータのことばっかり私は考えて、
デバイスの方を考えるのが、すっかり抜けてました 未来のデバイスを考えると、妄想が止まりません 

今回は、飯塚vs西川かあ NHK杯のHPで今後の対局予定を見ると、魅力ある顔ぶれがずらりと並んでいる その中にあって、この2人は、ええっと、いや、何でもないです(^^; 西川のノーマル振り飛車の指し回しに期待だなあ

お、清水さん、髪の毛、すごいきれいにしてるね
清水「日曜のひととき、究極の読みの数々をお楽しみください」
んー、清水さん、相変わらずの、ハードルを上げてしまう発言だ(^^; 

飯塚は1992年四段、竜王戦4組、B1 1回戦で塚田に勝ち 6回目の本戦出場
1回戦の塚田戦では、角換わり相腰掛け銀の先手番で、塚田に何もさせず、きれいに完勝している
西川は2008年四段、竜王戦5組、C2 前期ベスト4進出により本戦2回戦から登場 3回目の本戦出場

久保「飯塚は本格派の居飛車党というイメージ 重厚な戦い方で、中終盤粘りの強い将棋
 西川は振り飛車党で、軽快なさばきが見られるか 角道を止める中飛車と三間を使う」

事前のインタビュー
飯塚「西川五段は、前回ベスト4進出ということで、すばらしい活躍の方だと思います 東と西に分かれているので、今まで練習将棋でも手合わせしたことがないと思うんですけど、棋譜は拝見しております 振り飛車党で力強い中、終盤を得意にされている方だと思います (抱負は)一手一手、心を込めて、みなさまに感謝の気持ちで指せればとこのように思っております」

これを聞いていた久保「すごく人柄が表れている、まじめなコメントですね(笑)」
ホント、ここまで丁寧とは、あの律儀な森下以上だなー(^^;

西川「飯塚七段とは、先ほど初めてお話させていただいたんですけど、とても気を使われて優しい先生だなと思いました 将棋は本格居飛車党で、終盤はねばり強い将棋だと思います (抱負は)強い相手ばっかりですけど、一局でも多く勝って自分の将棋を観ていただきたいです」

久保「戦型予想は、対抗形 お互いに序盤から工夫が出るんじゃないか」

先手飯塚で、予想どおり西川が振り、対抗形になった そこから、相穴熊だ
対局者の2人とも、だいぶ盤から離れて座ってるなあ これって思うんだけど、TVがワイド画面になった
ことと関係あるのだろうか ワイド画面だから、なんとか対局者2人が画面に収まっていると思う(笑)

久保「昔ながらの角道を止める三間飛車になりましたね 角道を止める三間飛車を観たいファンはいっぱいいらっしゃると思いますので」
さて、序盤の駒組みが長かったので、雑談になった
久保「角道を止める振り飛車は、居飛穴に堅く囲われてしまうことで、敬遠している人が多いんですけど、西川はこの形を得意としています 本局の西川は、堅さには堅さで対抗しようという戦い方」

飯塚は、右銀まで穴熊にくっつけて、4枚穴熊にした ガチガチだ
久保「従来は居飛車の右銀は、攻め駒だったが、最近では守り駒ですね 私も角道を止める三間飛車、やりたいんですけど、この居飛穴がねー 振り飛車側は、さばくところまでは行っても、なかなか囲いを崩せない」

清水「西川は、座右の銘は、『猪突猛進』だそうです 普段は慎重なのでまっすぐどんどん行けるように、いましめるために、だそうです」
そりゃー、めずらしいな 普通、性格が猪突猛進なので、それをいましめるために、「慎重に」、という意味の格言を座右の銘にする人が多いだろう 西川は全く逆(笑)
清水「ご自身の棋風を漢字で、という質問には、飯塚は重厚の『重』という字、西川は『粘』という字を上げた」
久保「飯塚は、ピッタリですねー」
飯塚は、囲碁将棋チャンネルで講座をやっていて、タイトルは「コッテリ将棋の神髄  あくまでも手厚く」だ

さて、西川が5筋と4筋に位を張ってきたところ、飯塚が仕掛けた 
飯塚のほうは、もう4枚穴熊が完成しているし、これ以上待つ手も必要なさそうだ 仕掛ける頃合いか
久保「西川が角道を開けて、やって来い、と言ったところに飯塚が仕掛けた」

仕掛けた後の変化を検討する久保、
久保「少し飯塚がポイントを上げている」
あら、西川、手数をかけて出ていった銀が、取られる運命か
ん、この銀でプレッシャーをかけていく予定ではなかったのか

結局、本譜、さばき合いになり、先に飯塚が駒得をした
久保「飯塚は手をひねる必要がないかもしれない 自然に指して優勢のようです 瞬間的には、飯塚の銀桂得、だが西川も、と金を作っていてまだチャンスはある」

またここで雑談になった 
久保「穴熊は苦戦になっても、自玉が王手がかからないという特徴を活かして攻めることで、逆転勝ちができやすい」
清水「お話を伺っていると、穴熊は良い事づくめのようですが、何かマイナスはないんですか」
久保「マイナスは・・・ 昔は攻めが細いと言われてましたけど、今はもう飛車角桂で攻めれる時代になってきてますんで、穴熊のデメリットないんじゃないですかね」
清水「そうですかー」
久保「私なんかは、いかに穴熊に組ませないか、というところから指してるんでね 穴熊側が良くなったらそのまま順当に勝ちやすいし、悪くなっても逆転できやすい、そういうイメージ」
うーむ、あらためて、久保からこういうセリフが出てくるのは重みがあるなあ
ここは清水さん、ナイスな質問だった 穴熊、久保に「デメリットはない」とまで言わせるのか すげーな

この後は攻め合いになりそうだが、
久保「西川もまずまずの感じがしてきました 相手の金を一枚はがせば、それを自陣に打って粘れる」
西川は長考を繰り返し、早くも30秒将棋になった 飯塚の4枚穴熊がそのまま残っていて、
まだまだ先は長そうなのに、ここから30秒かー もう使い切って、大丈夫か
しかし、早々に使い切ったのは飯塚も同じだった たちまち両者、考慮時間▲0回vs△0回の30秒将棋に・・・
お互いに長考派だったか(笑) だけど、飯塚は何を長考していたんだろう?

すると、その答えが出た! 飯塚、相手の竜を引き付けておいて、竜2枚に対し、両取りの金打ち!
うわ! そんな手があったか これで、竜1枚は絶対に取れる 指されてみれば、当然の手だ
久保「あ 2枚の竜取りに金を打つ手もあるんですか よく見ればどっちかの飛車が手に入りますね 見落としてました(^^;」
んーー、これ、これは痛いんじゃないの、飯塚の不安材料だった、攻め方をどうするか、というのが飛車が手に入れば、解消される これは、西川、困ったなー 

そしたら、西川、驚くべき手を放ってきた なんと、竜を金とでなく桂と刺し違える、竜をぶった切る強手! 
清水「ほお~ 竜と桂の交換ですが」
久保「あ~ 基本的には大損なんですけど、非常手段 西川が苦戦を意識した手ですね」
西川、無理やりの、居飛穴を薄める勝負手だけど、これは・・・ どう見ても苦しいなー

西川の駒台には桂が3枚揃ってしまって、これは不吉だ 持ち駒の桂3枚以上は、使い道がない場合が多い
盤上にすでにある分には、問題ないんだけど、持ち駒が桂ばっかりじゃあ、使えないことが多いのだ
桂は自分の何かの駒と交換になって持駒になっているはずなので、使えないと、実質、駒損になるのだ
「持ち駒に 3桂あって 使い道なし」 この格言、覚えておくといいと思う

ちなみに「3桂あって 詰まぬことなし」という格言があるが、これは言葉が間違って伝えられたものだ
もともとは、「計算あって 詰まぬことなし」だったのだ 計算とは、頭の中できっちり読むことをいう
つまり、「詰ますときは、ちゃんと頭の中で読みを入れて考えなさいよ」という、将棋で当たり前のことを述べた格言だったのだ  
それが、町道場のおっちゃんたちが「計算、計算」と言っているうちに、
いつの間にか、「桂3、桂3」になり、変化して「3桂、3桂」になったのだ
だから多くの人が持つ感想「桂馬を3枚持っていたって、詰まない場合が多いんだよ」、これは当然なのだ
もともとの意味は、「詰ますときは、頭の中で計算しなさいよ しっかり読みを入れなさいよ」という意味の格言なのだ この格言は、言葉がいつの間にか、すり変わって、間違って伝わったのだ もう知っていた人には、くどい話だったか(^^;

さて、盤面、飯塚は馬を自陣に引き付け、西川は竜を自陣に引き付けた
久保「これはすごい長期戦になりますね 飯塚は5筋どころか、4筋くらいから攻めるしかない まだ終局までは40~50手かかる気がします」
うわー、ホント、2人ともまだまだやる気だな 先は長そうー

・・・と、思われたのだが、ここからの飯塚の指し回しが実に見事だった 
西川が歩をぺタぺタと自陣に貼り付けたりして、粘ろうとするのだが、飯塚がそれを許さなかった
30秒将棋だというのに、指されてみればなるほど、それが最善か、と思われる手をことごとく指し続け、西川の戦意を奪っていった 終局は突然訪れた 西川、あきらめて投了! 105手で飯塚の勝ち
え? たった105手? 150手くらいじゃないかと思った(^^;

西川の駒台を見ると、桂3枚と歩が2枚だ 桂3枚が使えずに、モロに不良債権と化してした 
「持ち駒に 3桂あって 使い道なし」の格言は、本局でもバッチリ当てはまった

終局直後、西川「(仕掛けのところ)5筋突かれて、ちょっと面白くない将棋にしちゃいました」

久保「投了図は感覚的には、1手半から2手くらい足りないイメージの局面です 相穴熊の熱戦だったと思いますが、飯塚のほうが終始自然な手を積み重ねて、悪手らしき悪手がなかった 飯塚の完勝という感じ」

感想戦が、10分もあった 時間、10分も残ったかー
久保「竜の両取り厳しいんですね」
西川「本譜は、ちょっと形もできなくなってしまいました さばき合った分かれは、難しいと思っていましたが、進んでみたら悪かったです」
最終的には、西川の敗因は角道を開けて仕掛けを誘ったところ、もうそこまでさかのぼっていた
ものすごい巻き戻しなきゃ、互角に戻らないんだな(^^;

ざっと振り返った感想戦、飯塚は早指しの将棋で、修正する手が1手もなし! これは相当すごいことだ
手の広いところもたくさんあったぞ それなのに・・・! 
飯塚、B1棋士の面目躍如、会心の一局と言えるだろう
去年のベスト4に、ノーミスで指して完勝、かなり実力がないとできないことをやってのけた飯塚 すごい!

でも、なーんか、地味なんで、この棋譜が注目を集めるかと言ったら、集めないだろうなあ(^^;
それはもう、仕方ないか 飯塚、完璧に指して完勝しても、何かが足りない
それはズバリ、スター性、というやつか 今後ぶつかる相手に勝ち上がれば、注目されるだろう 
飯塚、1回戦に続き2回戦もノーミスで完勝、このまま勝って、今期NHK杯でスターになれるか?
来週は郷田vsハッシー、やはりこの顔合わせなら、観たいと思う(^^; 期待大、楽しみだ!