2014.09.18 「電王戦タッグマッチに関する意見表明」
2014.10.03 「電王戦タッグマッチを考える その1 プロ棋士のコンピュータに対する認識の現状をまとめてみる 」
2014.10.04 「電王戦タッグマッチを考える その2 プロ棋士がコンピュータの強さを認めない理由とは? 」
に引き続く3回目の連載です 2年後に始まる予定の高額賞金の電王戦タッグマッチ棋戦について考えていきます

なお、今までの連載記事を探しやすいように、当ブログに「電王戦タッグマッチを考える」というカテゴリを追加しました
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今回は、今までにあった2つの事例を見てみます この2つの事例は、どうしても今あらためて思い出す必要があると考えました

まず1つ目は、今年3月、第3回電王戦の第2局、やねうら王vs佐藤紳哉プロのときの騒動です  やねうら王のプログラマーの磯崎氏が、対戦直前になって、佐藤紳哉プロの自宅に突然訪問して、勝手にソフトを入れ替えてしまった一件です これはルール上禁止とされていた行為でした しかしその磯崎氏の行為をドワンゴが認め、連盟も追従して認めました そのいきさつのPV(プロモーションビデオ、宣伝映像)が第1局の終局後に対局会場で流れたとき、会場は静まり返り、ニコニコ動画の画面文字は炎上、そしてファンの間で大騒動になりました 

その後にドワンゴの川上会長と連盟の片上理事らが急遽記者会見を開いて、ファンにお詫びし、ソフトを入れ替える前のバージョンに戻すことで、なんとか騒ぎが収まりました なんとも後味の悪い事件でしたが、あれは磯崎氏のみならず、完全にドワンゴと連盟の過失でした この一件は、プログラマーの磯崎氏は全くの個人の考えでやったことですが、ドワンゴ、連盟は組織で判断して下した決定です そこに、この事例の本当の重大さがあると私は思います 

「いや、あれはドワンゴ側は川上会長が一人で決めて、連盟側も片上理事が一人でそれを追認しただけだ」と考える人もいるかもしれません であるなら、なおのこと問題なのです プロ棋士vsコンピュータの戦いという、社会的に大注目されているビッグイベントなのに、そんな軽々しく川上会長と片上理事だけでソフトの入れ替えを認めたとしたら、それが大問題なのです せめて、双方なんらかの会議を開いて、周りの関係者の意見を聞くべきだったのです 組織なのだから、周りに人はいるはず、いるべきなのです しかし、ファンへのお詫びの記者会見を聞いていると、ドワンゴ側も連盟側も、その一人ずつだけで決めてしまった、というように私には聞こえました ドワンゴ側はともかく、連盟側も片上理事たった一人の判断にまかせっきりなのか? マジで?と私は衝撃を受けたものです

このときの記者会見、今でもまだ見られます 検索では見つけにくいので、アドレスを張っておきます
「第3回将棋電王戦 第2局の対局方法の説明」
http://blog.nicovideo.jp/niconews/ni045157.html

ドワンゴも連盟も間違うことはあるのです そして、今回の高額賞金の電王戦タッグマッチのビッグ棋戦設立に関しても、もしかしたら、双方、ものすごい少数の人間だけで判断して決定している可能性がある、ということです

そして、2つ目の事例です 連盟の棋戦問題に関する近年の出来事として、忘れてはならないのが、連盟が名人戦の主催スポンサーを変えようとしたときの一件です ウィキペディアより引用します
   
2006年3月、日本将棋連盟理事会は第66期(2008年)以降の主催を朝日新聞社に移管するとの方針を示し、この時点での主催社である毎日新聞社に対し、契約を更新しない旨の通知書を送付した。事前に何の相談もなく下された理事会の決定に、長年名人戦を通じ棋界を盛り立ててきた毎日新聞社は激怒し、大きな問題となった。(中略)
毎日新聞社側はこの(連盟の)主張に対し「将棋連盟は長年、十分な契約料を貰いながら財務改善の努力を一切しておらず、金に困ったから信義を捨て、伝統を売るのか」と社説で批判した。(ウィキペディアより)

これは、大きなニュースだったので、私ももちろん覚えています 毎日新聞は社説だけでなく1枚の全面を使って「連盟の行動は信義にもとる」とデカデカと書き上げていました 毎日新聞にしてみたら、今まで連盟にずっとお金を出していたのに、連盟がいきなり通知書だけで「こんどから朝日に乗り換えるから、あんたらはもう要らんわ これは決定事項だから じゃ、そういうことで」と言ってきたのだから、そりゃあ、怒りますよね

結果はご存知のように朝日新聞と毎日新聞の共催という形で落ち着いたから良かったものの、本当に大事件でした
この一件を見ていた他の棋戦のスポンサーの新聞社たちは、こう思ったことでしょう 「どんなに長年、お金を出していて付き合いがあったとしても、将棋連盟は、唐突に通知書一通で一方的に契約を打ち切ってくる 棋戦の名前も変えず、その棋戦丸ごと他のスポンサーに移す これまで培ってきた人間関係や築き上げたノウハウなど、無視する ずっと支えてきたスポンサー側の都合を、まるで考えない それが将棋連盟という組織なのだ」 

そしてこういう行為をすると、それは当然、連盟にそのまま返ってきます ある日突然、棋戦のスポンサーから連盟に通知書が一通届き、スポンサーから「もうウチが主催している棋戦、辞めるから これは決定事項だから じゃ、そういうことで」と言われるのです 
連盟とスポンサーの双方が、その棋戦の賞金総額などを話し合って折り合いをつける そういうことが全くなく、スポンサーからいきなり「辞めるわ」の紙切れだけで、その棋戦がある日突然潰れる 今後そういうことになっても、全く文句が言えない立場に、連盟はもう少しでなるところだったのです この一件は、そういう危機だったのです

この名人戦移管の事例に関しても、連盟内部では最初からプロ棋士みんなで話し合われた形跡がほとんどなく、大問題に発展してからようやく棋士総会が開かれたのです 名人戦はプロ棋士全員の基本給を決めているメイン棋戦です そのスポンサーを変える問題、こんな超重要なこと、「まずは事前にプロ棋士みんなで意見を出し合う、それから相手側スポンサーと話し合いながらく少しづつ事を進めていく そして、双方納得したところでようやく決定に至る」
これが定跡じゃないですか? プロ棋士たちはそれを全くせず、結果、連盟を、そして自分たちを危機に陥れたのです プロ棋士のみなさん、もうこの時のことを忘れたのですか?

「やねうら王のソフト入れ替えの一件」、「名人戦のスポンサー移管で大問題に発展した一件」、この2つの事例は、重要な事を決める前に、みんなで話し合うことの大切さ、周りの意見を聞くことの必要性、このことを教えてくれているはずです
  
ただし、プロ棋士たちはこう考えるかもしれません 「今度の高額賞金タッグマッ チ棋戦は、重要なことじゃない だから話し合う必要がない」 

では、なぜ高額賞金のタッグマッチ棋戦が重要な問題になるのか?
次回からはいよいよ「高額賞金のコンピュータを使ったタッグマッチ棋戦がなぜ問題なのか、そして、問題の程度はどのくらいなのか?」という核心部分に入っていきたいと思います

・・・今回は2つの事例を取り上げるだけで、こんな分量になってしまいました 
えーっと、この短期連載、その3で終わる、と書きましたが、私はまだ全然書き足りず、終わりません(笑) まだ先に続くことになりました(笑) なお、この一連の記事に関するページリンク、引用、コピペ等は歓迎します 無断でお好きにどうぞ 
(次回、その4はあさって土曜に掲載予定です)