では、なぜ高額賞金のタッグマッチ棋戦が重要な問題になるのか?
今回からは「高額賞金のコンピュータを使ったタッグマッチ棋戦がなぜ問題なのか、そして、問題の程度はどのくらいなのか?」という核心部分に入っていきたいと思います

これを具体的に理解するべく、一つの設問を考えます 
「2年後に始まる予定のこの棋戦の、成否を決めるのは何(誰)か?」
今回はこれを考えてみます

「2年後から始まる予定の高額賞金つきの電王戦タッグマッチ 仮に開催されたとしたら、この棋戦の成功、失敗を決めるものは何(誰)なのか?」 

・・・出場するプロ棋士と、そのがんばりでしょうか? ソフト開発者? 主催者のドワンゴの盛り上げ方? 連盟? 観た将棋ファンが喜んだどうか? この棋戦のキャッチコピーにあるように、「最高の棋譜」ができたかどうかでしょうか? あるいは、この棋戦に反対するファンが騒いだかどうか? もしくは、どうでもいいという関心のないファン?
ちょっと行を開けますので、少しの時間考えてみてください



私の出した答え、それは上記に挙げた例の中にはないです 
私の答え、それは「普段将棋に全く関心がない世間一般の人たち この人たちがどう思うか」 
これが2年後のタッグマッチの成否を決めるのだと私は思います 

タッグマッチの将棋の内容がどんなだったか、ファンが盛り上がったか、そういうことは一切関係なく、成否を最終的に決めるのは、将棋ファンも含めて将棋関係者ではない、「圧倒的絶対多数の、普段将棋に関心がなく生活している人たち」 これが私の出した結論です

竜王戦、名人戦に次ぐビッグ棋戦の誕生で、かなりの高額賞金を出すのですから、主催するドワンゴは例によって派手な演出で盛り上げようとするでしょう もちろん、連盟のほうとしても、プロ棋士対コンピュータの電王戦と同じように「普段将棋に関心のない一般の人が注目してくれるのはありがたい」と思って開催するのでしょうから、この棋戦を開催する以上は、マスコミが集まるのをこばむ、なんてことはありえないわけです 

そして週刊誌などのマスコミはネタを探すのが仕事ですし、プロ棋士が今まで見たことのない機械装置を身につけて対局している姿は「いい絵」になりますので、取材して取り上げることでしょう 
ですので、普段将棋に関心のない一般の多くの人たちにも、この棋戦でプロ棋士がやっていることが知れ渡るのは時間の問題でしょう   

では、この高額賞金のタッグマッチ棋戦のことを知ったとき、世間一般の人たちは、どう思うのでしょうか?

この棋戦が成功になるときは、世間一般の人たちがこう思ったときでしょう
「ああ、この前、将棋のプロ棋士はコンピュータに負けたって聞いたけど、今度はコンピュータを使って最高の棋譜を作り上げようとしているのか さすがプロ棋士、さらに高みを目指してがんばっているんだなあ」

一方、この棋戦が失敗になるときは、世間一般の人たちにこう思われたときでしょう
「何だ、この記事と写真? もうコンピュータにプロ棋士は負けて、プロ棋士のほうが弱いんじゃないの? それなのにコンピュータの手を見ながら試合をするようになったの? このメガネやタブレット、これでコンピュータに手を教えてもらいながらやるのか コンピュータのほうが強いんだから、プロ棋士はただその指示どおり駒を動かすだけってことにならないか? これだったら、ド素人のオレでもやれるじゃん ・・・何!? それなのに対局料が一局数十万円? 優勝したプロ棋士は1千万円以上も賞金がもらえるのか! オレなんて、1年間働いても数百万円がやっとだぞ プロ棋士っていったいどういう集団なんだ?」

「プロ棋士はコンピュータに負けた そしたら今度はコンピュータを対局中に使いながら、高額賞金をもらうようになった」
世間一般の人たちがこのことを知ったとき、上記の成功例と失敗例の、どちらの評価を下すのか・・・  
2年後の電王戦タッグマッチという棋戦は、本当に大きな賭けだと思います それも、とてつもなく危険な賭けです  

この棋戦が仮に「失敗」し、失敗例のような評価が下されたとき、それは連盟にとって、取り返しがつかないことになることは間違いないと私は思います 

しかし、プロ棋士たちはこう考えるかもしれません
「プロ棋士は将棋ファンによって支えられているんだから、世間一般の人たちの評価などは、それほど関係ない」
本当に、そうでしょうか? 次回にまた考えていきます (その5に続く 来週の水曜くらいに掲載予定)