佐藤康光 九段vs藤井猛 九段 NHK杯 2回戦
解説 広瀬章人 八段

将棋の戦法の研究が進んで行くのには、2種類の人間が貢献している
創造派と呼ばれる人たちと、修正派と呼ばれる人たちだ 創造派が考えた新手、新戦法に、修正派が改良を加えていって、洗練された戦法になっていく 
創造派と修正派、どっちがファンに人気があるかって、もう言うまでもないだろう(^^;
今回対局するのは、創造派を代表する2人だ

康光は1987年四段、竜王戦1組、A級 1回戦はシード 26回目の本戦出場
藤井は1991年四段、竜王戦1組、B1 1回戦で渡辺大夢に勝ち 20回目の本戦出場

解説の広瀬「康光は長年トップとして活躍している 数々のタイトルや棋戦優勝をしていて、将棋界を代表する棋士 序盤から工夫を凝らし、それがプロでも真似(まね)のできないような力強さがある
藤井もトッププロ 振り飛車のイメージが強い 藤井も他のプロが真似できない序盤を指すが、力強さと言うよりは、繊細で細かいところまで研究が行き届いている」

事前のインタビュー
康光「藤井九段は、藤井システムや角交換振り飛車における序盤戦の新しい創造、開発というのは大変なものがある 将棋界の歴史に名を残す棋士の一人だという印象があります
(抱負は)ここ最近はNHK杯戦は全く勝てていないので今日はなんとかしたいという思いで臨みたい」

藤井「佐藤九段とは30局以上指してると思うので、色々、棋風は分かっているつもりです とにかく力強いと言いますか、非常に自己主張の強い将棋という印象があります 
(抱負は)集中してがんばるだけだと思っています がんばります」

広瀬「藤井が振り飛車で来ることは間違いないと思う 康光がどのような対策を立てているか」

先手康光で、▲居飛車vs△角交換四間飛車になった 
広瀬「藤井と言えば、最近はこの戦法で星を稼いでいる 最初の方は藤井が一人で開拓していった戦法なんですけど、プロ棋士みんなに認められて、升田幸三賞を受賞した 藤井は指し始めた頃は苦労していた印象だが、この戦法の可能性に気づいていたのでしょう」

2人の対戦成績が出て、康光23勝、藤井10勝とのこと うむ、差があるが、まあこんなものか
広瀬「康光の対策は、比較的新しい形です 穏やかな展開になりましたね 角交換四間飛車の持久戦バージョンです」
お互いに銀冠に囲い、盤面飽和状態 両者、手損での手待ちが続く

広瀬「藤井はこの戦法の本を出したんですよ」
清水「あ そうなんですか」
・・・ええー、清水さん、知らないのか(^^; 良書と評判で売れてる本なんだけどなー 現役女流棋士として、対策を知っていなくていいのか(^^;?

広瀬「康光が四段になった1987年は、私が生まれた年なんですよ」
雑談が続く どっちからも仕掛けない すごい手待ち合戦になってる 藤井はもう左銀を何度上下に動かしたことか
そして、ついに読み上げの室谷由紀さんの声がかかった
室谷「まで 70手を持ちまして、千日手となりました」
ああー、千日手かーー しかし、これ、室谷さん、よく千日手と分かるなあ いくら慣れた記録係とはいえ、同一局面3回をしっかり認識して数えるのは大変そう(^^; 後日追記・千日手は同一局面4回でした すいませんでした

康光、顔がゆがんでいた 藤井は「いやー」と小声でつぶやいた 
広瀬「両者、打開の意思はあったと思うんですけど、仕掛けると悪くなってしまうということで、しょうがない判断だったんでしょうね」
んー、双方、仕掛ける前の手待ちでの千日手・・・ まあ、責任は先手の康光にあるなあ 後手の藤井としてはもう仕方ないわ 

千日手指し直しとなり、先後が入れ替わった 藤井の先手で、▲角交換四間飛車vs△居飛車 
あ、まただ(^^; 今日は藤井はこれで行こうということか 
今度は序盤の展開がだいぶ違っていて、藤井が三間に振りなおし、早々に歩がぶつかった
広瀬「これが角交換振り飛車の一つのバリエーションです 本局のように石田流を含みにした形もある 非常に軽い振り飛車ですね」

しかし、盤面、また落ち着いた持久戦模様に・・・
清水「またじっくりしてきましたか」
広瀬「そうですね」
おいおい、また千日手もありうるのか、と思って、私はびくびくしていた

広瀬「(大盤解説で)こうなれば部分的には康光が成功です」
ところが、実戦、その筋に藤井が飛び込んだ! 戦い、ようやく開始だ
清水「藤井は来させたんでしょうね」
広瀬「誘いのスキだと思います これでもう収まらないですね」

藤井、盤面左を放棄する展開になり、大丈夫かと思われたのだが、
広瀬「けっこう振り飛車がうまく指している印象がある 振り飛車の形は軽い 歩もたくさん持っている これなら藤井がなんとかなりそう」
おおー、広瀬の形勢判断、出ました! 藤井がちょっとリードか 

そして、藤井の手番、手が広くて具体的にはどうしたものか、流れを急にする手が必要というところ、藤井に驚きの一着が出た
▲7五歩、という手だ 後手の7三の桂馬の頭を狙ったものだが、そう指すものなのか・・・
清水は「一転して7筋ですかー」と、感心していた
これが見えづらい好手で、非常に好着想だったと思う 後手の康光はその桂を跳ね、戦いになった
盤面、一気に激しくなった  藤井の狙いどおりの展開!

盤の中央で激しい駒の交換が行われ、全て清算し終わってみると、藤井良しに見える! おおー、これは、藤井がかなりいいのでは・・・ 藤井は手駒がたくさんで、手に困らないだろう 康光の攻め駒が、足りないように見える

康光は王手をかけて攻めの手がかりを作ろうとしてきたが、これは足りないだろうなー
広瀬「康光はしょうがなかったんでしょうね 王手で勝負と」 
解説の広瀬、「しょうがない」というフレーズを使った こういうときは、もう大抵ダメになったとしたものだが?

清水「色々と駒が当たっていますが」
広瀬「パッと状況を整理できないですね」
清水「康光も少し指しやすくなったな、と思ってるでしょうか?」
広瀬「そう・・・ ですね ここからは瞬発力の勝負ですね」
ええー、康光の猛然の追い上げ! 藤井は手が広すぎて、正解を指すのが非常に難しい状況が続いている! まだ分からんかー! これだけ持ち駒があって手番、まだ藤井に勝ちがあるはず、なんとかしろ、藤井!

清水「藤井としては、一気の寄せはありそうですか?」
広瀬「んー 一気に寄ればいいんですけど」
その時! 藤井が寄せに行った~ おおー 寄るのか? これ、もう即、詰まさなきゃ負けだろう
広瀬「そうか 危ないのか なるほど」
お? お? こ、これは? うまい手順の組み合わせがあったのか!! こ、これは・・・

藤井、力強くノータイム指しで、康光玉を長手数の即詰みに討ち取った うおーー、見事!
121手で藤井の勝ち やったー、藤井、すげえーー 最後のほう、ノータイム指しとは・・・

終局直後、康光「そっか いやー 詰まないと思っちゃった そうか そうか」

広瀬「最後、藤井がうまく指しましたね ちょっと気がつかない詰み手順でした 藤井がペースを握ったように見えましたが、康光が強く踏み込んで気がついたら康光のペースになっていたと思う 本来ならそのまま押し切るかと思ったんですけど、最後の最後にドラマが待ってましたね 大熱戦だったと思います」

うーん、広瀬の言う「康光ペース」がどの辺りだったのか、私には疑問が残った 
やっぱり、藤井が中盤でリードしていて、康光が相当追い上げたが、なんとか最後、即詰みに討ち取って藤井が逃げ切った、というのが私の見立てだ
いやー、それにしても藤井、よく勝ったなあ 最後の即詰みは見事としか言いようがない 1回戦のvs渡辺大夢でも、終盤はドタバタがあったが、何も手がかりがなかった相手玉を、一気に長手数(19手)の即詰みに討ち取っての勝利だった この2回戦でも、それをまたやってのけたなあ 本局、数えたら21手詰みか すごい! パチパチパチ

藤井と言えば、「終盤のファンタジスタ」の異名があるが、詰ます力は素晴らしい確かなもの、それを見せ付ける藤井の今期NHK杯となっている 

一方の康光、NHK杯の成績が気になったので調べてみた
2010年 2回戦○vs屋敷 3回戦○vs久保 ベスト8●vs羽生
2011年 2回戦●vs永瀬
2012年 2回戦●vs佐藤天彦
2013年 2回戦●vs豊島
2014年 2回戦●vs藤井
こうなってしまった これで4年連続、初戦敗退か 康光ほどの強豪が・・・ しかし、対戦相手も厳しいのばかりだ(^^; 

NHK杯は、千日手の分もしっかり放送しようという番組構成だが、それは果たしていいのかどうか 銀河戦は、指し直し局しか放送しない それでいいんじゃないのかな・・・
さて、来週は羽生vs高橋か これも楽しみだな~ 

<追記 後日談 2日後の記事よりコピペ>
まず、おとといのNHK杯の記事の反省から
おとといのNHK杯で、私は終局後の解説の広瀬の感想に疑問を抱いた
広瀬は「藤井ペースだったが、その後康光ペースになり、そのまま康光が押し切るかと思ったら最後はドラマが待っていた」ということだった
対して私は「藤井ペースで、康光が追い上げたが届かなかった、というのが正しいのでは」と記事に書いた
どちらが正しかったのか? それは、阪田大吉さんの「将棋のブログ」にある、激指13のグラフを見ればわかる!

・・・そう、激指13のグラフ、それはモロに広瀬の意見を見事に表したグラフの推移だった!
まあ、激指13だからって、必ずしも正しいわけじゃないけど、これはもう広瀬が正解だわ(^^; 
広瀬はあの難しい中終盤を、一言で的確に表現していたのだった さすがA級!

そして判明したことは、なんとあの最後の藤井の即詰み、あれは康光が逃げ間違えていたから詰んだ、ということだ 調べてみると、確かに詰まない・・・! 藤井が詰みを見切って寄せに出たのではなかったのだ そ、そうだったのか・・・ 藤井が王手ラッシュに出たとき、広瀬は「パッと読んだ感じでは詰まない」と言っていた これも正しかったのだ

今回は広瀬が正しかった まあしかし、私は激指で解析してから感想を書く、ということはしないでおこうと思っている なんか、興がそがれそうで、それはそれでイヤじゃない?(^^; 
NHK杯戦の激指の解析が見たい人は、阪田大吉さんのブログへどうぞ! そっちの役割は、阪田大吉さんにまかせた(^^;
阪田大吉さんのブログ、私はいつも本当に楽しみに見てますよ!(^^)