2014.09.18 電王戦タッグマッチに関する意見表明
2014.10.03 電王戦タッグマッチを考える その1 プロ棋士のコンピュータに対する認識の現状をまとめてみる
2014.10.04 電王戦タッグマッチを考える その2 プロ棋士がコンピュータの強さを認めない理由とは?
2014.10.09 電王戦タッグマッチを考える その3 2つの事例から見る、話し合うことの大切さ
2014.10.11 電王戦タッグマッチを考える その4 この棋戦の成否を決めるのは何か?
2014.10.15 電王戦タッグマッチを考える その5 連盟を根底で支えているのは何なのか?
2014.10.17 電王戦タッグマッチを考える その6 アマチュアに及ぼす影響は?

(PC上では、この記事の右肩にある『電王戦タッグマッチを考える』をクリックすると、今までの連載記事が全部出ます)

最初に書いた「意見表明」の記事と、その1~その6までの記事のまとめをしたいと思います
一言で言って、2年後の高額賞金のタッグマッチという棋戦は巨大なリスクを抱えている、ということです
もし連盟がこの棋戦を行う場合、そのリスクを分かった上で覚悟を持って行うのでしょうね?ということです

・プロ棋士自身のアイデンティティー(存在理由)をなくすリスク
・ファンの間で反対が起こるリスク
・世間の人のプロ棋士への尊敬の念がなくなるリスク
・それにより、ドワンゴ以外の他のスポンサーが離れて行くリスク
・アマチュアのモラルが低下するリスク

ホントに、これだけのリスクを抱えてる棋戦を、やるんですか?
プロ棋士vsコンピュータの5vs5の電王戦は、たった2年やっただけで、もう次回でファイナルとなることが決定したじゃないですか このタッグマッチも短命に終わるかも、とは考えないんですか? 10年、20年と続けられる棋戦なんですか?
連盟の命運を賭けるだけの価値がある棋戦なんですか?

連盟がこの2年後のタッグマッチの話を断っても、ドワンゴにとってはそれほど大したダメージではないでしょう
ドワンゴのニコニコ動画の3大コンテンツといえば、「アニメ」と「政治」と「将棋」というのは有名です
それでも、ドワンゴにとっては将棋は、1コンテンツに過ぎません 
もともとドワンゴにとって将棋の電王戦というのは、降って沸いた臨時ボーナスみたいなものでした 連盟は、電王戦でドワンゴを充分儲けさせてあげて、有名にもさせてあげました 普段、ニコニコ動画はタイトル戦の中継などをしてくれてますが、それもドワンゴにとっては商売、それだけのことです 

ニコニコ動画は他にも音楽、プロ野球、教育、多彩なジャンルをやってます
一方、連盟にとってのコンテンツとは何ですか? もう、言うまでもなく、将棋でしょ? 将棋だけじゃないですか  
もし2年後にタッグマッチをやって「失敗」した場合、ドワンゴはただ将棋という1コンテンツの電王戦タッグマッチがダメだった、というだけで終わりますが、連盟は本質的にダメージを受ける危険がある、それに気づきませんか?


さて、この棋戦に反対の意見の人にぜひ認識していて欲しいのは「ファンの間で反対者数が過半数を占めないといけないんじゃないか」という考え方は、それは違う、ということです
選挙じゃないのですから、反対票が賛成票を上回る必要はないんです

ファンの間で相当数の反対がある、というだけで充分、連盟がこの棋戦を検討し直す理由になります
せいぜい3割も反対者がいれば、連盟も「これは問題になりそうだ」と感じるでしょう
あと、「連盟なんか早く潰れてしまえ」と思ってる人、こういう人は賛成票を入れるでしょう これは確実です(笑)

でもこの棋戦、ラッキーだったことも2つあると思います
1つ目は、高額賞金のビッグ棋戦にする、とドワンゴが言ってきたことです これは議論がやりやすいです
もし、ドワンゴが小額賞金で地道に開拓していく、と言ってきたのであれば、議論は加熱しにくかったですからね
2つ目は、2年後ということで、まだ議論を尽くす時間が残されている、ということです 
この2つの点は、私はラッキーだったと感じています


では、今後、プロ棋士はコンピュータとどう付き合っていけばいいのか?
その点について、私の意見を書きたいと思います 
故・米長会長は、「一番大事なことは共存共栄でね」と言っていました ドワンゴも、電王戦でプロ棋士が大きく負け越したときから、キャッチコピーになにかと「共存共栄」と触れ込むようになりました

私はそもそも、この「共存共栄」という言葉にかなり疑問を感じています 
共に在り、共に栄える・・・ これが本当に、これからプロ棋士がコンピュータと付き合う唯一の道なのでしょうか?
確かに、共に在る、というのはもう避けられないようです もうプロ棋士の間でも事前の研究ではコンピュータに考えさせる方法を何年も前から導入して、棋力向上の助けにしている人が多いと聞きます

では、共に栄える、はどうでしょうか? これは、そんな必要は全くないと思います
プロ棋士はプロ棋士どうしで戦って栄える、コンピュータはコンピュータどうしで戦って栄える、これでいいのです
言わば、「別栄」です 別々に栄えればいいのです
こういうのを生物学の用語では、「棲み分け」(すみ分け)と言いますね     

「棲み分け」の意味を調べると、こう出てきました
・生活様式のほぼ等しい異種の生物群が、生活空間や生活時間・時期を分け、競争を回避しながら共存する現象。ヤマメが下流に、イワナが上流にすむ例など。 

この「競争を回避しながら共存する」というところが大事です もう、プロ棋士はコンピュータと競争する必要はないのです
連盟も、本心では「競争はもう無理」と思ったから、5vs5の電王戦は来年でFINALにしたのでしょう?

「共存共栄」から、「棲み分け」へ・・・ 将棋ファンの意識がこう変わっていくのは時間の問題だと思います
「連盟はあと5年、耐えてくれ! あと5年もすれば、多くのファンの意識が共存共栄から、棲み分けに自然に変わっていって、タッグマッチという棋戦をやろう、なんて誰も言い出さなくなるから」 こう私は思っています 
 
最後になりますが、プロ棋士がコンピュータに負けましたが、これは連盟にとって「選べない未来」でした
いずれは来る時代の流れで、必然の未来でした 連盟にとってはどうしようもないことで、仕方なかったんです
電王戦をやろうがやるまいが、いずれはどこかで負けたのです
でも、2年後のタッグマッチをどうするかは完全に「選べる未来」です 連盟が、プロ棋士たち自らが選択して決定できる未来なのです この差はとてつもなく大きいです 

2年後の電王戦タッグマッチという棋戦、連盟は、そしてプロ棋士たちはいったいどう判断をして、どういう選択をするのか?
つまり、先を読むことが商売のプロ棋士たちが、「この棋戦を行うとどうなるのか、先を読めるのか」が問われているのですよね 
今後に注目していきたいです 短期連載はこれでいったん終了します また、何か動きなどがあったときに私はこの連載の続きを書くと思います (短期連載、終わり)