囲碁将棋チャンネルで、毎週土曜の夜に放送されている女流王将戦の内容をお伝えしている 今回は15日に放送があった対局 

いよいよタイトル戦、3番勝負が始まった 九州の宮崎県で10月4日に行われた第1局
前夜祭では、主催社である霧島酒造株式会社の社長の「きれいなお二人、そしてきれいな水の霧島山系で・・・」というシャレた挨拶、そして連盟の青野専務理事の「昨年に彗星のごとく現れた香川さんと、そして『まだまだあなたたちの時代にはしないわよ』という清水さんの戦い」という挨拶があった
対局者2人のコメントは、清水「大好きな対局会場、そして香川さんと戦えるのがうれしい」
香川「防衛戦なんですけど、お相手が清水先生なので教わりたい」

解説は安用寺六段、聞き手は村田女流二段 記録は野田澤女流1級 読み上げは伊藤明日香女流初段 
対局が始まり、先手清水の▲居飛車+左美濃vs後手香川の△ノーマル三間+高美濃という戦型
関西人コンビの軽妙なトークで、私は楽しんでいた

が、終盤、事件は起こってしまった・・・ 
104手目、形勢不利で、秒に追われた香川が、「9」まで読まれても指せなかったのだ 香川が手をすべらせたのだ
香川が持ち駒の歩を盤上に置いて着手完了したときには、明らかに秒が切れていたと私には思えた 
しかし、「10」は読まれず、対局は続行された 
結果は117手で香川が投了、清水の勝ち

詳細は以下のとおり
103手目で、安用寺が雑談している 香川の駒台には桂3枚と歩5枚
安用寺「持ち駒が桂ばっかりっていうのは、寄せにくいんですよー 『3桂あって詰まぬことなし』って言いますけどねー、あれ、ホンマ、大ウソですよ」
村田「ええー(笑)」
安用寺「3桂あったって、詰ましたことってないんです(笑)」
村田「それめっちゃ衝撃的な事実を」

そして104手目、問題のところ 後手の香川の手番
香川が秒を「8」まで読まれても何もせず、「9」まで読まれたところで駒台に手を伸ばした
そして、歩を持ち上げようとしたが、うまく持ち上がらず歩はすべってしまい駒台に裏返った 
この時点で秒読みの伊藤明日香が「10」と言うかと観ていた私は思ったが、伊藤明日香は何も言わず
香川は慌てて7三の位置を指で示したが、何も言わず 指で示すのが精一杯で言うことができない
遠くの位置からの「×××(聞き取れず) おっ!」という男性の声が対局室のマイクに入る 声の主は青野であろうか? 記録の野田澤女流と読み上げの伊藤明日香女流を挟んで、立会人として青野九段が真ん中に座っていたからだ 声色は中年男性の声だった 
香川が歩を持ち直し、7三に歩を置いたときには、秒読みの伊藤明日香が正確に秒を読んでいれば、どう観ても「10」は絶対に経過していた ただ「11」には間に合っていた(もちろん「11」なんてないけど)
そのまま対局続行

この場面、見ていた安用寺はすぐさま、
安用寺「今のは『先に歩を打つ』っていうのを示しましたから、一応オッケーなんですけど、ただまあ、あんまりマナーは良くないですね 秒を読まれている間に地点を指してね、歩っていうふうな感じで、こう、言えばオッケーなんです だから今のはオッケーなんですけど、マナーは良くないですね」 

105手目
安用寺「(香川は)必死で仕方ないですね もうパニックです 香川さんとしては、(形勢が)こんなはずではというのが絶対あるから 人間どうしは面白いね 見てるほうは面白いです」
そして、何事もなかったように、対局は続けられた 
 
私は呆然・・・ おい、これ、反則負けじゃん・・・  誰がどう観たって、「10」までに指せていないじゃん 何で、そのまま対局続行なの? 連盟の使っているストップウオッチって、「9」で止まる性能を持っているの? 誰か、「ザ・ワールド」のスタンドでも使ったの? 
確かに、安用寺の言うように、秒読みの最中に着手できなくても、指で盤の升目を示して声を出して「歩!」と駒の種類を言えば、反則ではない それは私も知っていた (ただ、駒の種類と局面によっては「銀打ち」とか「銀引き」と言わねばならない場合もあるだろう)
しかし、今回は、香川は明らかに何も声を出していない 香川を常時、映し続けていた小画面があり、映像をリプレイして観ても、香川は焦っているだけで何も言ってない  
対局室にあるマイクから秒読みの伊藤明日香の声を拾っている そして盤上の音を拾う別のマイクがあるのだろう、指したときの駒のパチッという音も常時、視聴者に聞こえてきている NHK杯と同じだ 香川が何か声を出していたなら必ず視聴者には聞こえたはず 「××× おっ!」と叫ぶ第三者の男の声が、それほど大きな声ではないがマイクに拾われて視聴者には聞こえてきている 香川が声を出したってありえるか? 

いや!? ただ、さらに念を入れてよくよく、じーっと香川を観察すると、香川は何か小さく口を開いている もしかして、このとき「歩」と言ったのか? 口の形からして、「歩」という動きにも見える もしかして、このとき「歩」という言葉を清水にだけ聞こえる声で言った可能性がある? 声が小さすぎてマイクに届かなかった可能性が? しかし、直後に香川が慌てて駒台に手を戻したときには、手に駒がたくさんぶつかって「ジャラジャラ」という音がバッチリ聞こえており、こんなに音が入るのに、香川の音声だけ入らなかった?

んんー、確かに香川が口をややすぼめている! このとき「歩」と言ったのか? もう、相当微妙だな 対局室に設置されてあるのは、かなり小さな駒音でも拾える性能のマイク それが声を全く拾えてないのは確かだ 
しかし香川は限りなく音量が0に近い声で「歩」と言った可能性がある それは否定できない これを、どう解釈するか・・・  

だが、20回くらいこの問題のシーンを再生して観た私の見解は、あれは香川は「歩」と発声していない 声の音量が全くないのだ 「一瞬口をすぼめるのが精一杯で、声には出していない」 それが私の結論だ

そもそも、大きな声で「歩!」というのがマナーではないか ハッキリと、最低限、相手には聞こえるように言うのが当然だろう
香川が清水にハッキリ聞こえるように言ったならば、必ず、絶対マイクで拾えたはずだ 小さな駒音すら聞こえるマイクなのだからね
 
香川は△7三歩と指そうとしたのだが、持ち駒は桂3枚と歩5枚だった 7三の地点に打てる駒は2種類あったのだ そして、7三に行ける盤上の駒も、玉と銀があった 香川は盤上で7三を指差したが、「歩」と明示しなければならなかったことは確かだ

清水が「反則負けですよ」と言って一方的に対局を終えたとしても、何も問題はなかった むしろ、そうすべきだった 
なぜか? 対局者は相手の顔を見ながら対局しているのではない 
将棋では、たまに相手の顔も見るが、ちらっと見るくらいだ もちろん、見る義務など全くない 
ちなみに今回の問題の場面でも、清水の目線は盤からずっと離れていないように小画面には映っている
今回の香川の行為は、「声としては聞こえなかったかもしれないけど、私の口を見てくれていれば、『歩』と言ったことがわかるでしょ、だって口をすぼめたんだから」 この香川の主張を良しとしてしまう、そういうことではないか
「声に出さなくても口の動きだけでいい」 そんなのは許したらいけないことは明々白々だ 秒読みに入ったら、対局者どうし、相手の口の動きを目で確認しながら指すとか、そんなのはありえない

今回の件、立会人の青野九段の責任は非常に重い 
プロ棋士、女流棋士はアマチュアの模範となるべき存在のはず アマ、プロ問わず、そもそも将棋では「秒が切れた、いや、切れない」の揉め事は多い 秒読みになったら、普通のプロは、切れないように必死になって指す それをファンもドキドキして観ている  それなのに・・・
 
立会人の青野九段、「××× おっ!」と言ったのは、何だったんですか? あの声は青野九段ですよね? 何か問題があったんじゃないですか? あなたの耳には、香川さんが「歩」と言ったのが聞こえたのですか? 聞こえたなら、何の問題もないので、叫ぶ必要はなかったのでは? 明らかに、香川さんの口が若干すぼんだ後に「おっ!」という声が聞こえてますよ? 「歩」と言う声が聞こえたなら、叫ぶことはないのでは?  

解説の安用寺六段、すぐに「今のはオッケー」と言っていましたが、あなたには香川さんの声がちゃんと聞こえたのですか? TVのボリュームを上げてVTRを何回も観ても、盤上の小さな駒音すら聞こえるのに、私には香川さんの声は全く、全然、聞こえませんけどね 

私が安用寺六段にまで責任を求めるのは、理由があります 以下、連盟のHPからの引用です  

日本将棋連盟による対局規定
http://www.shogi.or.jp/faq/taikyoku-kitei.html#hansoku

第5条 秒読み
対局者の持時間が切れた時点より、記録係が秒読みを行う。
1. 1分将棋の場合は「30秒・40秒・50秒・1・2・3・4・5・6・7・8・9・10」と、秒を読む。 最後の「10」を読まれた対局者は時間切れで負けとなる。
2. 30秒将棋の場合は「10秒・20秒・1・2・3・4・5・6・7・8・9・10」と、秒を読む。 最後の「10」を読まれた対局者は時間切れで負けとなる。
3. 対局者は残り10分になったら、1分将棋になる前から、同様の秒読みを記録係に要求することができる。
4. 対局者が秒読みの最中に駒を手から落とした場合には、指で盤面部分を押さえ、どう指すかを言えは着手の代用と認める。

第8条 反則
6. 対局者以外の第三者も反則を指摘することができる。


上記のように、第三者も反則を指摘できる、のです 
「第三者」というのがどこまでの範囲を指すのかが分かりませんが、この場合、第三者の立場のプロは青野九段と安用寺六段、そして女流のプロが3人も居たわけです でも、だーれも、反則を指摘しない・・・ これは問題では?とすら言わない まあ、女流は立場上、言い出しにくいでしょうね 聞き手の村田さんが、対局場まで走っていって、清水さんと香川さんの間に割って入っていって「反則です!」とも言いにくいでしょう でも、私は村田さんにすら、責任はあると思いますよ 村田さんは「私の耳には香川さんの声が聞こえませんでした」と言うくらい、できたはずです あるいは逆に村田さんには聞こえていたなら、「声が聞こえましたね」でも、もちろん構いません

安用寺六段、即断で「オッケー」と言い切れるきるほど、単純な行為でしたか? 私は音量を上げて何回もVTRをリプレイさせましたよ 本当に香川さんの声が聞き取れましたか? それとも、安用寺さんの正体は実は「デビルイヤーは地獄耳」のデビルマンなのですか?  

まあ、それにしても責任重大なのは、どう考えても立会人の青野九段です 
立会人として、対局者のそばにずーっとついていて対局を見ていて、「××× おっ!」
それで終わり、番組を観ていた視聴者に、全く何の説明もしないのはどういうことですか? ありえないでしょう
「××× おっ!」と叫んだだけで立会人の仕事が務まるなら、もう立会人なんて、廃止したらどうですか? 人件費削減になりますよ 立会いは何のために居るのですか? 
この番組は、全国の視聴者がお金を払って観ているのです たとえ香川さんの行為が反則ではなかったにせよ、対局室に居た立会人として、視聴者に対して何らかの説明が必要な場面だったでしょう 

終局後、対局者にインタビューがありましたが、香川さんも清水さんも、普段どおり将棋の内容を振り返って、「次局もがんばります」と言っただけで、この件には一言も、全く触れませんでした 私は対局の内容なんて、もう一気に吹っ飛びましたよ 
何の説明もなく、番組は粛々と終了しました 

連盟は、この女流王将戦、延々予選から決勝トーナメントをずーっと戦ってきて、晴れ舞台のタイトル戦、前夜祭までやって盛り上げて、あでやかな着物姿で対局して、それでこういう事件・・・

まあ・・・ 香川さんはこれにこりて、「『8』まで秒を読まれても全く手を動かさず放置で、『9』になってようやく駒を触りに行く」、というクセはやめるべきですね 今までずーっとこういう際どい指し方を香川さんはやり続けてきましたもんね よっぽど、駒の触り方に自信があるんだなあ、と私は前期から思いながら香川さんの対局を観てました 関西会館や立命館大学で散々、そういう「際どい指し方」を練習してきたんでしょうけど・・・ 
香川さん、今後もこういうことは起きますよ やめるべきですよ

・・・って、やめないだろうなあ だって、何にも問題にならなかったわけでしょ? 少なくとも、表だっては何も事件になってませんもんね 

私は、今回の香川さんの行為は反則だったと思います
周りのプロの人たちは、プロの規律を示すために反則負けにするべきでしたし、そして香川さんのためにも、反則負けにしてあげるべきでした 
立会人の青野九段、対局者であり大先輩である清水女流六段、解説の安用寺六段、この人たちの責任は重いですね 「観ている視聴者に対してプロの規律を示さないし、若手プロに対して後進の指導をしてあげない」 そういうことですからね

秒を読まれて慌てる、それは将棋では全く普通のことです だから対局者にこういう行為が起こっても、何も別に不思議はないし、それを非難するつもりは、私は、まっっったくないんです
下記のどれかであれば、むしろ今回のことは私は美談として受け止めたでしょう

・香川さんが着手したものの、「ああ、ちゃんと声にしなかったから、これはやっぱり反則だわ」と思い直して自分からすぐ投了する
・香川さんの着手後、清水さんが「ちゃんと私に聞こえるように声に出さないと反則負けですよ」と香川さんに対して発言、教えてあげる そして反則負けが成立、清水勝ちで終局となる
・立会人の青野九段が対局を中断、「審議」または「反則負け」を宣言する
・秒読みの伊藤明日香さんが、事務的に「10」と読み、終局となる それを周りが当然と認める
・記録の野田澤さんが「第三者」として、立会いの青野九段に進言する そして「審議」となる
・解説の安用寺六段が「第三者」として立会いの青野九段に進言する そして「審議」となる
・聞き手の村田さんが「第三者」として解説の安用寺六段に相談、そして「審議」となる
・観に来ていた大盤解説の会場のお客さんから「反則じゃないのか」との声があがり、これを「第三者の指摘」と解説の安用寺六段が認めて「審議」となる
・主催社の霧島酒造の社長さんが収録後にでもいいので「このことの説明を」と声をあげ、これを「第三者の指摘」と認めて「審議」となる
・対局終了後、番組内で青野九段らの関係者が出演して、問題の場面について視聴者に対して納得がいくような説明がある  例えば、青野九段が「私には香川さんの『歩』という声が聞こえたので、反則ではないとみなして対局を続行させました」と発言する、など

これらの中の、一つにでも該当していれば、(少なくとも私にとっては)美談になったものを・・・ 
問題が起きたときに、プロならどう対処するか、というのは、実は「大きな見せ場」、「チャンス」じゃないですか? 今回はどうですか? 現場のプロ7人が問題なしとしてスルー、これが現実・・・ ましてやタイトル戦で全国放送されると分かっていながら・・・  

対局日は放送日の1ヶ月以上前の録画番組なんですから、少なくとも、テロップくらい、流したらどうですか?
安用寺六段が「言えばオッケーなんです、だから今のはオッケーなんです」と即座に解説していましたが、香川さんの声が聞こえた視聴者って、存在したんですかね?   

今からでも、まだしも、説明を連盟はHPに載せるべきですよ 
じゃないと、本当に連盟は「9」で止まるストップウォッチを使っている、と私は理解してしまいますよ 

連盟の規則、「反則は第三者が指摘することができる」、というのもハッキリしませんね
第三者がどんな人物を指すのか、もっと明確にしたほうがいいですね  

それと、大事な規則に誤字がありますよ 「第5条 秒読み 4」の中です それも修正してくださいね 
誤字から、この規則はいかにも、もう「長年放置でほったらかし」ということが読む人に伝わってきます
そもそも、この女流王将戦は秒読みは40秒将棋なのですが、40秒将棋の項目というのがないですね・・・

くどいようですが、私は、香川さんが反則と思える行為をしたから、怒っているんじゃないんです
どういう場合に秒が切れたか切れないか、今後も頻繁に起こりうる重要問題なのに、ましてやタイトル戦なのに、対局でこういう行為があったときに、対局者と第三者、プロが合計7人も居て、全く何事もなかったかのようにスルーしてしまう、それに怒っているんです プロが7人も居てみんな全く問題意識がない、それを「あってはならない事件」と言っているんです

今回の事件で私が理解したことは、安用寺六段は地獄耳を持ったデビルマン、青野九段は「××× おっ!」と叫んだあの「×××」の瞬間に時間を止めたスタンド使い、そういうことです 以上です
(追記・この一件は、私からの規定の改定の提案事項として、この後、2日に渡ってとりあげるきっかけになりました)