連盟の反則規定「対局者以外の第三者も反則を指摘することができる。」
この意味するところを、もっと考えてみました

そして、私が出した結論はこうです 「この規定は撤廃したほうが、スッキリする」

昨日の私の案、あれも一案で、あの案に変えれば、現状よりもずいぶんマシになると思います
しかし、さらに考え、もういっそ、この条文は撤廃する、これが一番いい、そう私は思いました

「対局の勝敗を決めるのは対局者 反則行為があっても、対局相手が指摘しない限り、反則にはならない」
もう、これでスッキリしますよ

田丸九段は、自身のブログで「対局者以外の第三者(立会人・記録係・観戦記者・棋戦関係者・観戦者など)が反則を指摘しても、助言にはあたりません。」と書いておられます 2011年11月の見解です
http://tamarunoboru.cocolog-nifty.com/blog/2011/01/post-17ff.html

田丸九段といえば、立会人の経験も多く、プロ棋士の中でも物知り博士として知られ、今年6月の連盟の総会のときには議長を務めた人です 
「第三者」の定義を連盟はHP上では公表していませんが、田丸九段は、「観戦者」が反則を指摘できる、という認識なのです 
これは、恐ろしいことですよ 全くの一般人が、反則を指摘する権限がある、ということです 今回の女流王将戦の件でいえば、大盤解説場に居たお客さんが、ダッシュで対局場まで走っていき、対局室に飛び入って、「反則です! 反則負けで終局となります」と宣言する権限がある、こう受け取られる可能性がありますよ 
今回の香川さんのケース、けっこう微妙でもあったので(私は反則行為だと思いますが)、たとえそのお客さんの判断が間違いだった、と後から判明しても、ただお客さんは「権限を行使しただけ」、そういうことです 

今は、ニコニコ動画などで対局の模様が生配信されている時代です ニコニコ動画では、匿名で観戦者のコメントが流れ放題です 「第三者」の権限を持つ人が、恐ろしいほどたくさん居るのです 
「第三者」の権限を観戦者にまで与えてしまっては、とんでもないことになりかねない、そう思いますね

田丸九段は、「現行の対局規定は1989年に制定されました。」と書いておられます 
この「第三者が反則を指摘することができる」はいつ条文となったのか、それは私にはわかりません

そもそも、なぜこの条文ができたのか、私の推論ですが、おそらくこうではないか、と思うので、書いておきます
「反則をたびたび平気でする偉い先輩棋士が居た しかし立場の弱い後輩棋士は、反則を指摘するとその後にイジメなどにあうかもしれないので、なかなか指摘できない そこで、第三者にも助けを求めるべく、この条文ができた」
私の推論ですが、これが真相ではないでしょうか 

今年の将棋世界11月号、つまり先月発売された将棋世界に、河口俊彦さんの記事に、こうあります
この記事は重要と思いますので、ネット上に挙げておく必要もあると思い、少々長いですが転載させていただきます

将棋世界2014年11月号 P124~P125
「評伝 木村義雄 第17回 関西棋界の状況」より 【記】河口俊彦
『昭和18年、戦時下にあっても、名人戦その他の対局は行われていた。しかし、第4期、第5期についていえば、ただ行われたというだけの、内容のないものだった。戦火はひろがり、将棋を指すどころではない世相であったことも考えなければならない。そうだとしても、木村以外の当時の高段者達は堕落しきっていた。新聞将棋が盛んになるにつれて、棋士の懐が豊かになっていったのは、これまでに書いた。それはよかったのだが、そのお陰で皆、遊び事に興ずることになった。大成会の幹事長の金子金五郎ですら、飲む打つ買うに明け暮れる、どうしようもない人になっていた。
また対局マナーもだらしないもので、待った、は当たり前のこと、とはいわないまでも、かなりあったらしい。念のため書いておくと、相手が指した手を見て、待った、はさすがにしない。指してしばらくして気が変わるとか、ポカに気がついて、指し手を変える、という類の、待った、である。名棋士の花田長太郎も、しばしば、待った、をしたらしい。昭和11年の第1期名人戦挑戦者決定戦でもあったと、観戦記に書かれていた。書いたのは樋口金信という名物記者だったが、そんなことまで書かれては指せない、と、棋士から観戦記忌避の抗議を受けたと樋口氏は明かしている。
資料を読んでいると、いろいろな人がやっていたらしく、どうも、反則、という意識が薄かったようである。私も少年時代に戦前の大家の記録をとって、待った、の場面を何回も見ている。
これは昔書いた話だが、一つ例を挙げよう。萩原淳八段と加藤一二三六段が対戦したときのことだが、これはB級2組順位戦の最終局で、加藤はすでに昇級が決定していて、荻原は勝てば復帰という一番だった。将棋は荻原優勢で進み、終盤になったころは、荻原必勝となっていた。そこで荻原は寄せを狙った手を指したが、しばらくして「こんなアホな手はあらへん」とかいって、荻原は指した手を変えた。明らかな、待った、である。加藤は何も言わず、そのまま荻原勝ちで終わった。荻原は機嫌よく帰ったあと、残った加藤少年は「あれはひどいよね」と口をとがらせた。
私は意外な思いがした。待った、は当然のことと思っていたからである。当時はまだ反則など正式な規則がなかったのだ。
今になって思うのは、加藤が、ひどい、と思ったのなら、その場で、きっぱりと言わなければいけなかった。それを言えなかったところに、勝負師としての甘さがあった。大山康晴に勝てなかったのは、そんなところにも一因があった。』  

この記事の中で一番衝撃的なのは、待った、を目撃した若き日の河口さんが「待った、は当然のことと思っていた」、このことです 
だから、連盟は「第三者が反則を指摘することができる」という規定、これを作らざるを得なかった、これが実情ではないでしょうか 

しかし、今、もう時代は変わりました 今、強いプロ棋士、上位にランクされている男性棋士のみなさんが、こういう反則行為を平気でしますか? していないでしょう? 私は、少なくとも今A級に居るような上位棋士で、そんな人は知りません それとも、私の知らないところではしているのかな?(^^; いやいや、みなさん、とってもマナーがいいな、と本当に感心して観ています

これは、昔の時代と比べて、素晴らしい意識の変化ですよ ここまでプロ棋士の意識を決定的に変えた変革者、それは誰あろう、現会長の谷川浩司その人でしょう 若き日の谷川さんが21歳で名人を取って、「1年間、名人位を預からせてもらいます」と発言したときから、時代は動いたのです 「名人って、とんでもなく偉い立場の神のような存在なのに、こんな謙虚な発言をするものなのか」と、当時の関係者たちは、どれだけ衝撃を受けたことでしょう 

谷川さんのその後の各メディアでのインタビューの受け答え、なにより対局中のマナーの素晴らしさは、後進に脈々と受け継がれ、羽生さんをはじめとする、マナーが素晴らしいプロ棋士たちの育成につながったのです

谷川会長、今回、谷川さんの素晴らしさがあらためて私にはわかりました 紫綬褒章、受章おめでとうございます!

さて、話を戻します そう、もう時代は変わったのです 河口さんの記事を読めば、一目瞭然ではないですか 
この「第三者による反則指摘ができる」という条文、もうこれは要らないのではないですか?
もちろん、この規定がなくなると、困る場合もあるでしょう でも、あると、さらに困るのではないですか?
この規定は、現在ではむしろトラブルを生む原因になる場面のほうが多いのではないですか?
ややこしいし、何より「第三者にまで責任が及んでくる」ということにつながっていますよ
対局中に、一般人の観戦者が突然、ふすまを開けて対局室に飛び入ってきて、「反則です!」と宣言してもいいのですか?
その一般人がルールをよく知らない人で、実際には反則ではなかった場合でも、その一般人は、「反則と思った」ので権限を行使しただけ、対局室に入ったことはかなり失礼にあたるが、その指摘行為自体はオッケーとされる、現状はそういう規定ですもん
一般人には、どんな人が存在するかわかりませんよ 平気で迷惑行為や犯罪を繰り返す人もたくさんいます 
将棋関係者でも、タイトル戦で対局中の羽生さんに「サインを求めた」ベテラン観戦記者が居ましたね (2009年の名人戦、しかも手番は羽生のとき)

田丸さんは自身のブログで「第三者が反則を発見したのに指摘できないというのは、納得いかないと思います。」と書いておられます
しかし、プロ棋士の公式戦で、一般人にまで反則を指摘する権限を与えるのは、どう考えてもおかしいでしょう 「対局を見せてお客さんに楽しんでもらう」のがそもそもプロの役割なのに、反則があったときに観戦しているお客さんにまで「観ていた私も第三者なのだけど、指摘するべきなのか? どうなの?」という精神的な責任の一端を担わせてしまう今の規定、これはおかしいですよ

ニコニコ動画で生で観ている観戦者、NHK杯を録画放送で観ている観戦者、そういう人にも反則を指摘する権限を与えていると思われても仕方ない現状の規定、どう考えても、改定、または撤廃が必要です

これは、プロだけの問題だけではなく、アマチュアにも重大な問題なのです
『公式アマ大会では、連盟が定めるプロ公式戦での「対局規定」が原則として適用されます。』と田丸さんのブログにも書いてあります 私はアマチュア棋界にとっては、この規定は、むしろ邪魔だと思います トラブルの元だからです 観戦者は、一切口を出さない、アマチュアではそう決めていたほうがよっぽどスッキリすると思います アマチュアは、棋力の幅もピンキリならば、その大会の規定をどこまで知っているかなんて、当然ピンキリですからね 規定が誰にでも分かりやすいほうが当然、いいでしょう

アマチュアの大会で、第三者に指摘されて対局が終わってしまうと、勝ったほうも後味が悪いんじゃないですか? 
勝ちになったほうは、「オレはあの程度の反則なら、気にならなかった。許容範囲だった。最後まで指して、内容で勝ちたかった。それなのに、観戦していたどこの誰ともわからないヤツが、対局を終わらせてしまった。反則で勝ったって、全然うれしくない。そもそもオレはアマチュアで、勝ち負けよりも、楽しむのが目的で指しているんだ。すごく面白い局面で、オレは指し続けたかったのに、なんで観戦していたヤツが対局を終わらせてしまうんだ。」
こういうことが、ありうるわけです 実際、あったかもしれません

この規定、これはアマチュア大会には不要のやっかいものなのでは?
この規定はもう今はプロでも形骸化していて、現状では第三者に無用な権限や責任感を与えてしまっているだけ、プロにとっても要らないのでは?、と思えてしまします
  
とにかく、議論の余地があることは確かです
谷川会長、田丸九段、そして連盟のプロ棋士の方々、なんらかの対処を、よろしくお願いします!