羽生善治 名人vs森内俊之 竜王 NHK杯 3回戦
解説 藤井猛 九段

私はYahooを自分のパソコンの「ホーム画面」にしている
先日、「羽生がケガ NHK杯出場は危うし」とかいう見出しでYahooニュースで報道されたときは、本当にびっくりした
本当にそういう見出しで、クリックしてみないと詳細が出ないのだから、心臓に悪かった 
私のよく知っているほうの羽生さんは無事にしっかりNHK杯に出場しておられる、一安心だ(^^;

今回から3回戦、ベスト16に入った 
ベスト16の表に切り替わったのだが、それが出場棋士の顔写真付きの表になっている
これはいいねー 視聴者への心配りが感じられる ただ、やや顔写真が小さくて見づらいが(^^;
・・・ハッシーは顔がでかいから、大丈夫か?

羽生は1985年四段、竜王戦1組、現名人で、19世永世名人、永世称号を6つ持っている
29回目の本戦出場 2回戦でのvs高橋は横歩取りの持久戦から、うまく手を作って高橋にほとんど何もさせず、圧勝していた

森内は1987年四段、現竜王 18世永世名人 26回目の本戦出場
2回戦では、木村にノーマル角換わり相腰掛け銀でのギリギリの激戦を制し勝ち
 
解説の藤井「羽生は最近はさらにまた、最新型をよく指してますね だんだんと年齢を積み重ねると、少しは変化球が多くなるかと思うんですが、全然そんなことがなくて、どんどん最新型に突っ込んでいくというか、若々しい将棋を指してますね
森内も羽生と同じようなスタイルでやっていると思うんですけども、森内のほうがちょっとベテラン風な感じはありますね 色々やりますね」

事前のインタビュー
羽生「森内さんは、積極的な動きと大胆で力強い受けに特徴のある将棋だと思っています 早指しですので、元気のある、ねじり合いの将棋を指してがんばりたいというふうに思っています」

森内「羽生さんは、今さら私がお話するまでもないですけど、20年以上ずっとトップを走り続けてきて、素晴らしい活躍だと思っています せっかくの羽生さんとの対戦ですので、初心に戻って自分らしい将棋を指したいと思います」

聞いていた藤井「羽生から見たら、森内は力強いんですね たしかに、私から見ても森内は力強いですよ 
森内からすると、若いときから羽生を追いかける立場で、今でもそういう目線で見てるのかな
戦型予想は、羽生自身が今日何に興味があるか次第なんですよ」

先手羽生で対局開始 戦型は、ノーマル角換わりの相腰掛け銀になった
藤井は振り飛車党だから、どういう解説になるか注目された
藤井「ちょっと前までは先後同形からの、先手が歩をたくさん突き捨てて攻めていくことが主でした それが10年ぐらいずっと指されて、現時点では先手良しっていう結論がようやく出たんですね 現時点では、です 全く変わるかもしれませんけどね それが落ち着いたと思ったら、後手が右桂を跳ねないで待機する作戦が見直されて、なかなか大変だなあってことになってるんですよ」
おおーー、藤井、角換わりの解説もうまい! 概要を一気に簡潔にまとめて説明してしまった 国語のテストで「何字以内にまとめよ」という設問がよくあるが、それだと満点だろう(^^;

さて、羽生と森内、両者ともに序盤は研究範囲とばかりにどんどん進む
羽生が右四間から、仕掛けたのもほぼノータイムだった そして「定跡」どおり進んで行っているとのことだ

羽生が攻め、森内が受ける展開  
森内の打った自陣角、△6三角という手が、私には「ん、何だ、これは、初めて見た気がするが?」という一手だった
藤井「この戦型ならではの手ですね」
そして藤井の解説によれば、3つの狙いがある、とのこと 符号が続いて申し訳ないが、▲4五桂を取る狙い、将来の▲4一飛成を防いでいる狙い、そして9筋の端攻めまで狙える角打ち、それが森内の△6三角ということだ
ふえーーー、そんなに狙いが多い角なのか 筋違い角で3つの狙いがあるって、なかなか観たことがないなあ

ただ、△6三角は森内のオリジナルではないとのこと そこから少し手が進んで、
藤井「たくさん実戦例があるから、現局面の進行も今までにあると思う」

ここで、2人の過去の対戦成績が出た 羽生73勝、森内57勝とのことだ
藤井「今年のタイトル戦、名人戦と棋聖戦で2人は指していて、羽生が全部勝った」
この数字、私は森内がかなり善戦していると思った 何しろ、羽生は通算のタイトル獲得が90期、森内は通算12期だからね

中盤の戦い、羽生が森内の玉頭に歩を垂らしたのだが、森内が玉でそれを取りにきた! おおーー、これは勇気がある・・・
チェスでキングが攻めの戦力になる、という手筋に似ているなー (ちなみに、森内のチェス好きも有名)
藤井「力強い受けがさっそく出ましたね 森内が強く出たので、早くも勝負所です 羽生は攻めないといけない」

羽生、どうする・・・ もうけっこうピンチなのかも、と思っていると、桂のタダ成捨て! どうせ取られる桂を捨てて、敵陣を乱す発想か そうか、それがあったか 効果はどうか?
藤井「これは、あれじゃないですか 妙手というか、いかにも羽生らしい手ですね」

藤井「僕なんかだと、『手は考えるもの、ひねり出すもの』なんですが、羽生は『手が見える』 言葉どおり『見える』という状態は、よほど調子がいいときですね 羽生は考えるより先に見える、見えてから確認する、みたいなね」
そうだねえ、羽生は私が観ても、「まず見えてる、そして確認している」としか思えない 「うーん、どうしよう? あ、思いついた! いい手発見!」っていう風に指している割合が、一番少ない棋士なのではないだろうか   
なんか、「楽に勝ってる」という気がするんだよね 2回戦の高橋もそうだ 
羽生は勝ちを確信したら手が震えるというので有名だが、それは「羽生に考えさせた証拠」、ということで、もう対戦相手に敢闘賞をあげたらいいんじゃないだろうか(^^;

他にも藤井はたくさん雑談してくれた 羽生と大山15世名人の違いとか、2年前の羽生のNHK杯5連覇がかかったときに自分が解説者だった、という話だ 

さて、駒損した羽生が攻めなければいけないが、どうなるか、という展開だ
藤井「羽生の攻めが続くかどうか ちょっと心細い攻め」
ここで、驚くべきことが発覚した 森内の△6三角のあの筋違い角、これが8一の桂を守っている、という状態になっているのだ
△6三角は、3つだけではなく、4つの意味があったのだ なんと4方向に具体的な意味がある角だったのだ! こんな角は今まで観たことがない・・・  

ここから、藤井が感心する手の応酬となった
藤井「指されてみればなるほど、です」
藤井「(金を打たれて森内が悪くなったかと思いきや)羽生に金を使わせちゃったほうがいいってことですね 森内の読み筋ですね」
藤井「(清水さんが番組の冒頭に言う)究極の好手、妙手、でしたっけ(笑)」
清水「なるほど、がずっと続いていますね」
藤井「今日は、なるほど、しか言いません」
ここは笑った 藤井さん、今まで序盤のわかりやすい説明、そして豊富な雑談で楽しませてくれてたのに(笑)
終盤は「なるほど」で済ますのが「藤井システム解説者バージョン」(^^;
うん、でもそれがこの将棋に関しては一番いいかもしれないね やっぱり羽生と森内、すごいもん 

終盤、盤上はキツネとタヌキの化かしあいといった様相だ どっちが上を行っているのか?
すると、羽生が森内に手順に金をボロッと取られる、という展開になってしまった 
森内が金を補充した手が、次に初級者でもわかる強烈な狙いがある手で、これでは羽生がツライ・・・ 羽生大ピンチか・・・

藤井「これは森内がだいぶ優勢です 2人の将棋にしてはだいぶ、めずらしく差がつきました 森内の理想的な展開です 相手に攻めさせて、駒得して反撃するという、森内の受け将棋の理想的な展開」
清水「(そういう展開にするのは)すごく技術が要りますよね」
藤井「そうそう、うっかりがまず出ないようにしないといけないです」
清水「森内竜王の真髄(しんずい)が発揮されている感じでしょうか」
藤井「はい、はい」 

そして、森内は飛車取りなんかに見向きもせず、どうぞ取ってください、と寄せに出た手、それが決め手になった
藤井「そうか 解説者は『差がついた』、と言っていたけど、これ以外では難しいのかもしれない」
うーんと、あの、藤井先生、私でもそこでは飛車は逃げない手から考えたいところでしたが(^^; 

残りの考慮時間、羽生▲0回vs森内△4回となった 羽生のほうが先になくなった これも珍しい現象だ
藤井「羽生マジックが出るんでしょうか」
と言っていて、これでまだ助かるかも?という手順を藤井は指摘していたが、結局、羽生はマジックを出すことはなかった

羽生「負けました」 100手で森内の快勝となった
私は一瞬、羽生が森内に握手を求めるか、と思ってしまった チェスを観たのが効いているな(^^;

藤井「森内は手堅いイメージがありますけど、力強い受けと最速の寄せで、森内のいいところがいっぱい出た将棋でした」

内容は濃かったと思うが、一気に終局になったことも手伝って、早い終局時間だった
感想戦が20分間ほどあった 清水「仕掛けのあたりから、でよろしいですか? では、お願いします」
うむ、清水さんのこの誘導、それはとてもいい 前の司会の矢内さんは何も言わず、感想戦の時間があまりないのに、別にポイントでないすごく手前の局面から感想戦を始めてしまうパターンが度々あった
あと、対局者の2人に、「20分間、時間があります」というように時間を知らせてあげてほしいと思う

ただ、本局の感想戦は、私には何を言っているのか、難しくて不明だった(笑) 
あの最後の藤井の指摘した「玉の逃げ道を開けて、粘れるかも」という変化はやって欲しかった・・・
森内が「これは手拍子でしたか こっちもありましたかね?」という感じで発言していたのが、蛇足と言えば蛇足だった あー、たまたまうまくいった面もあったわけか(^^;  

本局は、確かに差がついたが、満足だ 藤井さんの楽しいトーク、森内の力強い玉上がりの受け、何より4方向に意味があった△6三角・・・ △6三角は、取られることにより、その役割を完全に全うし、勝因そのものとなっていた
この△6三角は「4方向に意味がある見事な角打ち」の代表例となるだろう この角が9筋の端攻めまで狙っているという意味を解説していた藤井さんはさすがだ、他の解説者なら指摘できたかどうか
羽生にはもうちょっと粘ってみせて欲しかったが、まあ仕方ない 
森内竜王が受け将棋の本領を発揮して羽生名人を上回って快勝、うん、面白かった!