今年の4月の電王戦の第5局、屋敷vsPonanzaが終了したあとの記者会見で、森下九段は「森下ルール」を提案しました
すなわち、「1手15分、検討用の継盤をかたわらに置いて、それで実際に動かして確認して、指す」というものです
森下九段は「これなら最強ソフト5台とやって、私の全勝はほぼ間違いない、それは違うと言われる方がおられたらぜひ証明させていただきたい」という主旨のことを発言しました
そして、大晦日での「1手10分、継盤あり」のルールで戦うことになったわけです

さて、森下九段は、磯崎氏の「コンピュータ側の勝率8割ということは、駒落ち、香落ちくらいで互角ではないか」という発言に「ちょっと頭にきて」、この森下ルールを提案するにいたった、と思われています

ただ、この以前の第4局、ツツカナvs森下での終局後の記者会見でも、森下九段は「人間対コンピュータのルールを考えないといけない、検討用の盤駒を使って、秒読みではなく、分読みでやるのが、もっとも公平なルールではないか」と発言しています

しかし、その2年前の本、私が今になって「われ敗れたり」 故・米長邦雄永世棋聖著 2012年2月10日初版を読み返していたところ、こういうことが書かれていました 非常に重要なところと思うので、書き出しておきます

ちなみにボンクラーズと米長さんとの対局は2012年1月14日
以下の文中の(カッコ)の中の文は、本文中のものです 私が書いたものではありません 漢字も、忠実に書き出しています 重要と思われる箇所を太字にしたのは私です

第8章 棋士、そして将棋ソフト開発者の感想
P169~P170 森下卓 プロ棋士

Q1 対局前にどちらが勝つと思っていたか。
自分自身がボンクラーズと対戦(本対局で用いられたソフトより数段落ちる)した経験から、米長先生の勝算は極めて少ないと想った。

Q2 初手△6二玉をどう感じたか。
米長先生との事前研究に参加させていただいた経験から、6二玉は対ボンクラーズ戦には最善手に近いのではないかと思う。正直なところ、相居飛車、居飛車対振り飛車、相振り飛車のいずれでも、まともに戦っては勝つ可能性は少ないと思った。

Q3 79手目の形勢判断
この局面では、米長先生が十分だと思う。最初から入玉狙いの構想が見事に実ったと思った。

Q4 他にコメント
6二玉は対機械(ボンクラーズ)に勝つための最善手だとしても、米長先生としてはたいへんな屈辱だったと思います。その屈辱をおしても、勝つことのみに徹底されたのだと思います。
しかし、人間対人間の対局ルールを、人間対機械(コンピュータ)に適用すること自体に無理があると思う。対機械には、対機械用のルールで戦うべきだと思う。
この人間対機械の対局ルールには私案がある。ここでは詳述しないが、そのルールを適用すれば、機械が神の域(例えば、初手7六歩に3四歩としたら、その手は敗着です。6二銀なら千日手です。というほどのレベル)に達しないかぎり、人間側も十分に戦えると思う。
機械のレベルが、歴代最強者の全盛期よりも格段に強い程度のレベルのものなら、私の考える対局ルールで十分に勝機があるとしか思えない。



森下九段は、「磯崎氏の発言にちょっと頭にきて」、今回のリベンジマッチに至った、というのは必ずしも正しくなく、2年以上前から自己流ルールの腹案があったんですね

追記:先日の11月26日の記者会見で、森下九段は「7年半前のBonanzavs渡辺竜王のときに、(こういうルールを)理論として考えたことがある、まさか本当にやることになるとは」と述べておられますね

大晦日の森下vsツツカナの対戦、私の個人的な勝敗予想などは、また後日書きたいと思います