藤井猛 九段vs行方尚史 八段 NHK杯 3回戦
解説 佐藤天彦 八段

お、清水さん、今日の服はまずまずなんじゃないかな 今日は藤井と行方か 人気者の藤井とA級で好調の行方、好カードだ
天彦はB1で昇級を決めて、八段に上がってるんだね おめでとうだね

藤井は1991年四段、竜王戦1組、B1 20回目の本戦出場
1回戦では渡辺大夢(ひろむ)に対し、ノーマル四間飛車を採用、優勢から超危なくしたが、19手詰みを決めて辛勝
2回戦では康光に対し、千日手で指し直しになった ともに角交換四間飛車で、最後に見事な21手詰みを決めている

行方は1993年四段、竜王戦1組、A級 18回目の本戦出場
2回戦で澤田に勝ち これは252手で持将棋が成立して、指し直しになった対局だった

解説の天彦「藤井九段は藤井矢倉という戦法を採用したこともあったが、基本的には振り飛車党 自分で流行を創っていく 人まねをしない独自の工夫を毎局なされている 今、主力にしている角交換四間飛車も藤井が採用して、その後に将棋界全体に流行した 序盤の大家
行方は藤井とは違った意味でこだわりを持っている 序盤から惜しげもなく時間を投入する 終盤では、『行方の粘り腰』と呼ばれるように定評がある」

事前のインタビュー
藤井「行方八段は終盤の非常に粘り強いという印象があるんですけども、過去の私との対局では私が最初のほうから苦しくなる展開がけっこう多くてですね 序、中盤もうまいなあという印象があります 行方八段とは昔からよく練習では何十、何百局と指してますけど、公式戦となるといまた違う気持ちになりますので集中してがんばりたいと思います」

行方「藤井九段とは奨励会時代から数え切れないほど指してきた相手で、盟友(めいゆう)と言っていいと思います 毎局毎局、序盤からうならされるような構想を出されるので本局に関しては僕がうまくついていけるかどうががポイントかなと思っています」

聞いていた天彦「私は、藤井さん、行方さんと同じ研究会に所属しています この2人は手の内は知りつくしている 『盟友』という言葉が2人の関係を端的に表している」

先手藤井で、角交換四間飛車だった 私は矢倉の早囲いもあるか、と思っていたところだ
でも、多くのファンが観たいのは、きっとこっちだろう(^^;

飛車を四間に振って、自分から角交換して、美濃に囲って・・・ なんとシンプルでわかりやすい戦法であることか これがプロで流行しているのだから、まったく何がいい戦法か、わからないものだなあ

清水からいい質問があった(藤井がこの戦法を採用しているのは)「先後に関係なくですか?」
天彦「先後、問わずに採用している印象です」

序盤、駒組みが続いたときに、天彦からちょっと面白い雑談があった 藤井は自分から角を交換するときに、3二の地点から横滑りで角を裏返しに滑らせて2二の地点に馬を作る、というのだ 巻き戻して観直すと確かに、藤井はそうやっていた! はは 超マニア情報だね

2人の対戦成績が出て、藤井5勝 行方11勝とのこと 1年に1回位のペースで当たっている ここ最近は行方の4連勝中

天彦「研究会で、朝集まってやるときに、行方は朝が強いタイプじゃないんですね 体調が悪そうだなあ、というときもあるんです すぐに秒読みに追い込んで、これはもらったと思うこともあるんですけど、そこからなかなか倒れないんですよね」
他にも、天彦は、矢倉より銀冠が優秀といった解説をしてくれて、とても良かった

長考派の行方、残り考慮時間が藤井▲6回vs行方△1回になっちゃった ここでもう残り1回か まだ何も始まっていないけど・・・ 藤井の銀冠が堅く、少なくとも行方から仕掛けはない、こう着状態と思えたそのときだった

なんと行方から仕掛けていった! おおおー これには天彦もびっくりだ
天彦「あ 仕掛けましたかー 行方のほうが玉形が薄いんですけどね」 

すると、この仕掛けが機敏だったようで、藤井がどんどん時間を減らしていく あっという間に▲0回vs△0回、30秒将棋になっちゃった!
天彦「藤井としては予想外の仕掛けられ方だったはず」

ここから、激戦が繰り広げられた お互いに引かない! バンバン指している
天彦「対抗形らしい、はがし合いになってますね」
ここでさらに天彦から面白い言葉が聞けた
天彦「銀冠で玉が▲1七玉と逃げるスペースのことが、『銀冠の小部屋』と呼ばれている」
これはいいねー 覚えておこう(笑)

激しい終盤になった 双方飛車を持ち合い、持ち駒にカナケを豊富に持っている藤井がいいのか、飛び道具を豊富に持っている行方がいいのか?
そんなとき、藤井が勝負をかけにいったーー! 銀を引っ掛けた手、なんと、この手が詰めろだったということだ
しかし行方も攻防の飛車打ちで対抗、それに対し藤井は飛車合いで防ぐ! おお、なんと見ごたえある応酬! 盛り上がってまいりました! どっちがいいんや めまぐるしい~

が、しかし、進むにつれ、天彦「局面はかなり行方が優勢になってきたかな」
ああー、藤井の自陣飛車の働きが悪いか そして藤井に、完全に遊び駒の関係ない駒を相手にするしかない手が出た これじゃあつらいなー 

しかし、まだ藤井も踏ん張った 相手の竜を無理やりはがす、勝負手!
天彦「お! なるほどなるほど? そうかそうか まだ藤井が負けかもしれないけど、さすがに狙ってますね」
いいぞいいぞ、まだがんばれ!
藤井が大駒で盤上を押さえているが、何しろ持ち駒が大差 行方は角金4銀2桂2歩4という超大量の持ち駒(笑)

まだ踏ん張ろうとする藤井に対し、行方が恐るべき手を出した なんと、追われた玉を上部へ! 別の、他の逃げ場もあったのに! き、危険では?
天彦「これは玉も相手玉を詰ましに参加させようということかもしれないですね 5五に利かせているんです」
す、すげえーー こんな手、よく指せるなー!
清水も感心、「後手の玉は2二から7四まで遠征してきましたね」

そして、行方の寄せも見事なものだった 手が広すぎ、どうまとめたものかと思われたが、着実に、安全に、しっかりと勝ちきった おお、強い~ つなぎ桂の打ち込みなんて、実にうまかったなーー!! 
126手で行方の快勝!  

天彦「行方がめずらしい仕掛けをして、それが機敏でしたね 藤井も自然な対応をしたように思ったんですけど、流れを止めることができずに、行方が優勢になった そのまま押し切るかと思われたが、藤井の追い込みは迫力がありましたね」

うむうむ、2人とも、良かったよ 形勢に差はついていた一局だったのだろうが、中盤以降、技の応酬で退屈することがまったくなかった 人間どうしの魅力にあふれた一局だったと思う 
行方、玉形が薄いのに自ら仕掛けたり、最後は自玉まで詰みに参加させようという発想、これは気持ちが強くないと出来ない芸当! 行方の現状の充実ぶりが存分に発揮された一局だったね さすがA級で5勝2敗で名人挑戦権を争っているだけあるわ パチパチパチ 藤井も苦しいながらもよくやっていた 楽しい番組だったよ 天彦も解説おつかされま、A級でもがんばって!