飯塚祐紀 七段vs屋敷伸之 九段 NHK杯 3回戦
解説 野月浩貴 七段

ベスト16最後の対戦、飯塚vs屋敷だ 両者B1だが、今期は飯塚10戦全敗で降級、屋敷は7勝3敗で昇級へマジック1としている

飯塚は1992年四段、竜王戦4組、B1 6回目の本戦出場
1回戦で、定跡どおり指してきた塚田に対して普通に指して危なげなく勝ち
2回戦では相穴熊で西川和宏に勝ち 1、2回戦では飯塚はノーミスという感想を私は書いている 

屋敷は1988年四段、竜王戦1組、B1 18回目の本戦出場
2回戦で山崎に横歩取りでかなりの逆転勝ち 

冒頭、清水「野月七段は英語に堪能で~」
野月「欧米ではずっと漢字ブームで、漢字で書かれているほうがかえってカッコいい~」
といった雑談があって、興味深かった

野月「飯塚さんはじっくりと手厚い将棋 切り合いよりは一歩づつリードして積み重ねていく
屋敷さんは切れ味鋭い居飛車党 チャンスと思ったときの一瞬の切れ味は相変わらずです 2人とも相居飛車はオールラウンダー」

事前のインタビュー
飯塚「屋敷さんの将棋を初めて見たのは屋敷さんが中学生の頃で、あまりにも鮮やかな寄せを決めていたので、大変驚いた覚えがあります その印象は現在も変わりません 高い水準で全ての技術を備えているすばらしい棋士だと思っています 大変強い屋敷さんが相手ということで楽しみにしてまいりました 応援してくださる皆様に感謝の気持ちを込めて、一手一手しっかり指したいと思います よろしくお願いします」

屋敷「(最近の調子は?)最近は対局も多く、いい感じで指していると思います 本局もですね、序盤から終盤までしっかり指していい将棋を指して行きたいと思っています」

先手飯塚で、ノーマル角換わりになった 飯塚が腰掛け銀に出ようとしたところ、屋敷が変化した なんと、両方の銀2枚をカニカニ銀のように出て行く、かなり変わった作戦! こ、これは? こんなん、私は観たことないけどどうなってるのか?
野月「後手の屋敷の形は、昔はともかく最近の角換わりでは全く見たことがないです パッと見、屋敷の駒組みが苦労しそうだなあ」

2人の対戦成績が出て、飯塚3勝、屋敷8勝とのこと まあ、それくらいは差があるだろうね

序盤の駒組みの最中、雑談をしてくれた
野月「屋敷は努力している姿を人に見せない だけど僕の知っている屋敷さんはひたすら将棋ばっかり 暇さえあれば詰将棋や将棋の本を読んでいる だからたぶん勉強はこっそりやってる」
清水「取材で記者に『将棋の研究は?』と訊かれて、『1日10分くらいですかね、新聞の詰将棋くらいです』とおっしゃるんですが」
野月「ウソウソウソ、絶対ウソです(笑)  指している将棋を見ても、最新形には全部ついていってますし」
そうか、1日10分というのはウソだったのか ちょっと残念だな(^^;

さて、屋敷のカニカニ銀に対し、飯塚は無難な構えをしている
野月「飯塚は一番自然な手を選ぶタイプ 奇はてらわない 屋敷はもう動いていくしかない 玉が薄く、これ以上固まらない」

そうだよな~ 屋敷の陣形、そうとう薄い これ、屋敷、△5五歩と伸ばしている作戦上、2枚の銀との相性が悪いのでは・・・

屋敷は3歩を突き捨て、強引に馬を作った 持ち歩が飯塚▲5歩vs屋敷△1歩だが、どうなのだ、これは?
野月「パッと見は飯塚を持ちたい」
急所にパンチが入り始め、これは飯塚が面白いなあ

屋敷、なんとか粘るが、飯塚にドカーンという角の打ち込みが出た
野月「この角は命がけの一着ですね 決まらなかったらひどい角」
両者、同じように持ち時間を減らしていたが、ここで飯塚が使い切り、30秒将棋になった

飯塚が攻めを続け、屋敷が受け流すという折衝があったが、形勢は?
清水「どうでしょうか この辺の数手のやりとりは」
野月「飯塚がかなりいいと思います」

ここで、本局で私がもっとも感心した手が飯塚に出た 8筋の歩をじっと伸ばし、次に、と金作りを狙った渋い一手!
これで一手勝ちを見越した一着だ
清水「ほお~!」
野月「飯塚らしいですね、強い、王道を行く一手ですね」
ここの2人の感想、良かったわ 2人も感心している様子が伝わってきた

その後、屋敷の最後の猛攻、王手ラッシュ!
野月「詰むや詰まざるや パッと見は詰まないけど、詰んでもおかしくない」
これをしのぎきった飯塚が勝ちきった けっこう際どかったけど、飯塚はまあ読み筋だったんじゃないかな? 感想戦がないからわからなかった 122手で飯塚の勝ち

野月「序盤から屋敷が工夫を見せて、斬新な展開で動いていったが、そこを飯塚がしっかり受け止めて決めた 決めに行ったのも見事だった ちょっと最後、危なく成りましたけどね 全体的には飯塚が非常にうまくまとめた一局」

最後、野月はさかんに「飯塚にもっと単純明快な玉の逃げ場があった」と言っていたけど、その逃げ場(▲5六玉)を選んだ場合、どうやって屋敷玉を詰ますのかが私にはわからなかった 激指で調べたら9手詰み~11手詰みか もう少し解説が必要なところだったなあ

うむ、飯塚は力を見せたね なかなか強かったよ いいところが出たんじゃないかな
屋敷としては・・・ あの序盤の作戦が・・・ カニカニ銀で△5五歩と位を取っているっていうのは、やはり不利になってしまうのでは、と思えてしかたなかった 一局の流れとして、もう敗因はそこだもんね
相居飛車の後手番の作戦、画期的なのがまた出てこないかな(^^;