佐々木勇気 五段vs行方尚史 八段 NHK杯 準々決勝
解説 村山慈明 七段

河口七段が亡くなられたそうですね 突然のことでびっくりしています 私は対局日誌で、河口さんの棋士像や控え室での小話を読むのが好きでした 文章で将棋の面白さを伝えることができる、貴重な存在だったと思います ご冥福をお祈りいたします

さて、NHK杯は今日からベスト8だ 今日は佐々木勇気と行方か 今期A級で5勝2敗と好調な行方に対し、勇気がどこまでやるかだな ちなみに勇気はC1で今期5勝3敗だ

佐々木勇気はスイスのジュネーブの生まれ 2010年四段、竜王戦4組、C1 2回目の本戦出場 
1回戦で阿部隆、2回戦で渡辺明、3回戦で大石に勝ち vs大石では、石田流で苦しい将棋を粘って見事に逆転勝ちしている

行方は1993年四段、竜王戦1組、A級 18回目の本戦出場 
2回戦で澤田、3回戦で藤井に勝ち vs藤井では、藤井の角交換四間飛車に対して、優勢を保って力勝ちしている

冒頭で清水が、解説の村山に今度の電王戦FINALに出場することについて、訊いてくれた こういう気遣いはいいねー
村山「もうあと2ヶ月と迫ってきまして、身がひきしまる思いですね 人間を相手にするのとでは全く将棋の質が違ってきますので、対コンピュータ対策を一生懸命やっているところですね コンピュータは大局観とかも全くガラッと違うなという印象です」

村山の対戦相手はPonanza、かなり大変な相手だが、なんとかがんばって欲しい 「電王戦FINALへの道」の1分将棋の練習対局では、ボッコボコに負けていたからね(^^;

村山「勇気は居飛車党だが、最近は振り飛車もけっこう指しているようです 終盤で相手が思いつかない鋭い手を指す印象 
行方は居飛車の本格派 やはり終盤型の棋士 粘り強さと切れ味が武器 昨年、タイトル戦にも出てA級でも非常にいい成績を収められて、今充実している棋士」
行方は昨年度、A級で6勝3敗で、今期はA級2位の地位を占めているね

事前のインタビュー
勇気「行方八段は攻守のバランスが取れたトップ棋士の先生だと思います 何も考えず全力でのぞみたいと思います」

行方「佐々木五段はいかにも今どきの若者というか、くったくのない若手だなというイメージを持っています 今期はベスト8まで久々に残れたので、あまり気負わずに悔いのない将棋を指せたらなと思っています」

2人は初手合いとのこと

先手勇気で、角換わりの相腰掛け銀にスラスラ進んだ 勇気はノータイムだ
村山「勇気は最近、芸風を広げている ここまではタイトル戦でもよく指される形で定跡」
ホント、序盤の駒組みはスイスイ進むね 研究会のようだ(^^;

村山「今日、勇気が指したかった手 どちらが、より深く研究しているか」
研究将棋なのか、と思いきや、ここからすごいねじり合いになっていった

4歩突き捨てて攻めを狙う勇気、対して行方も主導権を渡さないとばかりに角打ちで遠く相手玉のコビンを狙う
考慮時間をまだ1回も使わない勇気、一方、小刻みに使う行方 
この局面、勇気は大丈夫なのか 行方の駒が躍動している感じがあるが、どうなのか? 行方の右桂がさばけたのは大きそうだが・・・

残りの考慮時間が、勇気▲8回vs行方△3回になった
清水「少し考慮時間に差がついているようですが」
行方「でもこれは行方のペースなんですね 研究会では早い段階で30秒将棋になるんですよ」

行方に面白い手が出た 中段の相手の角を殺す、見えにくい銀打ち! おおー、よく思いつくなー
村山「気づきにくい手です これで角が詰んでますね」
すると、勇気のほうにも、これまたプロらしい一着が出た 自分の飛車が取りになっているのを逃げずに、天王山に角打ち!
村山「あ~ なるほど、こういう手もあるんですね」
これも考え出しにくい手だ うむ、見ごたえあるなー! 
村山「行方のほうも、飛車を逃げないですね」
がぜん、激しくなってまいりました!

形勢判断を言って欲しいところだったが、村山は言わなかった 難しいのか・・・ 私にとってはもう難しすぎる(笑)
村山「以前に行方が打った、歩の叩きで勇気の陣形が乱れている あれが効いている」
そうか、行方良しか?

しかし、ここで、またさらに局面を複雑にする、強烈な一手が勇気に出た
渾身の桂打ち! うわー なんてことするんだー いっぱい駒が当たっていて、もうめっちゃ難しいじゃん 私の手に負えねー(笑)
清水「複雑になってきましたね」
村山「目がチカチカしますね」
清水「何をどう取れば」
村山「んー なるほど この桂は素晴らしい一手ですね」
ここで清水さんが、村山に形勢を訊いてくれた
村山「形勢は、まだ難しいと思いますけどね」

なんとレベルが高い・・・ これだけ技をかけ合って、まだ難しいのか
行方が飛車を相手陣に打ち込み、壮絶な攻め合いになっていった

村山「勇気が20手くらい前に突き捨てた、端歩が効いてきている 早指しではカンも重要になってくるんで」
おお、もうカンの勝負か これはいい勝負になったな 終盤で駒がいっぱい当たっている、こういう局面を考えるのは、将棋指し冥利に尽きる!

行方が飛車の横利きで攻め立てるが、勇気は引かずに攻め合いに出た つ、強気だな
行方、相手の駒をバラバラにはがして、寄せはあるのか? んー、でも、勇気が受けなかったということは、まだ一気の寄せはない、ということなんだろう・・・ と、思っていたのだが・・・

村山「行方の取られそうだった飛車が働いてきましたね」
考慮時間の残りも、▲0回vs△0回に、追いついたか さあ、どうなる?
王手された勇気が、考え込んでいる そして、なんと突然、駒台に手をかぶせたではないか
本当に突然、頭を下げて、投了してしまった! うわー なんでだー これ、寄ってるのか あらあー

96手で行方勝ちとなった ええー、もうちょっと手を進めてから投了してよー(^^; 

終局後の村山の検討では、なんともう勇気の玉は詰んでいた、とのことだった
そうか・・・ でもあとせめて5手くらいはファンサービスで指して欲しかったな・・・

村山「長手数だったですけど、最後は即詰みだったですね 勇気が角換わりから新しい手を指したんですけども、中盤が特に華々しい将棋で、難しい将棋だったと思います 行方のテクニックで勇気陣が弱体化させられてしまいましたね 最後はきれいに寄せられてしまいました 終盤、ちょっと攻め合いにならなかったので、そのへんは勇気は持ち味が出せなかったという感じで、行方の寄せが素晴らしかったですね」

感想戦、一番最後の重要なポイントのところを先に優先してやってくれたので、それは良かった
勇気の玉の逃げ間違えで、なんとトン死だったということが判明していた むしろ、勇気にチャンスがあった終盤だったとのこと ええー、そうだったのか こんなの、言われないと全くわからないな(^^;
勇気、トン死食っちゃったんか・・・ あー、残念・・・ ポイントの分岐のところ、勇気は王手された時点で、まだ時間も2回余していたのになあ 確認すると、考慮時間を使わずに25秒で逃げ間違いをしていた

感想戦で興味深かったのは、勇気のコメントだった
勇気「ちょっとひどかったですね・・・ (中盤の早い段階ですでに)悲観していました 全然ダメかと思ってました 切り替えが大事でしたね」
行方「ギリギリですよね」
勇気「大差なのかと思ってしまって (形勢が)難しいっていう感覚が必要だったですね きっと負けだろうと思っていて」

そうかー、勇気、研究段階で何か見落としがあったのだろう 考慮時間を使わずに飛ばしていた中で、何か誤算があったのだろう そして最後はまた考慮時間を使わずに玉の逃げ間違い・・・ んー、これはけっこう残念な負け方ではないかな  そして気持ちの持ちようの問題だったか これは人間ならではの悩みだなー

トン死はあったが、中盤の技の掛け合いの応酬は、非常に高度で、見えにくい手の連発で、楽しめた一局だった 最後は投了が突然という、いきなり感があったので残念だったけど、そこまではかなり面白かったよー 勇気も充分に力を見せていたもんね 
勝った行方は準決勝で、ハッシーvs金井の勝者と対戦する

追記・阪田大吉さんのブログで、投了図から詰むまでは30手かかる、と書かれてあったので、私も激指で調べてみたところ、本当に30手かかることが判明! (先手の合駒の関係で手数が伸びる) そんな手前で投了するなんて、プロの頭はどうなっとるんじゃーい(笑)