ドキュメント コンピュータ将棋 天才たちが紡ぐドラマ
著者 松本博文 角川新書 800円+税 2015年3月25日初版
コンセプト<第1回電王戦から第3回電王戦を簡単に振り返り、電王戦FINALの出場者に取材>
評価 A

久々の棋書レビュー(^^; 
本にかかっている帯に、「『プロ棋士が負ける日』と羽生善治が予言した2015年がやってきた!!」とありますが、そのアンケートの全容をまとめて書いたページが私のブログ内にあります けっこう面白いのでまだの人は見てはいかがかと思います http://mune1232007.blog121.fc2.com/blog-entry-2330.html

この本では将棋の符号と図面は出さず、文章だけで対局の内容を説明していく手法を取っています
ここは特に文章がうまいなー、と思えたところは、あの稲庭戦法(自陣内で駒をひたすら動かし、相手の時間切れを狙う作戦)の説明をするところです 引用します
P177「サッカーで喩(たと)えるならば、一方が最初からペナルティエリア内に選手全員を引いて守っていると、相手はその中にまで攻め入ってこず、外でずっとボールを回している、という感じである。」
すごくうまいたとえですね パチパチパチ

基本的に、電王戦FINALが始まる前に読んでおきたかった内容となっています 発売日がもっと前倒しにならなかったのか・・・ ただ、発売が遅かったその分、「電王戦FINALへの道」の話題も出てきますけどね
斎藤vsAperyでは、戦型予想でP125「本番でもAperyが振り飛車、斎藤が居飛車で戦う可能性は高い。」とズバリ書かれています 対局前に読みたかったです(^^; 
Selene開発者の西海枝さんのインタビューでは、P197「最終的にはですね、人間の棋譜を使わないで、ルールだけ知っているという状態から強くさせたいんです。いけるはずなんですよ」
この言葉も面白いです

そしてもっとも興味深かったのが、あの、やねうら王の開発者の磯崎さんのインタビュー
P214 磯崎「ストックフィッシュのコードを見たときに、気づいたわけです。彼ら(そのストックフィッシュを作っている外国人たち)はチェスを作ろうとしてるんやないんや、彼らは知能を作ろうとしているんや。彼らは汎用エンジンを作ろうとしているんです。もっといえば、彼らは人間を作ろうとしてるんや、ということに気づいたわけです。」
小学3年生でオセロのプログラムを作り上げた磯崎さん、見ている先が違うようです

電王戦FINALの予想として、この前まで奨励会三段編入試験を受けていた天野貴元さん(オールインの作者)の意見も抜粋しておきたい
P250 天野「村山、阿久津は負けると思います。相手(PonanzaとAWAKE)が強すぎます。一人も勝てないかもしれません。でも、誰かその予想をくつがえしてほしいです」
著者自身は予想をしてません まあ、予想するとハズレるかもしれないし(私みたいに)、取材に支障あるよね(^^;

私はもう知っている話が半分以上なんで、単語も知っている単語がほとんど、支障なかったのですけど、これを全く電王戦に疎い人が読むと、どうなるのやらわかりません Bonanzaメソッドのメソッドってなんだ、ってならないでしょうかね
まあ、メソッド(手法)ってもう一般用語かな ページの左側に注の欄を作るレイアウトの工夫があり、読みやすいです

本文の最後のほう、P256ではAWAKEの強さが、「ソフトの対戦サイトであるfloodgateでは、レーティングが3400ほどになった。(中略)要するに人間界(将棋倶楽部24)の基準に直すと、3600点から3700点という強さなのだ。」
これは事実なんでしょうか もう、笑うしかないぐらい強いですね チュドーン

北浜八段の予想インタビューが、全プロ棋士の気持ちを代弁しているように私には聞こえましたので、それもちょっと書いておきます
北浜「(前略)いいメンバーが揃っているので、期待しています。まず2勝の壁があると思います。これまでは2勝できなかったわけですから。その上で、3勝できればいいですね。」
北浜八段と言えば、第1回電王戦の開始前のPVのときに、どちらが勝つか聞かれて、「会長です」と力強く述べておられた印象が深いです だいぶプロ棋士の認識も変わってきましたね(^^; ここまで2連勝で、目標の3勝まで、もうすでにあと1勝と迫ってますがここからがどうなるか・・・

読みやすく、一気に読めました 私の満足度は80パーセントです え、もう取材終わりっていうエピソードもありますからね ponanzaの開発者の山本さんにはインタビューしてないです でも、よく出版してくれました ありがたいです
これは、やっぱり電王戦FINALが開催される前に発売すべき本ですね どうせ買うなら早いうち、鮮度のある本だと思います 後で読むと、結果がネタばれしているのでドキドキ感がないと思います 読みたい人はさっそくお近くの書店かAmazonへGO!