千田翔太 五段vs中村亮介 五段 NHK杯 1回戦
解説 大石直嗣 六段

今日は千田と中村亮介か 地味なメンツに映るが、千田の将棋を観るのは初めてだし、亮介は振り飛車党だから、案外楽しめるかもしれない

千田は2013年四段、竜王戦6組、C1 総合成績優秀により、本戦にシード 本戦初出場
亮介は2004年四段、竜王戦5組、C2 予選で石井、先崎、中尾に勝ち 3回目の本戦出場

大石「亮介は、この前までの順位戦で、最終戦に負けて(8勝2敗で)惜しくも昇級はならなかったが、毎年安定した成績を残している実力者
千田はこの前までの順位戦で(9勝1敗で)昇級し、将棋大賞では新人賞も受賞していた、バリバリの若手」

事前のインタビュー
千田「一局でも多く対局できるようにがんばります 三日ほど前に練習対局を8時間で行いまして、長時間での対局の感覚が短時間でも活かされると考えております」

亮介「前回一回戦負けしてしまったので、今日は一回戦負けしないようにがんばって戦いたいと思います 千田君とは初めての対戦なのでとても楽しみです 先輩の貫禄を示して倒したいと思います」

先手千田で、居飛車 後手亮介は、角道を止めた向かい飛車の対抗形になった
まだまだこれから、駒組みがずっと続くであろうと思われたところから、千田がなんと、突如仕掛けていったー! ビシッとした手つきで▲3五歩!
大石「おおー いきなりですか いやいきなり、びっくりしますね」
どういう意図だ、と思ったら、9筋の端歩で一歩を無理やり手に入れて、後手の角を殺してしまおうということか ぐあー、こういうの、人間は気づいていても、「まあまあ、やると乱戦になっちゃうから穏便に」と、見送ってしまいそうなところだ 千田、いいね、いいねー!

大石「序盤から目が離せない展開ですね」
うんうん、これは面白い 定跡形のお行儀が良い将棋ばっかりじゃ、つまらないもんね
亮介も9筋を取り込ませるという発想を見せて、がんばって受けている

雑談があった
大石「千田は自分の意見を素直に話せるんですよ 例えば形勢が難しい局面だとしても、先手持ちの方が少なくても、『私は後手持ちです』、とはっきり言える 見解を示して周りを納得させる」
うむ、千田いいねー まだ今年でプロ3年目なのにね 
河島英五の歌で、野風増(のふうぞ)というのがある そこの歌詞で、♪いいか、男は生意気ぐらいが丁度いい~ というのがあったのを思い出した(^^;

意表の▲3五歩の攻めで、千田が心理的にはリードしたのかもしれないが、局面、まだまだ全然大変だ
大石「千田としては金銀が前に出ていないので、ゆっくりできない うまく手をつながなければ」

ここから難しい戦いが続くことになった 千田の攻めが続くのか? 亮介が受け切ってしまうのか?
じりじりと両者の持ち時間が減っていく 
意表をついた受けが亮介に飛び出した 持ち駒の角を3三に利かせる意味だけの自陣角! うわー、これは見えない手だ
そして、銀をスッと引いて、飛車の横利きを効かせた一手! このあたりは最善かどうかわからないけど、相手の読みの裏をつく、実戦的な手だなー これには大石も賞賛していた
大石「このあたりは亮介の受けが素晴らしい」

もう考慮時間も0回になり、ピンチかと思われた千田だったが、起死回生の一段金打ちが出た
それが▲4一金! 後手の5一の角取りの意味だけの金打ち、これも相当な実力がないと打てない金だぞ!
打たれてみれば、角が絶対取れる駒になっている なるほどな~

局面進むと、大石も、この手を賞賛することになった
大石「▲4一金が好手でしたね また体勢が変わった気がします」
しかしまだ勝負はわからんか、と思ったところ、またまた千田に好手が出た うまい桂使い! 千田、終盤に来て好手連発!
大石「この桂打ちも気づかない手ですね」

そのまま千田が亮介を圧倒し、97手で千田の勝ち 快勝だった
最後、亮介がもうちょっと続けるかと思ったから、私は投了に「えっ?」となったが(^^;

大石「序盤から目が離せない展開でした 途中は亮介がうまく指して受けが光っていたと思うんですけど、そこから千田の▲4一金から攻めをつなげた手が印象的でした」

いや、これは面白かった 見たことない展開だったからね 一手一手が発想が求められる手将棋で、目が離せなかったよ 「なぞり将棋」などとは無縁の将棋、いいねいいね! それもこれも▲3五歩からの超急戦を千田が選んでくれたからだ プロにはこういう仕掛けをするように、踏み込んでもらいたいものだ 千田、ナイス!! 亮介も途中までがんばっていたし、千田の▲4一金、そして最後の桂使い、よく指せるものだ さすが若手バリバリのプロ!

感想戦の▲3五歩からの変化手順で、亮介も「見たことない将棋」と言っていたね それこそ面白いではないか
亮介「急転直下でしたね、自爆というか」
千田「▲3五歩は指したことがあったかもしれないですけど、ちょっと覚えてないですね」
事前にあんまり期待してなかったせいもあり、お得感があった一局となった いや、これは個人的に満足だ 良かった!