平成27年版 将棋年鑑2015
発行は日本将棋連盟 販売はマイナビ 4600円+税  2015年8月1日初版
棋譜の以外の記事の総評 A  少々長いレビューとなっていますが、ご了承ください

まず、巻頭カラー写真ページが24ページほど、7大タイトルとNHK杯などの写真があります
私は写真には興味がない人なんで、写真はチラッとしか見ない(^^;
あれ、木村って挑戦者になってたんだ、去年の夏の王位戦、そうか、木村が挑戦してたのかと思いました(笑)

巻頭特集① 「羽生善治1300勝の軌跡」 4ページ
羽生の今までの戦跡を、かなり簡単に振り返ったもの
若手2人と羽生を比べています
菅井はプロ5年間で1年平均34勝、渡辺はプロ15年間で1年平均33勝とのこと
羽生はプロ29年間で1年平均45勝とのことだから、羽生の偉大さがわかります

巻頭特集② 「糸谷哲郎竜王 ロングインタビュー」 6ページ
写真などがあるから、そんなに長い記事じゃないです
興味深かった点をいくつか

質問「将棋のどこに魅力を感じますか?」
糸谷「勝負の結果がちゃんと出るところです。しかもその結果が全て自分の責任であり、自分の成果である。そういうところが非常に好きですね。」
タッグマッチは正反対の性質を持つ企画でしたねえ

質問で、コンピュータに関するものがあったのですが、糸谷竜王からは、「今のコンピュータには持ち時間が長ければ自分が勝てるのではないか」という答えでした
今のことより、今後10年先、20年先の将来、コンピュータとどう付き合っていくのか、私はそれを知りたいんですけどね・・・
糸谷竜王なら、あるいは何かビジョンを持っているかもと思いましたが、何も聞けなくて残念です

糸谷「特技は本を速く読めることですかね。小説なら1日に5、6冊読めます。やったことはないですが、漫画なら1日で100冊近く読めると思います」
「詰むや詰まざるや」を解いているという常人離れした糸谷竜王ですから、漫画を1日100冊は可能かも? 字の多い漫画、こち亀の195巻までを2日で読めるか、試したいですが(笑)  

巻頭特集③ 「田中寅彦・先崎学が振り返るこの1年」
タナトラと先ちゃんの談話形式で進む 内容は、ひたすら7大タイトル戦がどうだったかの話
一般棋戦、女流と電王戦については一切話されてなかったです
私はタイトル戦はほぼ観てないのですが、どんな内容だったか、おぼろげながら分かるので、助かりますね
ただ、まあ・・・タナトラには、問題発言が期待できないと感じるのは、もう仕方のないところ
去年は、先ちゃんが電王戦に触れて、「プロ棋士はコンピュータに負けるけど、棋力は互角なんです」という発言がありました
あれはツッコませてもらい、面白かったです
話し相手の河口老師も「里見さんはすぐ四段に上がると思ったけど」という発言、これも問題発言でしたよね(笑)
タナトラはお行儀がいいから、そういう発言はしない(^^; でもタナトラの、郷田王将を評した言葉は面白かったです
「郷田さんは豪速球ピッチャーで、アウトローに際どく3球はずして、ボールスリーから始まるんです。もうボールは投げられないからど真ん中だけで勝負して、それで三振を取るピッチャー。要領は悪いんですけど常に真っ向勝負で」

巻頭特集④ 「森下卓が電王戦を語る」 14ページ
買う前から注目していた記事です 「特別ルールでやれば、まだまだプロは勝てる」といったような、森下節ばかりが書いてあるのか、と思いきや、これがそうではなかったです 
森下さん、相当コンピュータの強さを認めてらっしゃって、FINALの予想で「まともに戦ってはプロ側の全敗だと思った。」 「そもそも序、中盤で良くできるのかさえ分からない。よくできなければ、勝てる可能性は皆無だ。」と述べられているのが印象深いです 以下、1局ずつ感想が書いてあります

私が読んで一番面白かったのは、第4局、▲Ponanza対△村山七段ですね
森下「この一局はPonanzaが強かったという一言に尽きる。」 「Ponanzaの新構想には本当に驚かされた。」 「私はニコファーレで佐藤康光九段と解説していたのだが、▲7七歩と打って、△7四飛に▲3六飛と引いたら奨励会なら破門ものだと話していた。」 「将棋にはまだまだ可能性があるのだということを思い知らされた。」
森下さん、もう、Ponanzaをベタ褒め(^^; まあ、谷川会長も著書「常識外の一手」でこのPonanzaの指し回しをベタ褒めでしたね

第5局に関しては、森下「阿久津八段にとっては、やりがいもあったと思うが、すさまじいプレッシャーがかかっていたことだろう。」と述べておられますね 阿久津さんもあれこれ言われて、しかも自分の人生で一番有名な棋譜がもうこれになることは決定のようなものなので、かわいそうではあります・・・
最後に棋譜が1ページに5つまとめて載ってますが、阿久津vsAWAKEの21手だけは縦書きで載っているところが、さびしいですね
学校で記念の集合写真を撮るときに休んで、出来上がった写真の隅に別枠で載っている人がいるじゃないですか、棋譜があんな感じ(^^;

森下さん、こんな発言をしてますね 森下「今回は事前貸し出しのルールにのっとって、コンピュータのクセを探し出した結果、プロ側の勝利に終わったわけだが、もし第2回電王戦のような事前貸し出しなしのルールでやったとすれば、タイトルホルダーも含めたプロのトップ5名が出てきたとしても私はコンピュータが勝つ方に乗る。」
プロとしてはずいぶん高くコンピュータを買ってますね (ちょっと森下さんが勘違いしてるのは、第2回でも貸し出ししたソフトは3つほどあったんです、本番と同じソフトの貸し出しはなかった、ということです)
しかし、森下さん、こうも言ってます
森下「ちなみにツツカナとのリベンジマッチで私が提唱したルール、つまり継ぎ盤の使用ありで一手10分の持ち時間が与えられるなら逆にプロが全勝するだろう。一度有利に経てば逆転することはないだろうから。」
森下さん、リベンジマッチは後日に判定勝ちで、「プロの将棋に途中でやめて、後日に判定勝ちという現象が存在する」という前例を作りましたね 私はまた、とんでもないことをしてくれた、と思ってますけどね(笑)  

森下「今期王将戦で渡辺明王将が▲5五銀左という手を指したが、あれは私がツツカナに指された手が人づてに渡辺王将まで伝わったものだという。他にも研究課題の局面からコンピュータと指したり、コンピュータ同士でやらせてみると新しい手は次から次に現れる。」
これはどうしたもんでしょうね もう、プロが研究テーマ図で新手を指しても、ファンは素直に楽しめなくなってしまっているのではないでしょうか・・・
コンピュータが指した手を採用しているだけだろう?とね  深刻な問題だと思います

巻頭特集⑤ 「上野裕和の最新将棋事情」 ~平成26年を振り返る~ 14ページ
文章に定評のある上野五段が、プロ間で今テーマ図となっている局面について、教えてくれています
居飛車編と振り飛車編に分かれ、分量たっぷり14ページ、図面数55個と、盛りだくさんです
去年もこの企画があったのですが、去年よりわざと最先端で難しい変化を紹介してくれる感じです
しかし、私はあんまりワクワクできませんでした コンピュータに考えさせて、その結果を自分のものにする、という方法がありますもんね
それがもう主流? 研究テーマ図、自分の頭で考える余地はあるのか? と思えてなりません
「神の一手の追及」の答えは、「ソフトに聞け」なんでしょうか・・・
(追記・コンピュータうんぬんを考えずに読めば、すごい貴重な資料となっております それは間違いないです)

巻頭特集の最後は、「データで見る最新将棋事情」 3ページ 著者は不明ですがマイナビの編集部でしょうね
この3ページ、非常に充実してます! 貴重な内容となっております
ここに、平成26年度の先手勝率が載ってます! 過去5年分載せてます 
平成26年度は先手が0.534だそうです かなり高いですね 振り駒をやった瞬間に、勝率が先手は0.534、後手は0.466になっちゃうっていう話なので、どっちを持ちたいかは明白ですよね

以下は面白いデータなんで、もう紹介してしまいます 平成26年度の以下の分類による先手勝率は、
男性棋戦 0.527
女流棋戦 0.576
タイトル戦 0.556 
順位戦 0.507
というデータが出てます! 順位戦が後手大健闘! 年鑑には「順位戦はかなり早い段階で先後が決定するため、むしろ後手の作戦が練りやすい、ということかもしれない」
まあでも、じゃあタイトル戦は作戦を練る時間が足りないのか?、となりますけど(^^; 
タイトル戦に女流が含まれるのかは不明でした 含まれてるっぽいですけどね・・・ 
女流に関しては、「ここ数年の女流棋戦はむしろ後手の勝率が高く来年以降の結果を見ないことにはなんとも言えない」とのこと ここ数年は後手が高くて、昨年度だけ0.576もある? ちょっと信じられませんが、年鑑にそう書いてます 

そして、残りの2ページで、出だし数手による、勝率がどのようになっているか、というのが載っており、これは実に貴重です
矢倉の出だし、一手損角換わりの出だし、相掛かりの出だし、先手中飛車の出だし、石田流の出だし、角交換四間飛車の出だし、などが勝率がどのようになるのか、が紹介されています その戦型の対局数も示されているのがいいです とても面白いです
一例だけ ▲7六歩△8四歩▲6八銀の出だしは、先手勝率がなんと0.485とあります 衝撃ですね (対局数は342)
「昨年が0.558だったので、がくんと落ちた。上野裕和五段の講座にある通り、△4五歩反発型をはじめ、今年は矢倉の後手番に画期的な進化が見られたということだろう」 素晴らしい記事になってるじゃないですか! こういう記事が読みたかったんです! パチパチパチ

これで巻頭特集のレビューは終わります ついでにあとちょっと、駆け足でレビューを終えてしまいます
本の中にバラバラに載っているコラムに、戦型別勝率というのが8つあります これが非常に興味深いです
対局の総数は示されてないのが残念ですけどね さっきの記事の補完になっています
一例で、「ノーマル四間飛車」を挙げます 初手から▲7六歩△3四歩▲6六歩△8四歩▲6八飛となった局面の先手勝率は?
なんと0.571という高い数字! 「しかしこれが後手番になると、勝率は0.324と一気に落ちる」と書かれています
こういう数字が出てる、読んでいて実に楽しいです コンピュータで棋譜を管理している恩恵ですね こういうところはコンピュータと相性がいいのですが・・・

各棋戦、いきなり棋譜じゃなくて、分量が1ページのうちのたとえ半分くらいでも、文章でタイトル戦の様子、トーナメントの様子を伝えてくれようとしているところはとてもいいですね 新聞社の寄稿している文章には、さすがにうまいと思わせるものもあります

巻末のアンケート 全棋士に、今年も20題ずつも質問してます これはあんまり読んでません
私はそれほどアンケートに興味がなくなってきてます 
Q、一生お金に困らないとしたら?という質問で、羽生さんはなんて答えてるかなと思ったら、スルー、無回答(^^; 渡辺は「仕事は何もしないで趣味に没頭する」 これは渡辺らしく本音で面白いです 康光は「将棋の研究」、森内は「特に変わらない」 糸谷は「奨学金の配布」・・・
個人的には、叡王戦に出場、不出場の理由というのを聞いて欲しかったですね

これで今年の将棋年鑑の棋譜以外のページのレビューを終わります 評価はAかBか相当迷ってAとさせていただきました
なにしろ、5000円近くするので(^^; マイナビ編集部の「熱意」が伝わってきましたよ いろいろやって読者を楽しませようという気概が感じられます
とくに「データで見る最新将棋事情」が私には貴重でした、マイナビさん、去年の「先手勝率がどこにも書いてなかった状態」から、よくやってくれました!
しかし油断してるとすぐ来年は消えてそうな3ページの記事でもありましたので、来年を危惧しております(笑)
来年も私は年鑑を買うのか聞かれたら、うーん、今はまだわからないですね・・・