阿部健治郎 五段 vs 渡辺明 棋王 NHK杯 2回戦
解説 藤井猛 九段

アベケンと渡辺、若手が大物に挑む構図だ  解説には人気者の藤井 藤井のしゃべくりは楽しみだ

アベケンは2009年四段、竜王戦3組、C1 1回戦でタニーに勝ち 3回目の本戦出場
渡辺は2000年四段、糸谷竜王に挑戦中 A級 1回戦はシード 14回目の本戦出場

解説の藤井「アベケンは私の同門です(西村門下) 弟弟子で、普段からいろいろ付き合いがあるが、今日はやっぱり張り切っているでしょう、気合を感じますよ
渡辺はNHK杯で優勝経験もありますし、棋王ですけどタイトル1つじゃちょっと物足りないという実力者ですよね 竜王に挑戦中で、動き出したという感じ」

事前のインタビュー
アベケン「渡辺棋王は読みが速くて正確で、同じ人間とは思えないような強さです
スタミナをつける意味で、ビーフステーキを食べてきました、熱戦をお見せできるようにがんばります」

はは、アベケン面白いわ アベケンもプロなのに「同じ人間とは思えない」ってか
このくらいみんなが言ってくれたら、このブログでいちいち書き出してる意味があるのだが・・・(^^;

渡辺「阿部五段は序盤巧者の若手なのでそこには気を付けて指したいと思います
今講師をやらせてもらっているのですけども、指すほうもがんばって、この棋戦、最近何年か成績が良くないので今日はがんばりたいと思います」

藤井「戦型予想は、角換わりの相腰掛け銀」

先手アベケンで、角換わりになった
この進行は、やはり角換わりの相腰掛け銀か・・・と見ていたら、渡辺が棒銀に変化!
私は両手を叩いて大喜びだ 
だって、もう最近のプロの将棋は相腰掛け銀ばっかりだもん たまには棒銀があっていいよね
藤井「これは意表を突かれましたよ、私もアベケンも」

渡辺の棒銀を見て、長考に沈んだアベケン
藤井「渡辺は決断が早いから、アベケンも見習ってバーンと指したほうがいいですよ」

ここまでの2人の対戦成績は、アベケン0勝、渡辺2勝とのこと
藤井「渡辺は戦法を流行らすことをよくやる、みんな渡辺のマネをするんです
渡辺の読みの効率の良さは天才的、それがマネできない渡辺の強さ」

さて、渡辺は棒銀に出たはいいが、一歩交換して銀を立て直している間に、アベケンに2つほど位を取られてしまった
藤井「▲アベケンの厚みvs△渡辺の持ち歩2歩」
そして、アベケンにナチュラルに馬を作られるという、こんなんでいいの?という渡辺らしからぬ展開になってしまっているではないか

藤井「普通に考えたらアベケンがいいですねえ 私の解説、訂正します アベケンの序盤に長考してたのが実りました(笑) 」
はは、こういうところで笑いを取れるのが藤井のしゃべりだね 聞いていて楽しい、うまいわー
考慮時間の残りも、アベケン▲6回vs渡辺△2回と、アベケンがリードしている

じゃあ、ここからアベケンが順当に押し切るのかな?と思っていると、この後、盤上、波乱万丈という展開になったのだから恐ろしい
藤井「アベケンの手に乗って渡辺の駒が働いてきた、やっぱりこうなったか、素直に馬だけ作っておけば」
な、なに? と思って見ていると、しばらくすると
藤井「もうアベケンは入玉を狙ったほうがいいですよ」
なに~、入玉将棋か~
そして藤井の言うとおり、玉を上げて上部脱出にかかるアベケン うわー、泥仕合だー(笑)
一方の渡辺の手つきもバシッ!としなり、渡辺のほうも自信ありげだ もう形勢、わけわかんなくなってきた

ここで、藤井と清水が、頼りないことを発言した
藤井「どうなるんでしょう、これは決着が見えないですね」
清水「持将棋は経験がないものですから」
藤井「私は申し訳ないんですけど、持将棋、一局もないんで・・・ 解説でもしたことない」
こんなことがあるのだろうか(^^; 藤井は対抗形ばかり指していたから持将棋がないのか? 清水はなんでないのか? 

藤井「後手の渡辺は大駒4枚持ってますけど、入玉してからでないと点数に数えませんから」
そうだよなー、渡辺の玉はいずれ攻められる運命、一方のアベケンの玉はもうほぼ入玉が確定してるようなもんだ
藤井「気が付いたらアベケンが優勢になってるじゃないですか」
どういう展開に持っていくかの権利が、完全にアベケンにある

アベケン、どうする? すると、アベケンは敵玉を寄せて勝つ順に持っていた
藤井「攻め合いで決着をつけようっていうんですね」
ほお~、自信ありか まあ、アベケンは自玉を見なくてよさそうだし・・・

ところが! 渡辺の攻めの手に何手か手抜いたとき、アベケン玉は、なんと、ヤバそうとの藤井の発言!
藤井「あれ? 渡辺玉は今絶対に詰まないってやつですか? あれ? 渡辺が全部大駒を切ってこられたときに危ないじゃないですか、これ」

そして始まった渡辺の王手ラッシュ! まさかまさかの逆転~?
藤井「あらあ、一瞬の切れ味ですねえ、まさかこんな筋があるとは・・・ 一見、全然安全だからねえ、うっかりしましたよ」

で、渡辺が寄せきるか、と思われたのだが、それがそうではなかった! 
渡辺、なんと寄せきれず! 藤井の指摘と違う手を指し、痛恨の寄せ逃し! な、なんてこったーー
棒銀側が勝つのを期待したのに~(笑)
藤井「先ほどは寄っちゃったように見えたんですけど、寄ってなかったかもしれないですね」

アベケン玉は結局上部に逃げ込んでしまい、捕まらなくなった 
渡辺玉は一手一手に追い込まれ、渡辺投了! 111手でアベケン、薄氷の勝利となった 

藤井「終盤、2転3転あったかもしれないですけども、アベケンが見事に勝利しましたね」

ど、どうだったんだ、最後のところ・・・ 
渡辺は間違えたのか? 寄せはあったのか、なかったのか?

感想戦、3分ほどしかなかったが、問題の場面に藤井が誘導してくれたのがナイスリードだった
藤井に寄せ筋を指摘された渡辺「いやー、見えないなー、手が」
さらに、渡辺「ホント、素人みたいな手を指してるな、それじゃ寄らないよなー」

結論として、藤井の指摘した手を指していれば渡辺に勝ちがあった、ということだった
誰だ、藤井を終盤のファンタジスタと呼んだのは! この局面では渡辺とアベケンよりも藤井のほうが手が見えていたではないか! 藤井先生に謝れ~(笑)

いや、でも、本局は私にはとても面白かったよ 人間くささが存分に出ていた序盤と終盤だった
渡辺の意表を突いた棒銀、やっぱり棒銀作戦はいいねえ 
単純な作戦が成功するか失敗するか、どっちに転んでも観ていて楽しいものだ 
本局の序盤ではアベケンの、お手本になる棒銀のとがめ方が観れたと思う 
これが相腰掛け銀だと、もう序盤が定形で「定跡そのまんまのなぞり将棋」、それも研究合戦で意味不明、観ている私にとっては「序盤がない」に等しいものになってしまうことが多いのだよね

終盤で入玉模様になったときのアベケンの「寄せて勝つか、入玉を確定させるか」の心理のブレ、これも楽しかったわ
自玉を安全と思い込み、放置しすぎたために、超危険になったという・・・
渡辺の見事な追い込み、そして寄せ間違い、渡辺もミスする人間なんだなー、ということがわかったしね

どっちが勝つか最後までハラハラドキドキ、それが将棋の一番の醍醐味だ
今回の結論「人間はミスする可能性があるから、将棋は最後まで面白い」

ただ、超一流の渡辺が間違えたから、「めずらしいものが観れた」となるのだろう
三流プロが間違えたら「やっぱ、三流はダメだな」で終わるだろう(^^; 日頃の行いも大事だなあ