人間に勝つコンピュータ将棋の作り方
あから2010を生み出したアイデアと工夫の軌跡
監修・コンピュータ将棋協会 著者・瀧澤武信ら12人  定価 2030円(Amazon)
2012年11月初版  評価 A  コンセプト<主要ソフト関係者の解説を集めた書>

もうすでに3年以上前に発売された本、今頃レビューすることになってしまいました
専門書かと思っていたので、スルーしていましたが、図書館で見かけたので読むと、理系の知識がなくても読める箇所が多いです
とてもよくできた本で、評価Sでもいいのですが、専門用語が出てきて私には難しいところも多かったので、Aにしてあります

ソフトの開発者、Bonanzaの保木さんやYSSの山下さんらが自らのソフトについて語っています

激指の鶴岡さんの一言が印象深いので、抜き出しておきます
「強くなりすぎた将棋ソフトが引き起こす問題を耳にすることも増えてきた。もはや将棋ソフトが強くなることを誰もが喜んでくれた時代ではない。開発者としては、コンピュータ将棋に負の面があることを認めた上で、将棋ソフトがもたらすプラスの面を充実させていくことを目指すよりないのだが、悩ましい時代になったものである。」

本当にそうですねえ、まあでも私は、新作の強くなった激指が発売されたら、買いますけどね・・・
強いものを入手して、持っていたいという所有欲が働きますからね

ソフト同士が戦うネット上のFloodgateのことが書かれてあります
それぞれのソフトの棋風も書いてあるので、楽しめます

コンピュータ将棋の弱点を探る、という章も、面白いです
元奨励会三段の、古作登さんが書いています
「相矢倉で、人間側が右銀を動かさずに組んで、コンピュータが玉を矢倉に入城したところを見計らって棒銀に出るとうまくいく」
とか、「コンピュータが穴熊なら、相穴熊ではなく銀冠に」とかが書かれています
でも、これって、むなしい作業だなー、としか私には思えません
これらの弱点が発覚しているというのは、2012年の話であって、もう2016年になった今となっては、過去の参考文献でしかないですからね (古作さんはよく研究したと思いますよ)
山崎八段は今頃、こんな作業に追われているのかと思うと、げんなりしますね・・・
コンピュータ将棋の弱点を探る作業なんて、物好きなアマチュアにまかせておけばいいと思います

エピローグの、松原仁さん(はこだて未来大学)の言葉を抜き出しておきましょう
「少し前までは、コンピュータ将棋が世界チャンピオンである名人に勝つXデイはいつ来るかが話題になっていたが、筆者にとってもはや興味がなくなってしまった。いまでもコンピュータ側がちょっと頑張れば(並列化などを普通にやれば)、名人相手に4回戦えば1回以上は勝てる。コンピュータ側が最善を尽くせば数年のうちに勝ち越すことができる。名人がコンピュータ対策をすればXデイは1~2年先に延びるかもしれないが、いずれにしろ時間の問題である。実際のXデイがいつになるかはコンピュータ将棋の強さではなくいつ対戦が実現するかで決まる。」

すでに3年前に、ここまで書かれちゃってますねえ 
もう、名人がコンピュータに抜かれるのはどうしようもないですね・・・
私も名人とコンピュータ、どっちが強いかには興味がほぼないですが、今後に連盟や羽生名人がどのような動きを見せていくのか、何が起きて何が起きないのかに興味がありますね