千田翔太 五段vs糸谷哲郎 八段 NHK杯 3回戦
解説 森信雄 七段

コンピュータ将棋を好きな千田と、前竜王の糸谷、これまた注目のカード さすがに3回戦ともなると、観たい人がぞろぞろ出てくる
解説には2人の師匠の森さん 森信雄さんで大丈夫か、まだ現役だったのかという状況だがどうなるか(^^;

千田は2013年四段、竜王戦5組、C1 1回戦で中村亮介、2回戦で阿久津に勝ち 本戦初出場
糸谷は2006年四段、竜王戦1組、B2 2回戦で井上に勝ち 7回目の本戦出場

森「(2人とも弟子で)どちらかが勝つので、ゆっくり観たいと思います
千田五段とは雑談をするんですけど、たいてい最後は将棋の話がずっと続いて将棋三昧にさせられます
糸谷八段はすごく優しくて、気配りとかもすごくできて、勝負よりもそういうほうが印象的です
全く展開が読めないので楽しみにしています」
森さんは、弟子2人のことを、段位付けで呼んでいた

さて、先手千田で、初手▲7八金だった これはponanza流というところか
それを見た糸谷が、ノーマル四間に振り、双方持久戦模様となった
▲千田の銀冠vs△糸谷の高美濃だ そこからさらに、▲居飛穴vs△銀冠への進展を見せた 
森「流れとしては糸谷のほうがわかりやすい、千田のほうはまとめにくい
序盤は少し糸谷ペースだと思います、初手▲7八金をうまく逆用した展開です」
・・・と森は言っていたが、角が交換になり、双方手待ちを連続し、千日手模様になってしまったではないか

雑談で、森「糸谷がタイトル戦に出てくれただけでもうれしかった、(森内竜王に)勝つとは思っていなかった」
タイトル初挑戦で、相手が森内だったから、なかなか獲る姿を想像できないよね
森「千田はコンピュータ将棋にすごく興味を持っている、話の方向がたいていそっちの方向に行く」
うむ、千田にはコンピュータに詳しくなってもらって、他のみんなにコンピュータがどういう手を指すのかの、情報を提供する係になってほしい

森「師匠が解説だと、千日手にはしにくい」
清水「そういう教えが森一門にあるんでしょうか」
森「いや、ないですけど(笑) 」

もう千日手になるのか、と思ったが、千田が考慮時間を5回投入して、打開していった
私には相当強引な打開と思えた
森「ちょっと無理気味」
しかし、糸谷は自然な手を返さず、ひねった指し方をし、戦いが盤全面に広がっていった
森「あっという間に、終盤になりましたね」
とにもかくにも、千田としては、打開策としては成功だったようだ

糸谷が、両取りに角を打ってきたのだが、千田がそれを無視して、どっちでもどうぞ取ってください、としたのが、なかなかの好判断だったようだ
仕方なく糸谷は馬を見捨てたが、駒損が確定した
森「糸谷のほうが決めにいった感じもするし、非常手段としてやっているのか、どちらかですね」
うむ、そのどちらかなのか、が知りたいのだが(笑)

森「糸谷は攻め駒が一枚足りない気がします」
そして、千田の好手連発が始まった 角を遠見の同じラインに2回打つという、なかなか気づきにくい発想!
森も感心、「こういうぼんやりした手は難しい」
難しいの意味は、指すのも難しいが、指されたほうの対応も難しいということだった
森「千田が手広く指して、糸谷に最善を要求している」
おお~、コンピュータ将棋の申し子のような千田が、人間らしい「相手が間違える可能性を高くした手」を指しているという図か、こりゃー楽しい! これが人間同士の勝負! ここが本局一番のハイライトだった

森「形勢は、千田がわずかな優勢だけど、逆転圏内ということでしょう」
糸谷、勝負手を指してみたものの、千田にあっさりかわされてしまった
森「千田は読み筋だったみたいですね」
そして、的確に寄せのアミを絞っていく千田
森「ぼんやり打った角が働きましたね」

穴熊の遠さを存分に活かし、千田が攻め勝った 119手で千田の勝ち
考慮時間の残り、千田▲1回、糸谷△2回だった 糸谷の将棋らしく、20分ぐらい時間が余った 

森「千田の初手▲7八金から、意外な展開で糸谷ペースだったと思うんですが、千田がうまく打開して勝負に持ち込んで、でも糸谷のほうが逃げ切るかと思ったんですが、最後千田の角打ちとか、終盤面白いというか、不思議な手が出て押し切った将棋ですね
糸谷としてはちょっと不本意だったかもしれませんけどね
千田としては後半は会心の出来だと思います」

感想戦で、初手▲7八金について
千田「控室でponanzaの話もされていたので」とのこと
もう、初手▲7八金は、千田流じゃなくて、ponanza流と名前がついていそうだ

糸谷は、振ったことについて
糸谷「今期は飛車を振ると全敗だったんで、(△6六歩を)突きたくなかったんですけど(^^;」
ああ、振り飛車の勝率イメージが、また悪くなる(笑)

千日手模様について
千田「千日手は考えなかったです」、とはっきり

糸谷は、どうも戦いが起こってからずっと、自信がなかったようだ
森「結局、どこが悪かったかな?」
糸谷「この本譜の順が悪かったら、しょうがないかなと・・・ どこが悪かったか、わからない」ということだった

初手▲7八金については、この対局を観ると、まだよくわからない、振り飛車でとがめられるものなのか? それとも、千日手模様になったときの、糸谷の玉の位置、あるいは左香の位置が悪くて、千田の強引な仕掛けが成立したのだろうか? もう私レベルではわからない 
千田は「千日手は考えなかった」ときっぱり言っていたし、▲7八金を千田の得意の一手にしてもらいたい

本局最大のハイライト、それはやはり千田の遠見のぼんやりした角打ちだった
「相手が間違えやすい、相手にとって手広い展開に持っていく」という、人間同士ならではの勝負術が炸裂した一局だったと思う
その意味で、面白かった 森さんも、解説をなんとか乗り切ってくれた 感想戦が充実していたので文句なし(^^; 個人的に満足な内容だった