永瀬拓矢 六段vs戸辺誠 七段 NHK杯 1回戦
解説 阿久津主税 八段

現在、棋聖戦を羽生と戦っている永瀬の登場 
対するは貴重な純粋振り飛車党の雄、戸辺 注目の一戦だ

永瀬は2009年四段、竜王戦3組、C1 5回目の本戦進出
戸辺は2006年四段、竜王戦4組、B2 4回目の本戦進出

解説の阿久津「永瀬は高勝率の売り出し中の若手
戸辺は永瀬の少し先輩、振り飛車を武器にして、もうとにかく攻める」

事前のインタビュー (要約)
永瀬「戸辺さんは攻め将棋で普段からお世話になっている先輩です
あまりNHK杯で勝った記憶がないので今日は精一杯がんばります」

戸辺「永瀬さんとは同じ将棋センターで子供のころから腕をみがいてきました
今でも一緒に研究会をやっていて、かわいい後輩です
最近はタイトル挑戦をするなど、腕をメキメキと上げている若手
NHK杯は全国の観てもらえる絶好のアピールポイント」
戸辺は髪型をかっこよく決めていて、全国にアピールしていた(笑)

先手永瀬で、▲居飛車vs△中飛車の対抗形 相穴熊となった
どんどん手が進む、早すぎるくらいだ 編集してあるの?(^^;

角交換までが定跡かと思いきや、永瀬は▲7八金と上がっていたところをすぐ▲6八金と寄って手損して戻した!
こんなとこまでプロの常識ということか!

手が進み、戸辺の作った馬が活躍しそうと思われたところだった
永瀬がその馬に働きかける「歩の叩き」を一発!
阿久津「あ これが指したかったんですね どうだ、って言わんばかりの速さで打ちましたね
なるほどー これは戸辺は一本取られた気がします」

これを機に、永瀬がペースをつかんだ
よもや千日手もありか?と思われた手順を阿久津は解説していたが、永瀬は回避
怖いよね、何しろ「千日手王」の永瀬だけに(笑)

阿久津「形勢は永瀬がいいと思います」
永瀬は駒得している上、戸辺は遊び駒がひどい
阿久津「戸辺のバランス重視の構えが裏目」
これはけっこう差がついちゃってるなあ・・・

しかし、ここから両者、腕を見せていくことになる
戸辺ががんばれば、永瀬も差を詰めさせない そういう手順の応酬で、見ごたえあるわー
これがコンピュータ戦で人間側が不利だと、もうしらけてしまうところだが(笑)

阿久津「粘りたい戸辺vs粘らせない永瀬」
永瀬は本当に調子よく、ビシビシと厳しい手を指し、私は感心しきりだった

阿久津「永瀬は手堅い、見切っていそう」
そして、そろそろ終局ムードが濃厚となり、さあ終わりかなというところで、なんと事件が起きてしまった

永瀬がとどめとばかりに打った攻防の角が、なんと戸辺から王手角取りで素抜かれてしまう筋がある!? ぐはっ
阿久津「あれ~? ちょっと戸辺のほうにも楽しみが出た気が・・・」
藤田「ちょっと今、永瀬が首をかしげた」
阿久津「逆転してもおかしくないですね? あ してないか? どうなってるんだ
なんか戸辺が勝ちになった気が わけがわからない」

なんと局面が混沌、一気に形勢不明に!
阿久津「第2ラウンドですね、どうなってんすか、これは」
両者、指し続けるが局面の混迷は深まる こ、こんなことが・・・
阿久津「どうなってんすか、これは」

2局目開始、こういう場合、追いついた戸辺に流れが行くとしたものだが、どうか?
阿久津が2人の指し手を「根性」という言葉で称賛している
たしかに、終わりかかった将棋がやり直し状態になったというのに、永瀬も戸辺も崩れる手を指さないのはすごいことだ
ここらへんがプロの芸だなあ

そして次第に、長い長い戦いの末、永瀬が再び優勢になっていった
阿久津「将棋は根性ですねー 永瀬がだいぶ前にこれと同じような、相手の馬道を止める、という応酬があった気がするんですけどね(笑) 」
ここは笑った この対局で2度目の同じ歩の手筋だ 私は「フタ歩」と呼んでいる
それで戸辺は馬をずらせて活用させたんだよな、って、また戸辺も馬をずらせてがんばったよ ははは

戸辺は最後まで抵抗したが、ついに刀折れ矢尽き果てた
191手、戸辺が投了! はあ~、長かった~ 最初に編集が入っていたのはこういうことだったのか(^^;

阿久津「色々なことがありすぎて・・・ 初め永瀬がリードを奪い、あといっぽで勝ちというところまで行ったと思うんですけど、最後決めに行くところで何か誤算があったんでしょうね
戸辺が猛追して、もしかしたら逆転したんじゃないかっていう感じ
そのあとは泥仕合というか、負けたくないという気持ちのこもった大熱戦だった」

永瀬は終局直後、「一手必至を逃した、ひどかったですね」

私は長手数はどちらかといえば疲れるので嫌なのだけど、今回は楽しめた
2局分観れて、お得だったと思った
お互い、技を出し合い、秘術のオンパレード、やっぱりプロとプロだねえ
差がついても、ずーっとその差を保ったまま、2人ともが高度な手を指し続けていく これが一つすごい
そして一手の悪手を境に形勢不明、しかしまた2人ともが崩れずに局面を保っていく これがもう一つすごいね

「ヒカルの碁」の塔矢行洋風に言えば、
「この一局、荒れた将棋に見えるが・・・ 案外奥が深い・・・」というところだ
要するに、差がついたときの「もうだめだ」という「失望」を表に出さない力、そして逆転ムードになったときの「焦り」を表に出さない力、これが永瀬も戸辺も抜きんでているからこそ、できた棋譜だと思った 「将棋に対する精神力」が常人とは違うんだろうね
この一局は面白かったよ 充分楽しめた!