第69回 NHK杯 1回戦 
髙﨑一生 六段 vs 里見香奈 女流五冠 
解説 羽生NHK杯選手権者
聞き手 中村桃子

注目の女流棋士、里見の登場! 今回は私は感想を書く。どれほどの内容を見せてくれるのか、ワクワクだ。
対するは高崎。実力者ではあるものの、1回戦のメンバー的には里見としては勝ち目はありそうな相手。楽しみな一戦。

高崎は竜王戦4組、順位戦C1。里見は女流王座・女流名人・女流王位・女流王将・倉敷藤花。
里見が持っていないのは女王(西山)と清麗(第1期開催中)。
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解説の羽生「高崎は純粋な振り飛車党。着実にポイントをかせぐ。里見も振り飛車党。女流棋界の第一人者として10年以上活躍している。実力は折り紙付き」

事前のインタビュー
高崎「里見は鋭い攻め将棋で男性棋士とそん色ない実力者。いい将棋を指して結果が出せたらなと思います」
里見「自分の持ち味を出せるようにがんばりたい。一つ勝てることを目標にがんばります」

聞いていた羽生「里見の持ち味は中終盤に大胆な手を指せるところ」

先手高崎で、相振りとなった。里見の振り方が工夫されている。相振りは男子プロ同士ではめったに観ないので開始早々から私には面白い。相向かい飛車に進む。高崎は普通の金無双なのに対し、里見が変わった趣向を見せた。
金の位置が一路ずれた△4二金+△5二金型の「ズレ金無双」だ。
6二に空間があるのが特徴で、角交換バージョンの囲い方となっている。そして下段飛車で△2一飛型。角の打ち込みのスキのない陣形に組み上げてきた。
感想戦で中村桃子が里見に「この囲いはけっこう指されているんですか」と訊いていた。里見は「ああ、そうですね。ちょっと似た形はやったことがあるんですけど」と答えていた。

里見の工夫の「ズレ金無双」がどうなるのか、実に楽しみ。局面、飽和でこう着状態かと思われた。が、高崎が果敢に攻めかかっていった。
羽生「高崎が踏み込んで攻めたのがどう出るか。かなり受けづらいです」
早くも里見、ピンチか? この戦型の特徴なのだが、攻めが続いてしまったらもう一方的になって、まったく取り返しがつかないということだ。相振りという戦型はそうなってしまうようにできてる。

里見、なんとかしろー、と強く念じる私(笑) したらば、里見がすごい受けを出してきた。先手の銀の利きに角を打つ受け!
羽生「すごいところに打ちますね。一目、里見がつらいかな。でも高崎は意表を突かれたんじゃないですかね」
中村桃子「銀で取られるところに」
ここのところ、まだ里見は1回も考慮時間を使っていない。どういうことだ。時間の使い方を知らないのか?
それにしても、すぐ角銀交換の駒損になる手をよく思いつくものだ。

高崎がじっと歩を伸ばした手に、羽生が太鼓判を押す。
羽生「これは本筋、さすがの一手」
そして里見は受けているが、羽生の評判がよろしくない。
里見、つぶされそうか? ピンチが続く。里見~、がんばれ~。耐えろ~。

しかし里見が受け続けるにつれ、羽生の評価が変わっていった。
羽生「意外と攻めがうまくいっていない可能性がありますね。後手の下段飛車がよく利いている。高崎のギリギリの攻めが、つながるかどうか」
中村桃子「難しい局面ですね」
羽生「里見の大胆な受けが続いていますけど、受けがうまくいっている気がします。高崎は攻める手に困る」

だが、高崎の猛攻はまだまだ留まることがなかった。ガリガリ攻めて来る。
▲高崎の強攻vs△里見の凌ぎ(しのぎ)という図式が延々続く。
里見~、受け切れ~ ・・・里見は考慮時間をあまり使わず、バシバシとリズムよく指している。
この早指しには私はビックリだ。もっと考えたらいいのに・・・。

羽生は思ったことを正直に言ってくれるので参考になる解説だ。
高崎の香を打って力を溜めた手見て、羽生「なるほど!これは高崎が踏みとどまったと思う」
と言ったかと思えば、里見の次の手を見て、羽生「これは里見の会心の指し回しじゃないですか」
里見が受け切るまであとちょっと! このままミスなく行け~。

今回の里見、ミスしない。そして早指しを続ける。羽生も「早いですね~」を連発していた。
そしてついに高崎を切れ模様に追い込んだ。飛車をいじめられた高崎、指す手なく投了。
100手で里見の勝ち! やったーーー。こりゃ、つえええーー。里見は4回考慮時間を余していた。

羽生「今日の一局は里見がうまく指したっていうことに尽きる。高崎も細かく手をつないでいって良さそうだったが、里見が大胆不敵な受けを連発した。少しづつ攻めが細くなって、気が付いたら差がついていた。里見が素晴らしかった。里見が持っている良さが全部出たような一局」
羽生、べた褒め!! 里見、会心の一局だった。すげーーーー。

里見のあの早指し、極度の集中状態で、いわゆる「ゾーン」に入った状態だったのではないか。
そのくらい里見の指し回しが良かった。 やったね、これが女流ナンバー1の実力だ! パチパチパチ!
いやー、いい内容の将棋を見ると元気が出るね。やっほう。
序盤の構想の「ズレ金無双」も、見事に成功、その性能の良さを見せつけていた。これも高ポイント。
マジで、後手が里見でなく他のプロでも、その受けのレベルの高さに私は感心したと思う。

里見は2回戦では稲葉と当たる。次も実に楽しみだ!