2人「どーもー、よろしくお願いしますー」
右「・・・今、予備の余り駒の歩を1枚いただきました。こんなんなんぼあっても困りませんからね。どうもありがとうございます」

左「ちょっといきなりですけどね、ウチのオトンは将棋が趣味なんです。それで好きな戦法があるって言うんですけど、その名前をちょっと忘れたらしくて」
右「好きな戦法の名前を忘れてもうて。どうなってるんや」
左「色々と訊くんやけど、全然わからへんねんな」
右「ほな俺がね、オトンの好きな戦法、一緒に考えてあげるから。どんな特徴を言うてたか、教えてよ」

左「将棋の戦法の中で、初心者向けで、最も基本的な、数の攻めが覚えられるっていうねん」
右「それは棒銀やないか。将棋教室で一番最初に教えられるのが棒銀やから。すぐわかったやん」
左「でもオトンが言うには、その戦法で来られたら、もう絶対に受けようがないっていうねん」
右「ほな棒銀とは違うなあ。受け方がバッチリあるのが棒銀やから。定跡も整ってるよ。もうちょっと詳しく教えてくれる?」

左「オトンが言うには、銀交換になった後の攻め方がようわからんっていうねん」
右「それは棒銀や。いざ銀交換になっても、別にそれほど相手陣にダメージがないのよ」
左「でもオトンが言うには、その戦法のおかげで将棋観が変わったっていうねん」
右「ほな棒銀とは違うか。狙いは単純な2筋突破作戦やからね。他に何か言うてなかった?」

左「オトンが言うには、加藤一二三がこだわってそれを指し続けたっていうねん」
右「ほな棒銀やんか。ひふみんは生涯棒銀一筋やで。もう決まりや」
左「でもオトンが言うには、藤井猛が開発して愛用しているっていうねん」
右「ほな棒銀とは違うか。藤井猛は藤井システムやからね」

左「オトンが言うには、中盤でさばけずに、出た銀が取り残されがちっていうねん」
右「それは棒銀や。こんなことなら早繰り銀にしておけば、銀が遊ばんかったのに、と後悔すんねん」
左「オトンが言うには、数ある戦法の中で最もマイナーやっていうねん」
右「じゃあ棒銀とは違うか。棒銀はかなり有名やから。ただプロで頻繁に採用されるかどうかは別よ」

左「オトンが言うには、戦法の名前に原始が付くっていうねん」
右「それは棒銀や。原始が付くのは原始棒銀か原始中飛車しかあらへんから。言うたも同然」
左「でもオトンが言うには、棒銀ではないっていうねん」
右「ほな棒銀とは違うかー。それを先に言えよ」

左「オトンが言うには、銀を棒のようにまっすぐ進めて攻めることからその名が付いたっていうねん」
右「それは棒銀!オトンの忘れた戦法は棒銀や!もう決定!」
左「でもジイちゃんが言うには、アヒル戦法と違うかって」
右「いや、絶対ちゃうやろ!どうもありがとうございましたー」