1981年に放送されたテレビドラマ、「煙が目にしみる」の再放送を、先日、BSでやっていて、面白かったです。
そこから名場面を紹介。脚本家のジェームス三木さんの創案シーンだと思われます。

31歳の年齢制限(昔は31歳までだった)が間近の奨励会三段の弟子と、その師匠との会話。

(正座をして深刻な顔をする三段の弟子)
弟子「・・・先生、将棋とはいったい何でしょうか?」
師匠「ああ?」
弟子「教えてください。この世に将棋のある意味を」
師匠「そんなことは俺にはわからんよ」
(弟子が師匠を見つめる。師匠も向き合って正座した)
弟子「では、いったい何のために将棋は指すのですか?」
師匠「お前はいったい何のために生まれてきたんだ。どういう目的で生きとるんだ?」
弟子「・・・わかりません」
師匠「おそらく誰にもわからんだろう。しかしだ、将棋の中には人生がある。哲学がある。芸術もある。建築のようでもあり、音楽のようでもあり、数学のようでもあり、経済学のようでもあり、化学方程式のようでもある。おそらく全てのものがあるんだ」
弟子「・・・おっしゃることは漠然とわかります。将棋は人間そのものだと思います。でもどうして勝ち負けを決めなければならないのですか?」
師匠「うーん。闘争本能があるからだろうなあ」
弟子「闘争本能・・・」
師匠「人間は戦う動物なんだ。いつもどこかで戦争が起きてるじゃないか。平和が続けば集団ヒステリーが起こる。戦争のかわりにスポーツや勝負事が盛んになる」
弟子「すると将棋指しは、野蛮な職業ですね。闘争本能むき出しの残酷な人間が勝つわけですね?」
師匠「それは違う。タイトルを取るようなスーパースターには必ず優しさがある。闘争本能を超越した美しさがある。そうは思わんか?」
弟子「思います」
師匠「そこだよ。百戦錬磨の強い相手を倒すためには、思いやりが必要なんだ。敵を知り、己を知り尽くすことが勝利につながるんだ。最も優しい人間が、最も強い人間なんだよ。勝つということは、そういうことなんだ」
弟子「・・・」