うつ病九段(マンガ) (文春e-book) 原作・先崎 学、 漫画・河井 克夫
2020年4月24日発行  Kindle版950円  単行本1100円  
評価 A コンセプト<原作を読みやすくマンガにしたもの>

ネット上で連載されていたマンガ。タダで読めたので、私は毎週、楽しみに読んでいた。
原作のほうは軽くレビューしたのだが、「棋書ミシュラン」のレビューがとても素晴らしく、もう一回、原作とマンガを読んだ。
マンガの評価のほうは、一度すでにネットで読んでいたのでSでなくAとした。

・・・若かりし頃の先ちゃんは、パンダみたいな風貌、歯にきぬ着せぬ解説、軽妙なトーク、アマチュアみたいなテキトーな気まぐれ作戦でバンバン勝っていく棋風、将棋パトロール、そして圧倒的な文章力。なんて楽しい人なんだ。こんな面白い人がいるのか。当時、小学生の私はたちまち惚れた。

小・中学生のころ、私は毎月、「将棋世界」を本屋に立ち読みに行っていた。
私は将棋は友達とたまに遊びの1つとして指す程度。NHK杯は毎週観ていたが、それほどプロの将棋界に興味はなかったのだ。
そんな私がチェックしていたのは、ただ一つ、先ちゃんの順位戦。C2から上がれるかどうか、だった。
「将棋世界」の後ろのほうの順位戦の表の星を、ドキドキしながら見る。先ちゃんに〇がついていれば、よしやった、と思う。
●がついていれば、ぐああー、となる。
9勝1敗で上がれないときなんて、なんて無茶苦茶なクソ制度なんだ、と順位戦に怒り爆発である(笑)
結局、先ちゃんは8年をC2で過ごすことになる。

しかし、先ちゃんはC2を抜ける。そしてA級まで駆け上がる。先ちゃんの本を大量に読んでいた私の喜びもひとしおであった。その後も先ちゃんは精力的に、マルチに活躍し続ける。先ちゃんの処女作「一葉の写真」はずっと私の宝物であった。

電王戦の観戦記も、プロの苦悩が正直に書かれていて、とても好感を持った。

そんな先ちゃんが休場するという。私は、まあ気分転換かな?ぐらいに軽く思っていた。
理由が明かされなかったから、それほど心配することもなかった。女流棋士はときどき休場することがある。たぶん、先ちゃんも大丈夫なんだろう、と。

先ちゃんは1年弱で戻ってきてくれた。病名は「うつ病」だったという。私は「うつ病」に関する知識はなかった。
それを書いてくれたのが本書だった。
実に詳細に描写してあり、うつ病のつらさと恐ろしさが伝わってくる。アマ初段に勝つのに苦戦し、7手詰が解けずに5手詰からやりなおすなんて・・・。

本当に、よくカムバックしてくれた。私の感想はそれに尽きる。
ただし、成績は落ちている。連盟のページで調べると、
2014年度 13勝15敗 0.464
2015年度 11勝18敗 0.379
2016年度 15勝18敗 0.454
2017年度 3勝16敗 0.157 (休場した年度) 
2018年度 5勝17敗 0.227
2019年度 9勝20敗 0.310

うつ病を境に、明らかに勝率が落ちているが、もうしょうがないだろう。それでも昨年度は9勝している。
先ちゃんなら対局以外でまだまだ活躍できる。

先ちゃんの真骨頂、それは「転んでもタダでは起きない」ということ。
今回、病気にかかっても、本書の執筆で見事にそれを成し遂げた。本当に、よく戻ってきてくれた。
先ちゃんのいない将棋界なんて考えられないんだ。みんな、待ってたよ!!