第42期 霧島酒造杯 女流王将戦
本戦トーナメント 2回戦 第2局
室田伊緒女流二段 vs 伊藤沙恵女流三段
2020年7月8日
解説:所司和晴七段
聞き手:北尾まどか女流二段

今週の土曜も、二局放送された。その一局目。
室田は女流通算130勝139敗。0.483
1回戦で長手数の接戦を制して上田に勝ち。
解説の所司「室田の師匠は杉本。師匠に似て軽快なさばきが特徴」

伊藤は女流通算138勝54敗。0.719 伊藤の勝率がすごい。
1回戦で受けの力を発揮し本田に勝ち。
所司「居飛車党で手厚い将棋が得意。相手が振り飛車だと相振りも多用する」

事前のインタビュー
室田「伊藤さんはただただ強いという印象。戦型も幅広い。精一杯、力を出せれば」
伊藤「室田さんは三間飛車を得意とする振り飛車党。普段どおり集中して指せれば」

先手室田で、相振りになった。▲三間+矢倉vs△四間+金無双。
過去の対戦成績は、伊藤の3戦全勝だそうだ。
所司と北尾が、伊藤が高勝率なのに、まだ女流でタイトルを獲っていないのを不思議がっていた。

さて、まだ序盤、駒組みが続きそう、というところで、早くも伊藤が仕掛けていった。
強引な端攻め。こんな早く攻める手が成立してるのか?
所司「伊藤は積極性が以前より増している。室田は意表を突かれただろう」

伊藤の早々の攻撃。応手は広い。ここで室田がどうするか見ものだったが、室田は最善と思える対応をした。
1~3筋の折衝なのに、室田は6六に居た銀をスッと5五に出た。これには所司は称賛を惜しまない。
所司「▲5五銀、さすがですねー。伊藤の読みになかっただろう、素晴らしい手」
ここ、本局の見せ場だった。▲5五銀で、明らかに室田が良くなったか、と思われたのだが、伊藤が食らいつく。

局面を複雑にして、勝負勝負と迫る伊藤。伊藤は攻め駒を責められる苦しい展開と思われたが、飛車を見捨てる強手。
うお、これはもうどっちが勝つかわからなくなってる。伊藤はよくこんな手順を思いつくものだ。

局面、激しい展開がずっと続いてる。全く気を緩められない。
所司「ここまで来ると室田に早い手がないので、伊藤有利」
・・・と言ったが、次の室田の手を見て、所司「一手指したほうがよく見える、見事な攻防ですね」

形勢不明が延々続く名局だ。互いに全く引かず、技の出し合い。
そしてやっと終わる時が来た。所司「これはうまい手が出ましたね」という好手が伊藤に出て、ようやく、ホントにようやく勝負あり。
122手、伊藤に軍配が上がった。大熱戦だった。

所司「伊藤の積極的な仕掛けにはビックリした。難しいながら室田がいいかなという雰囲気だったが、終盤は見事だった。一手指したほうがよく見えた。お互いが最善を尽くしていたと思う」

局後のインタビュー
伊藤「一手一手、難しい将棋が続いていた。悪くしてしまったと思うが、最後まで粘り強く指せたと思います」

・・・正直、すごい攻防だった。女流がここまで強いのか!?と思えた一局だった。
室田さんが強敵相手に大善戦。あとちょっとで勝ちまで行ったと思うが、最後の寄せが甘かったのだろう。寄せの場面は手が広くなりすぎ、難しかったのがアンラッキーだった。しかし強かった。勝率5割足らずの女流とはとても思えなかった。実に惜しい敗戦だった。

そして勝った伊藤さん。あの苦しそうな局面からの、根性の一手一手。なんという粘りだ。伊藤さんに勝つには相当の棋力と気力が必要だろう。

早くに戦いが起こり、もっと早く差がついて一方的になるのが普通だった。それをよくこんな長い手数、互角に戦ったものだ。
女流のレベル、高い!私は女流には男子プロほどには期待してないから、余計にレベルが高く感じるのかもしれないが、それでもこの一局は文句なく好局。解説の所司が見えてない手も連発していた。中盤の難所での折衝は男子プロに劣るものではない。この2人はよくもここまで力をつけたものだと思う。素晴らしかった。面白かった。