第8回は、筋違い角の対策について。
「イメージと読みの将棋観1」(2008年初版)に、テーマとして筋違い角がモロに載っている。そこから紹介したい。

質問・先手の筋違い角(5手目▲4五角まで)の勝率は?
羽生・森内「50%弱」
谷川「45%。やってこられたら、かなりありがたい」
渡辺明「30%」
佐藤康光「20~25%」
藤井猛「1割。後手の楽勝」

その藤井猛が推薦する後手の駒組みが、下図。(△4五歩まで)
藤井「図から自在に指す。後手は振り飛車にする可能性もある」



この図をソフトはどう評価するか。各10分ずつ考えさせた。

<激指15>
-207 ▲1六歩 (図からの先手の最善手)
-207 ▲4八玉 (図からの先手の次善手) 以下、他のソフトも同様。

<やねうら王>
-387 ▲4八玉
-420 ▲7五歩

<水匠3改>
-256 ▲4八玉
-275 ▲2八銀

~今回のまとめ~
3ソフトの最善手の平均値は、-283だった。前回、▲4五角と打った局面での平均値は-249だったので、後手としては順調に差を広げているということになる。この藤井猛が薦める駒組みは、非常に参考になる。
・・・のだが、問題点もある。筋違い角側が、振り飛車にしたら、受けて立つ後手はこの駒組みでいいだろう。
しかし、筋違い角側が居飛車で来たら、後手はどうするのか。全く不明だ。私の考えでは、筋違い角側は3四の歩を取っていて、角は2~3筋方面に利いているのだから、先手は居飛車にして右側を攻撃するのが理にかなっていると思う。正直、筋違い角側が振り飛車にする意味が分からない。

そして、筋違い角の後手バージョン(△6五角)の場合は、受けて立つ側はどうすればいいのか。
受けて立つ先手としては▲2六歩が突いてあるが、この藤井猛流の駒組みでいいのか。▲2六歩を突いているのに、そこから先手が振り飛車にしたら、▲2六歩の意味は全くなくなる。というわけで、後手の筋違い角も、有力ではないのか。
私は先手でも後手でも筋違い角は有力な戦法だと思っている。

「イメージと読みの将棋観1」でのデータによると、昭和57年~平成20年までプロで94局指され、先手の36勝57敗だそうだ。
そのうち、圧倒的に武市三郎が多く採用していて、武市は32勝42敗という成績を残している。(勝率0.432)
プロでは、持ち時間が長い。なおかつ事前に相手が誰だか分かっている。武市と戦ったプロたちは、事前に筋違い角の研究をしたはずだ。それでも4割以上、武市は勝てた。武市は、プロでは下位の人だ。もし上位プロが筋違い角を採用していたら、5割勝てたんじゃないかと思ってしまう(^^;
ぜひ、羽生vs藤井猛の「指定局面・筋違い角で7番勝負」を見てみたい。

次回は、私の実戦から、友人と共に考えた、筋違い角の新構想を取り上げてみたい。