2021.06.19
奇襲戦法の評価値をソフトで調べてみる ~右四間飛車~
♪あとどれくらい 切なくなれば あなたの声が 聴こえるかしら~
というわけで、この企画も第22回を迎えた。BGMには酒井法子が流れている。
今回は右四間飛車を取り上げる。
ここでひとつ、私からお詫びがあります。このブログに「2021.02.19 最も優秀な戦法は?それは右四間飛車!」という記事があります。
そこで私は、「24の常駐ソフト、JKishi18gouが対振り飛車の右四間飛車を時折指している」と書いてしまいました。
しかし、JKishi18gouの棋譜では、私が調べた限り、対振りの右四間が見当たらないです。確認できないです。
私の曖昧な記憶だけで書いてしまい、間違っていた可能性が高いです。申し訳ない。すいませんでした。
その後、JKishi18gouが対振りで右四間を指している棋譜を発見しました。(2023.04.25) さらにその後、JKishi18gouは相居飛車でも右四間を指していました。(2023.04.27)
さて今回はせっかくなので対振りと、対矢倉、2種類の右四間を調べてみた。
まずは対振りから。対振りの右四間と言っても、とても手が広いので、限定して一局面だけ調べた。
「イメージと読みの将棋観1」でテーマになっている図があるのだ。そこから引用。またこの本だ(^^;
質問・図1から▲2五桂の仕掛けは成立するか?先手勝率はどのくらい?
図1 対振りの右四間 △5四銀まで

羽生「結構有力だと思います。もちろん▲2五桂と仕掛けます。勝率50%はいくでしょう」
佐藤康光「▲2五桂の仕掛けが成立するとは全く思えない。限りなくゼロに近いですね。2五に跳んだ桂をあとでぽろっと取られちゃうんでしょ。ありえないですよ」
森内「仕掛けは成立すると思う。先手勝率55%~57%」
谷川「先手勝率50%いくかどうか」
渡辺明「仕掛けは成立すると思う。先手勝率52%」
藤井猛「実戦なら先手は40%勝てないでしょう。自分なら▲3七桂のところで▲8六歩△6四歩▲8七玉と固める」
では、ソフトはどう評価値を出したか。いつものように各10分計測した。候補手は3つで調べて、3つ載せた。
<激指15>
-47 ▲7七角 (図1からの先手の最善手)
-51 ▲1六歩 (図1からの先手の次善手)
-67 ▲8六歩 (図1からの先手の3番手の手) 以下、他のソフトも同様。
<やねうら王>
+165 ▲3八飛
+145 ▲6八銀
+142 ▲2五歩
<水匠3改>
+137 ▲1六歩
+132 ▲4九飛
+117 ▲8六歩
激指はちょっと後手に振れている。しかしやねうら王と水匠は先手持ち。(もちろん互角なのだが)
やねうら王の▲3八飛って、何なんだ(^^;
で、ここで思ったのだが、▲2五桂が候補手に現れない。どういうことなのか。
そこで、激指の候補手を最大の10手、やねうら王の候補手を最大の15手、水匠の候補手を最大の10手にして調べてみたのだが(各10分)、なんと▲2五桂が1回も候補手に現れなかった。
そこで、図1から▲2五桂と跳んだ場合の評価値を調べてみた。もちろん各10分。候補手は3つで調べて、3つ載せた。
<激指15>
-334 △2二角
-33 △1五角
+252 △2四角
<やねうら王>
-455 △2二角
+31 △1五角
+376 △2四角
<水匠3改>
-280 △2二角
+98 △1五角
+401 △2四角
なんと、図1から▲2五桂は、△2二角と引かれて、のきなみマイナス評価だ。マイルドな評価値で知られる激指が-334も出すとは。これじゃ、候補手を10手表示にしようが、▲2五桂が候補に上がって来ないはずだ。
「イメージと読みの将棋観1」では、佐藤康光と藤井猛が▲2五桂に否定的で、康光は全否定していたが、それが裏付けられる結果となった。(もちろんソフトが正しければだが) この本によると、昭和52年度以降で図1になった対局は数局あるが、▲2五桂とした将棋は▲羽生vs△河口の一局だけだそうだ。(羽生の勝ち)
さて次に、対矢倉の右四間について調べる。これは「イメージと読みの将棋観2」にテーマ図が載っている。それが図2。
初手から▲7六歩△3四歩▲6六歩△6二銀▲6八銀△6四歩までが図2。
図2 先手の矢倉模様に後手の右四間 △6四歩まで

6人の棋士の意見を聞いてみよう。
羽生「先手は▲7八金か▲6七銀か▲5六歩の三択。一番指したいのは▲5六歩~▲5七銀~▲6八飛。▲7八金でも悪くはない」
佐藤康光「自分なら▲7八金と上がって受けに回る。それなりに自信はあります」
森内「△6四歩の直前の▲6八銀がどうかと思う。△8四歩の一手を省略されているので、すでに先手の得がなくなっている気がする」
谷川「▲7八金と指します。△8四歩の一手を省略されているのがちょっと損な気がするけど、後手も形を決めてしまっているわけだし」
渡辺明「先手がすでにちょっと損な感じ。仕方ないので▲7八金から矢倉にします。四間飛車もあるけど棋風じゃないので。それに腰掛銀で先手が潰されるとは思えないから」
藤井猛「この局面になってしまった以上、▲5七銀型四間飛車で対抗するのが自然でしょう。右四間飛車をやられて困っている人にはこの作戦がお勧めです」
「イメージと読みの将棋観2」では、この局面は平成以降101局現れ、先手が49勝52敗だそうだ。
ではソフトの意見を調べてみよう。各10分。候補手は3つで調べて、3つ載せた。
<激指15> 定跡なし
-1 ▲6七銀
-1 ▲1六歩
-17 ▲4六歩 (意味不明な手だけど、こう出たんだから、しょうがない(^^;)
<やねうら王>
-2 ▲7八金
-56 ▲6七銀
-78 ▲4八銀
<水匠3改>
-1 ▲6七銀
-1 ▲7八金
-36 ▲5六歩
~今回のまとめ~
まず図1だが、▲2五桂は成立しないようだ。康光会長、あんたが正しかった!(笑)
ただし、その仕掛けをしなければ、局面自体は先手は充分に戦える数値だ。個人的には藤井猛の言うように、天守閣美濃に囲って、仕掛けはその後にしたい。図1で互角である以上、対振りでも右四間は有力な戦法と言えると思う。(後手の△5四銀型がどうなのか、気になるところだが)
そして図2は、多くの棋士が言うように、すでに先手がちょっと損をしていることが分かる結果となった。もう先手の得は消えている。後手は△8四歩を指さないまま右四間に組めるので、不満なしだろう。
右四間は駒組みも易しいし、主導権を握っているしで、やはり優秀な戦法である。右四間は奇襲じゃない!・・・じゃあなんでこの企画で取り上げたんだと言われそう(笑)
今回はここまで。
♪碧いうさぎ ずっと待ってる 独りきりで 震えながら~
あと2回でこの企画も終わる。ではまた次回~。
というわけで、この企画も第22回を迎えた。BGMには酒井法子が流れている。
今回は右四間飛車を取り上げる。
ここでひとつ、私からお詫びがあります。このブログに「2021.02.19 最も優秀な戦法は?それは右四間飛車!」という記事があります。
そこで私は、「24の常駐ソフト、JKishi18gouが対振り飛車の右四間飛車を時折指している」と書いてしまいました。
しかし、JKishi18gouの棋譜では、私が調べた限り、対振りの右四間が見当たらないです。確認できないです。
私の曖昧な記憶だけで書いてしまい、間違っていた可能性が高いです。申し訳ない。すいませんでした。
その後、JKishi18gouが対振りで右四間を指している棋譜を発見しました。(2023.04.25) さらにその後、JKishi18gouは相居飛車でも右四間を指していました。(2023.04.27)
さて今回はせっかくなので対振りと、対矢倉、2種類の右四間を調べてみた。
まずは対振りから。対振りの右四間と言っても、とても手が広いので、限定して一局面だけ調べた。
「イメージと読みの将棋観1」でテーマになっている図があるのだ。そこから引用。またこの本だ(^^;
質問・図1から▲2五桂の仕掛けは成立するか?先手勝率はどのくらい?
図1 対振りの右四間 △5四銀まで

羽生「結構有力だと思います。もちろん▲2五桂と仕掛けます。勝率50%はいくでしょう」
佐藤康光「▲2五桂の仕掛けが成立するとは全く思えない。限りなくゼロに近いですね。2五に跳んだ桂をあとでぽろっと取られちゃうんでしょ。ありえないですよ」
森内「仕掛けは成立すると思う。先手勝率55%~57%」
谷川「先手勝率50%いくかどうか」
渡辺明「仕掛けは成立すると思う。先手勝率52%」
藤井猛「実戦なら先手は40%勝てないでしょう。自分なら▲3七桂のところで▲8六歩△6四歩▲8七玉と固める」
では、ソフトはどう評価値を出したか。いつものように各10分計測した。候補手は3つで調べて、3つ載せた。
<激指15>
-47 ▲7七角 (図1からの先手の最善手)
-51 ▲1六歩 (図1からの先手の次善手)
-67 ▲8六歩 (図1からの先手の3番手の手) 以下、他のソフトも同様。
<やねうら王>
+165 ▲3八飛
+145 ▲6八銀
+142 ▲2五歩
<水匠3改>
+137 ▲1六歩
+132 ▲4九飛
+117 ▲8六歩
激指はちょっと後手に振れている。しかしやねうら王と水匠は先手持ち。(もちろん互角なのだが)
やねうら王の▲3八飛って、何なんだ(^^;
で、ここで思ったのだが、▲2五桂が候補手に現れない。どういうことなのか。
そこで、激指の候補手を最大の10手、やねうら王の候補手を最大の15手、水匠の候補手を最大の10手にして調べてみたのだが(各10分)、なんと▲2五桂が1回も候補手に現れなかった。
そこで、図1から▲2五桂と跳んだ場合の評価値を調べてみた。もちろん各10分。候補手は3つで調べて、3つ載せた。
<激指15>
-334 △2二角
-33 △1五角
+252 △2四角
<やねうら王>
-455 △2二角
+31 △1五角
+376 △2四角
<水匠3改>
-280 △2二角
+98 △1五角
+401 △2四角
なんと、図1から▲2五桂は、△2二角と引かれて、のきなみマイナス評価だ。マイルドな評価値で知られる激指が-334も出すとは。これじゃ、候補手を10手表示にしようが、▲2五桂が候補に上がって来ないはずだ。
「イメージと読みの将棋観1」では、佐藤康光と藤井猛が▲2五桂に否定的で、康光は全否定していたが、それが裏付けられる結果となった。(もちろんソフトが正しければだが) この本によると、昭和52年度以降で図1になった対局は数局あるが、▲2五桂とした将棋は▲羽生vs△河口の一局だけだそうだ。(羽生の勝ち)
さて次に、対矢倉の右四間について調べる。これは「イメージと読みの将棋観2」にテーマ図が載っている。それが図2。
初手から▲7六歩△3四歩▲6六歩△6二銀▲6八銀△6四歩までが図2。
図2 先手の矢倉模様に後手の右四間 △6四歩まで

6人の棋士の意見を聞いてみよう。
羽生「先手は▲7八金か▲6七銀か▲5六歩の三択。一番指したいのは▲5六歩~▲5七銀~▲6八飛。▲7八金でも悪くはない」
佐藤康光「自分なら▲7八金と上がって受けに回る。それなりに自信はあります」
森内「△6四歩の直前の▲6八銀がどうかと思う。△8四歩の一手を省略されているので、すでに先手の得がなくなっている気がする」
谷川「▲7八金と指します。△8四歩の一手を省略されているのがちょっと損な気がするけど、後手も形を決めてしまっているわけだし」
渡辺明「先手がすでにちょっと損な感じ。仕方ないので▲7八金から矢倉にします。四間飛車もあるけど棋風じゃないので。それに腰掛銀で先手が潰されるとは思えないから」
藤井猛「この局面になってしまった以上、▲5七銀型四間飛車で対抗するのが自然でしょう。右四間飛車をやられて困っている人にはこの作戦がお勧めです」
「イメージと読みの将棋観2」では、この局面は平成以降101局現れ、先手が49勝52敗だそうだ。
ではソフトの意見を調べてみよう。各10分。候補手は3つで調べて、3つ載せた。
<激指15> 定跡なし
-1 ▲6七銀
-1 ▲1六歩
-17 ▲4六歩 (意味不明な手だけど、こう出たんだから、しょうがない(^^;)
<やねうら王>
-2 ▲7八金
-56 ▲6七銀
-78 ▲4八銀
<水匠3改>
-1 ▲6七銀
-1 ▲7八金
-36 ▲5六歩
~今回のまとめ~
まず図1だが、▲2五桂は成立しないようだ。康光会長、あんたが正しかった!(笑)
ただし、その仕掛けをしなければ、局面自体は先手は充分に戦える数値だ。個人的には藤井猛の言うように、天守閣美濃に囲って、仕掛けはその後にしたい。図1で互角である以上、対振りでも右四間は有力な戦法と言えると思う。(後手の△5四銀型がどうなのか、気になるところだが)
そして図2は、多くの棋士が言うように、すでに先手がちょっと損をしていることが分かる結果となった。もう先手の得は消えている。後手は△8四歩を指さないまま右四間に組めるので、不満なしだろう。
右四間は駒組みも易しいし、主導権を握っているしで、やはり優秀な戦法である。右四間は奇襲じゃない!・・・じゃあなんでこの企画で取り上げたんだと言われそう(笑)
今回はここまで。
♪碧いうさぎ ずっと待ってる 独りきりで 震えながら~
あと2回でこの企画も終わる。ではまた次回~。
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