平成27年版 将棋年鑑2015
発行は日本将棋連盟 販売はマイナビ 4600円+税  2015年8月1日初版
棋譜の以外の記事の総評 A  少々長いレビューとなっていますが、ご了承ください

まず、巻頭カラー写真ページが24ページほど、7大タイトルとNHK杯などの写真があります
私は写真には興味がない人なんで、写真はチラッとしか見ない(^^;
あれ、木村って挑戦者になってたんだ、去年の夏の王位戦、そうか、木村が挑戦してたのかと思いました(笑)

巻頭特集① 「羽生善治1300勝の軌跡」 4ページ
羽生の今までの戦跡を、かなり簡単に振り返ったもの
若手2人と羽生を比べています
菅井はプロ5年間で1年平均34勝、渡辺はプロ15年間で1年平均33勝とのこと
羽生はプロ29年間で1年平均45勝とのことだから、羽生の偉大さがわかります

巻頭特集② 「糸谷哲郎竜王 ロングインタビュー」 6ページ
写真などがあるから、そんなに長い記事じゃないです
興味深かった点をいくつか

質問「将棋のどこに魅力を感じますか?」
糸谷「勝負の結果がちゃんと出るところです。しかもその結果が全て自分の責任であり、自分の成果である。そういうところが非常に好きですね。」
タッグマッチは正反対の性質を持つ企画でしたねえ

質問で、コンピュータに関するものがあったのですが、糸谷竜王からは、「今のコンピュータには持ち時間が長ければ自分が勝てるのではないか」という答えでした
今のことより、今後10年先、20年先の将来、コンピュータとどう付き合っていくのか、私はそれを知りたいんですけどね・・・
糸谷竜王なら、あるいは何かビジョンを持っているかもと思いましたが、何も聞けなくて残念です

糸谷「特技は本を速く読めることですかね。小説なら1日に5、6冊読めます。やったことはないですが、漫画なら1日で100冊近く読めると思います」
「詰むや詰まざるや」を解いているという常人離れした糸谷竜王ですから、漫画を1日100冊は可能かも? 字の多い漫画、こち亀の195巻までを2日で読めるか、試したいですが(笑)  

巻頭特集③ 「田中寅彦・先崎学が振り返るこの1年」
タナトラと先ちゃんの談話形式で進む 内容は、ひたすら7大タイトル戦がどうだったかの話
一般棋戦、女流と電王戦については一切話されてなかったです
私はタイトル戦はほぼ観てないのですが、どんな内容だったか、おぼろげながら分かるので、助かりますね
ただ、まあ・・・タナトラには、問題発言が期待できないと感じるのは、もう仕方のないところ
去年は、先ちゃんが電王戦に触れて、「プロ棋士はコンピュータに負けるけど、棋力は互角なんです」という発言がありました
あれはツッコませてもらい、面白かったです
話し相手の河口老師も「里見さんはすぐ四段に上がると思ったけど」という発言、これも問題発言でしたよね(笑)
タナトラはお行儀がいいから、そういう発言はしない(^^; でもタナトラの、郷田王将を評した言葉は面白かったです
「郷田さんは豪速球ピッチャーで、アウトローに際どく3球はずして、ボールスリーから始まるんです。もうボールは投げられないからど真ん中だけで勝負して、それで三振を取るピッチャー。要領は悪いんですけど常に真っ向勝負で」

巻頭特集④ 「森下卓が電王戦を語る」 14ページ
買う前から注目していた記事です 「特別ルールでやれば、まだまだプロは勝てる」といったような、森下節ばかりが書いてあるのか、と思いきや、これがそうではなかったです 
森下さん、相当コンピュータの強さを認めてらっしゃって、FINALの予想で「まともに戦ってはプロ側の全敗だと思った。」 「そもそも序、中盤で良くできるのかさえ分からない。よくできなければ、勝てる可能性は皆無だ。」と述べられているのが印象深いです 以下、1局ずつ感想が書いてあります

私が読んで一番面白かったのは、第4局、▲Ponanza対△村山七段ですね
森下「この一局はPonanzaが強かったという一言に尽きる。」 「Ponanzaの新構想には本当に驚かされた。」 「私はニコファーレで佐藤康光九段と解説していたのだが、▲7七歩と打って、△7四飛に▲3六飛と引いたら奨励会なら破門ものだと話していた。」 「将棋にはまだまだ可能性があるのだということを思い知らされた。」
森下さん、もう、Ponanzaをベタ褒め(^^; まあ、谷川会長も著書「常識外の一手」でこのPonanzaの指し回しをベタ褒めでしたね

第5局に関しては、森下「阿久津八段にとっては、やりがいもあったと思うが、すさまじいプレッシャーがかかっていたことだろう。」と述べておられますね 阿久津さんもあれこれ言われて、しかも自分の人生で一番有名な棋譜がもうこれになることは決定のようなものなので、かわいそうではあります・・・
最後に棋譜が1ページに5つまとめて載ってますが、阿久津vsAWAKEの21手だけは縦書きで載っているところが、さびしいですね
学校で記念の集合写真を撮るときに休んで、出来上がった写真の隅に別枠で載っている人がいるじゃないですか、棋譜があんな感じ(^^;

森下さん、こんな発言をしてますね 森下「今回は事前貸し出しのルールにのっとって、コンピュータのクセを探し出した結果、プロ側の勝利に終わったわけだが、もし第2回電王戦のような事前貸し出しなしのルールでやったとすれば、タイトルホルダーも含めたプロのトップ5名が出てきたとしても私はコンピュータが勝つ方に乗る。」
プロとしてはずいぶん高くコンピュータを買ってますね (ちょっと森下さんが勘違いしてるのは、第2回でも貸し出ししたソフトは3つほどあったんです、本番と同じソフトの貸し出しはなかった、ということです)
しかし、森下さん、こうも言ってます
森下「ちなみにツツカナとのリベンジマッチで私が提唱したルール、つまり継ぎ盤の使用ありで一手10分の持ち時間が与えられるなら逆にプロが全勝するだろう。一度有利に経てば逆転することはないだろうから。」
森下さん、リベンジマッチは後日に判定勝ちで、「プロの将棋に途中でやめて、後日に判定勝ちという現象が存在する」という前例を作りましたね 私はまた、とんでもないことをしてくれた、と思ってますけどね(笑)  

森下「今期王将戦で渡辺明王将が▲5五銀左という手を指したが、あれは私がツツカナに指された手が人づてに渡辺王将まで伝わったものだという。他にも研究課題の局面からコンピュータと指したり、コンピュータ同士でやらせてみると新しい手は次から次に現れる。」
これはどうしたもんでしょうね もう、プロが研究テーマ図で新手を指しても、ファンは素直に楽しめなくなってしまっているのではないでしょうか・・・
コンピュータが指した手を採用しているだけだろう?とね  深刻な問題だと思います

巻頭特集⑤ 「上野裕和の最新将棋事情」 ~平成26年を振り返る~ 14ページ
文章に定評のある上野五段が、プロ間で今テーマ図となっている局面について、教えてくれています
居飛車編と振り飛車編に分かれ、分量たっぷり14ページ、図面数55個と、盛りだくさんです
去年もこの企画があったのですが、去年よりわざと最先端で難しい変化を紹介してくれる感じです
しかし、私はあんまりワクワクできませんでした コンピュータに考えさせて、その結果を自分のものにする、という方法がありますもんね
それがもう主流? 研究テーマ図、自分の頭で考える余地はあるのか? と思えてなりません
「神の一手の追及」の答えは、「ソフトに聞け」なんでしょうか・・・
(追記・コンピュータうんぬんを考えずに読めば、すごい貴重な資料となっております それは間違いないです)

巻頭特集の最後は、「データで見る最新将棋事情」 3ページ 著者は不明ですがマイナビの編集部でしょうね
この3ページ、非常に充実してます! 貴重な内容となっております
ここに、平成26年度の先手勝率が載ってます! 過去5年分載せてます 
平成26年度は先手が0.534だそうです かなり高いですね 振り駒をやった瞬間に、勝率が先手は0.534、後手は0.466になっちゃうっていう話なので、どっちを持ちたいかは明白ですよね

以下は面白いデータなんで、もう紹介してしまいます 平成26年度の以下の分類による先手勝率は、
男性棋戦 0.527
女流棋戦 0.576
タイトル戦 0.556 
順位戦 0.507
というデータが出てます! 順位戦が後手大健闘! 年鑑には「順位戦はかなり早い段階で先後が決定するため、むしろ後手の作戦が練りやすい、ということかもしれない」
まあでも、じゃあタイトル戦は作戦を練る時間が足りないのか?、となりますけど(^^; 
タイトル戦に女流が含まれるのかは不明でした 含まれてるっぽいですけどね・・・ 
女流に関しては、「ここ数年の女流棋戦はむしろ後手の勝率が高く来年以降の結果を見ないことにはなんとも言えない」とのこと ここ数年は後手が高くて、昨年度だけ0.576もある? ちょっと信じられませんが、年鑑にそう書いてます 

そして、残りの2ページで、出だし数手による、勝率がどのようになっているか、というのが載っており、これは実に貴重です
矢倉の出だし、一手損角換わりの出だし、相掛かりの出だし、先手中飛車の出だし、石田流の出だし、角交換四間飛車の出だし、などが勝率がどのようになるのか、が紹介されています その戦型の対局数も示されているのがいいです とても面白いです
一例だけ ▲7六歩△8四歩▲6八銀の出だしは、先手勝率がなんと0.485とあります 衝撃ですね (対局数は342)
「昨年が0.558だったので、がくんと落ちた。上野裕和五段の講座にある通り、△4五歩反発型をはじめ、今年は矢倉の後手番に画期的な進化が見られたということだろう」 素晴らしい記事になってるじゃないですか! こういう記事が読みたかったんです! パチパチパチ

これで巻頭特集のレビューは終わります ついでにあとちょっと、駆け足でレビューを終えてしまいます
本の中にバラバラに載っているコラムに、戦型別勝率というのが8つあります これが非常に興味深いです
対局の総数は示されてないのが残念ですけどね さっきの記事の補完になっています
一例で、「ノーマル四間飛車」を挙げます 初手から▲7六歩△3四歩▲6六歩△8四歩▲6八飛となった局面の先手勝率は?
なんと0.571という高い数字! 「しかしこれが後手番になると、勝率は0.324と一気に落ちる」と書かれています
こういう数字が出てる、読んでいて実に楽しいです コンピュータで棋譜を管理している恩恵ですね こういうところはコンピュータと相性がいいのですが・・・

各棋戦、いきなり棋譜じゃなくて、分量が1ページのうちのたとえ半分くらいでも、文章でタイトル戦の様子、トーナメントの様子を伝えてくれようとしているところはとてもいいですね 新聞社の寄稿している文章には、さすがにうまいと思わせるものもあります

巻末のアンケート 全棋士に、今年も20題ずつも質問してます これはあんまり読んでません
私はそれほどアンケートに興味がなくなってきてます 
Q、一生お金に困らないとしたら?という質問で、羽生さんはなんて答えてるかなと思ったら、スルー、無回答(^^; 渡辺は「仕事は何もしないで趣味に没頭する」 これは渡辺らしく本音で面白いです 康光は「将棋の研究」、森内は「特に変わらない」 糸谷は「奨学金の配布」・・・
個人的には、叡王戦に出場、不出場の理由というのを聞いて欲しかったですね

これで今年の将棋年鑑の棋譜以外のページのレビューを終わります 評価はAかBか相当迷ってAとさせていただきました
なにしろ、5000円近くするので(^^; マイナビ編集部の「熱意」が伝わってきましたよ いろいろやって読者を楽しませようという気概が感じられます
とくに「データで見る最新将棋事情」が私には貴重でした、マイナビさん、去年の「先手勝率がどこにも書いてなかった状態」から、よくやってくれました!
しかし油断してるとすぐ来年は消えてそうな3ページの記事でもありましたので、来年を危惧しております(笑)
来年も私は年鑑を買うのか聞かれたら、うーん、今はまだわからないですね・・・ 
2015.06.18 常識外の一手
常識外の一手
谷川浩司著 新潮新書 700円+税 2015年6月20日初版 評価B
コンセプト<タニーの会長職の大変さがわかる本>

私は阪田大吉さんのブログで、この本の発売を知りました
タニーの「まだまだ一線で他の棋士たちと争っていくつもりですが、体力をはじめとして、年齢による衰えというのはどうしてもあります。」(P7)という告白から始まる本です
しかし本全体を読むと、B1から落ちたら引退か、と思っていた私の予測はどうやら、はずれている感じです
50代には50代の現役のやり方があるはず、そして60代の将棋、というのが最後のほうの文に出てきます それがタニーの生き方なんですね(現在53歳)

P23に図面があるのですが、後手側の2九の香が生の香のままです 成香の間違いでしょうか? これではダメですね ちなみにこの本には図面はこれを含めて2つしか出てきません

電王戦に関しては、2005年に米長会長がソフトと対局禁止令を出した頃から、時系列で載っています
私はもうほぼ知っていることばかりなのですけど、読んでいてやはりドキドキしますね

第3回とFINALで問題になったソフトの「事前貸し出し」については、タニーはこう書いています
「事前に棋士が研究できるのでは、棋士側が一方的に有利に見えるかもしれません。しかし一方で、そもそもプロ棋士は普段から対戦相手の棋士の過去の対戦棋譜を研究して対局に臨んでいるのだから、将棋では当たり前のことだという見方もありました。」(P59)

これ、本当に「将棋では当たり前のこと」ですか? 私のようなアマチュア棋士では、当たり前のことではないですよ? ネットで指すときは相手のことなんか知りませんし、大会に参加しても、事前に相手のことは全く知らない場合なんて、普通です
プロ棋士って、対戦相手が決まったあとに、自宅にその相手を直接呼んで、実戦練習に付き合ってもらうのが当たり前なんですか?

電王戦に関するところは、面白い場面が多いです
第3回のことで、「菅井君には、電王戦後から一週間ほどのちに行き会ったので、『負けちゃダメじゃないか』と冗談交じりに叱ったのですが、『すみません』という返事も明るく、負けを引きずるようなところがなくて安心させられました。」(P67)
こういうエピソードは心温まるので、いいですね

タニーがコンピュータをどう捕らえているか、が書かれているところがあります
「身びいきとのように思われると残念ですが、もしプロ棋士がコンピュータに勝つことだけに集中すれば、まだまだ人間であるプロ棋士が勝てると考えているのです。」(P81)
私は、それは身びいきと思いますが、どう思うかは人それぞれなので、別にいいです(^^; もう第1期電王戦の開催も決まりましたしね

この本のキモは、連盟の会長職の大変さ、これです 米長前会長からバトンタッチする場面は、ちょっとウルッときます
そしてもし立ち読みする機会があったら、P119を開くことをおススメします 
タニーの2013年10月の、一ヶ月のスケシュールが載っているのです
・・・うぎゃー、こんなスケジュール、こなしたくねえー(笑)
タニー本人ですら、「我ながらなかなか凄まじい日々です。」と書いています(^^;

何処にでも顔を出して、挨拶やらなんやらしないといけないんですもんね 代わりの人じゃダメなんですもんね
「私自身の連盟会長の務めも、どうもかなりの長期戦になりそうです。(中略)まだタイトルを活発に奪い合っている次の世代を同じ目に合わせるわけにもいきません。」(P191) こう書かれてありますので、当分はタニー政権が続くのでしょう 本当にご苦労様です

タッグマッチの白紙について、私としてはこの機会に何か一言でもいいから書いて欲しかったのですが、全く書いてません
高額賞金のタッグマッチは、いったんは「2016年から開始します」と大々的に発表していたのですからね 白紙化の経緯について触れて欲しかったです この一件は、貴重な経験に変えて今後につなげていくべき、大事なことだったはずです 高額賞金のタッグマッチこそ、悪い意味で「常識外の一手」ではなかったですか? 
そして今度のドワンゴの新棋戦について、何も書かれてません これも残念です

この本は、全五章のうち、第三章までは電王戦のことや、会長職の苦労話が読めて期待以上に面白かったのですが、それ以降、第四章はタニーのエリート街道を歩いた自伝、第五章はどこかで読んだような大山、升田、羽生らに対する評論になっていて、盛り下がってしまってます 
評価はBとさせてもらいます 読みやすい本で、そこはグッドでした タニーの、「会長職もがんばるし、まだまだ現役続行」宣言が聞けた本でした 
プロ棋士名鑑2015-2016
別冊宝島 1250円+税 大きさは将棋世界と同じ 評価A

観る将棋ファン必携の一冊!と書かれていますが、なかなかそれに恥じない内容ではないか、と思います
棋士の並び方は、段位順ではなく、順位戦の順番で並べられてあります 男子162人、女流47人分です(全員、顔写真付き) 一番メインの棋士名鑑のところから、何人か紹介文を抜粋してみます

まずはタイトルホルダーの糸谷から(分量1ページ)
糸谷哲郎竜王 竜王位を獲得した関西の若き怪物 
関西若手四天王の一人で、ネット将棋で鍛え上げられた新世代の棋士。デビュー直後から新人賞を獲るなど活躍し、異常なまでの早見え早指しで、テレビ棋戦であるNHK杯で2年連続準優勝。2014年度の竜王戦では森内俊之から竜王を奪取。強豪ぞろいの関西若手四天王初のタイトルホルダーとなった。棋風は居飛車党で、一手損角換わりが得意。振り飛車相手の右玉戦法「糸谷流右玉」など特殊な戦法も指しこなす。ニックネームは「怪物くん」で、デビュー戦で橋本崇載が「強すぎる。怪物だ!」と叫んだことから。同じ関西所属の香川愛生女流王将と仲が良く、ネット番組で香川にツッコまれる姿がよく見られる。

・・・うーむ、なかなか詳しい説明書き、いい感じです
そして、グラフがあります 左右が振り飛車党か居飛車党か、上下が攻め棋風か受け棋風か 糸谷は居飛車党の攻め将棋(右上の中間地点)のところに印がしてあります このグラフはB2までの棋士とC1の一部の棋士にありますが、ざっと全員見たところ、ほぼ私にも納得のところに印がしてあります この印ひとつつける場所でも、議論があると思うので大変だけど、ちゃんとしてある印象です 糸谷は受けも独特の感覚を持っている印象があるが、まあいいか?
グラフのほかには、ここ3年分の対局数と勝ち数、勝率、そして通算勝率が載っています

B1からは先崎九段を抜粋してみよう(2分の1ページ)
先崎学九段 
羽生世代のひとりで、米長邦雄永世棋聖の内弟子となり、17歳でプロ入り。竜王戦6組、NHK杯、若獅子戦で優勝するなど頭角を現すが、その後は一時低迷。それでも竜王戦1組、順位戦A級まで上り詰めるなど一流の活躍を残す。ギャンブル好きで、一般紙でコラムの連載を持つなど多才な一面も持ち合わせる。

なかなかの紹介ですね A級2期だけでタイトル挑戦がないので、あんまり、一流かなとは思うけど(^^; とにかく文章がうまい、という説明をして欲しかった やや居飛車党でやや攻め将棋のところに印がしてあります

男子プロの最後は、マニアックにクマーのところを見てみよう(4分の1ページ)
熊坂学五段
プロ入り直後から順位戦で不振が続く。3期連続で降級点を取ってしまいフリークラスに落ちてしまうが、他棋戦では本戦出場経験があり、森内竜王(当時)から勝ち星も。フリークラス規定により引退。 

おおー、簡潔にまとめてありますね 「クマーの愛称で一部のマニアから大人気」と書かれてあれば言うことなしでしたが(笑)

女流も47人分が載っています 清水女流を見てみよう(2分の1ページ) 
清水市代
歴代最高のタイトル獲得数と4つの永世称号を持つ女流棋士界のカリスマ。1996年には当時の全4タイトルを独占し四冠となり、女羽生と呼ばれた。対局中のピンと背筋が通った美しい姿も評価が高い。現在はNHK杯の司会も担当している。棋風は居飛車党で、男性棋士があまり指さない右四間飛車が得意。

うむ、まとまっていますね あ、となりに矢内が居るなあ なになに、堅実な語り口と安定した進行に加えて美貌も備え、メディア露出が多い人気棋士。女王の王冠を被ったドレス姿も話題に。だと? 清水さん、負けてるか・・・いや、なんでもない(^^;

他は巻頭の羽生、香川女流、天彦のインタビュー、棋戦の紹介、戦法、囲いの紹介、簡単な記録集でほぼ全てです
でも、とにかく棋士の紹介文がメインだと思いますね
現実的には、この本の出来以上を望むのは、なかなか無理難題だと思います
値段が高めですが、ほぼオールカラーで頑丈ぽいムック形式(雑誌と書籍の中間)ですし、それはしょうがないかと思います 本の大きさも、このくらいが手に取りやすく邪魔にならなくていいんじゃないでしょうか 私には納得の出来栄えでした
ドキュメント コンピュータ将棋 天才たちが紡ぐドラマ
著者 松本博文 角川新書 800円+税 2015年3月25日初版
コンセプト<第1回電王戦から第3回電王戦を簡単に振り返り、電王戦FINALの出場者に取材>
評価 A

久々の棋書レビュー(^^; 
本にかかっている帯に、「『プロ棋士が負ける日』と羽生善治が予言した2015年がやってきた!!」とありますが、そのアンケートの全容をまとめて書いたページが私のブログ内にあります けっこう面白いのでまだの人は見てはいかがかと思います http://mune1232007.blog121.fc2.com/blog-entry-2330.html

この本では将棋の符号と図面は出さず、文章だけで対局の内容を説明していく手法を取っています
ここは特に文章がうまいなー、と思えたところは、あの稲庭戦法(自陣内で駒をひたすら動かし、相手の時間切れを狙う作戦)の説明をするところです 引用します
P177「サッカーで喩(たと)えるならば、一方が最初からペナルティエリア内に選手全員を引いて守っていると、相手はその中にまで攻め入ってこず、外でずっとボールを回している、という感じである。」
すごくうまいたとえですね パチパチパチ

基本的に、電王戦FINALが始まる前に読んでおきたかった内容となっています 発売日がもっと前倒しにならなかったのか・・・ ただ、発売が遅かったその分、「電王戦FINALへの道」の話題も出てきますけどね
斎藤vsAperyでは、戦型予想でP125「本番でもAperyが振り飛車、斎藤が居飛車で戦う可能性は高い。」とズバリ書かれています 対局前に読みたかったです(^^; 
Selene開発者の西海枝さんのインタビューでは、P197「最終的にはですね、人間の棋譜を使わないで、ルールだけ知っているという状態から強くさせたいんです。いけるはずなんですよ」
この言葉も面白いです

そしてもっとも興味深かったのが、あの、やねうら王の開発者の磯崎さんのインタビュー
P214 磯崎「ストックフィッシュのコードを見たときに、気づいたわけです。彼ら(そのストックフィッシュを作っている外国人たち)はチェスを作ろうとしてるんやないんや、彼らは知能を作ろうとしているんや。彼らは汎用エンジンを作ろうとしているんです。もっといえば、彼らは人間を作ろうとしてるんや、ということに気づいたわけです。」
小学3年生でオセロのプログラムを作り上げた磯崎さん、見ている先が違うようです

電王戦FINALの予想として、この前まで奨励会三段編入試験を受けていた天野貴元さん(オールインの作者)の意見も抜粋しておきたい
P250 天野「村山、阿久津は負けると思います。相手(PonanzaとAWAKE)が強すぎます。一人も勝てないかもしれません。でも、誰かその予想をくつがえしてほしいです」
著者自身は予想をしてません まあ、予想するとハズレるかもしれないし(私みたいに)、取材に支障あるよね(^^;

私はもう知っている話が半分以上なんで、単語も知っている単語がほとんど、支障なかったのですけど、これを全く電王戦に疎い人が読むと、どうなるのやらわかりません Bonanzaメソッドのメソッドってなんだ、ってならないでしょうかね
まあ、メソッド(手法)ってもう一般用語かな ページの左側に注の欄を作るレイアウトの工夫があり、読みやすいです

本文の最後のほう、P256ではAWAKEの強さが、「ソフトの対戦サイトであるfloodgateでは、レーティングが3400ほどになった。(中略)要するに人間界(将棋倶楽部24)の基準に直すと、3600点から3700点という強さなのだ。」
これは事実なんでしょうか もう、笑うしかないぐらい強いですね チュドーン

北浜八段の予想インタビューが、全プロ棋士の気持ちを代弁しているように私には聞こえましたので、それもちょっと書いておきます
北浜「(前略)いいメンバーが揃っているので、期待しています。まず2勝の壁があると思います。これまでは2勝できなかったわけですから。その上で、3勝できればいいですね。」
北浜八段と言えば、第1回電王戦の開始前のPVのときに、どちらが勝つか聞かれて、「会長です」と力強く述べておられた印象が深いです だいぶプロ棋士の認識も変わってきましたね(^^; ここまで2連勝で、目標の3勝まで、もうすでにあと1勝と迫ってますがここからがどうなるか・・・

読みやすく、一気に読めました 私の満足度は80パーセントです え、もう取材終わりっていうエピソードもありますからね ponanzaの開発者の山本さんにはインタビューしてないです でも、よく出版してくれました ありがたいです
これは、やっぱり電王戦FINALが開催される前に発売すべき本ですね どうせ買うなら早いうち、鮮度のある本だと思います 後で読むと、結果がネタばれしているのでドキドキ感がないと思います 読みたい人はさっそくお近くの書店かAmazonへGO!
平成26年版 将棋年鑑2014 棋譜以外の記事レビュー 後編
日本将棋連盟 発行 マイナビ 販売 4600円+税 2014年8月1日初版
棋譜以外の記事の評価 B

さて、将棋年鑑のレビューの後編です
<特集4> 詰将棋の世界 ~看寿と現在~ (分量4ページ) 
これは、すごく良かったです!
「詰将棋は指し将棋から派生したものだが独自の進化を遂げ、そのパズル性、芸術性を高めていった。 現在では指し将棋とは独立した一つの分野となっている。」 
この説明から始まるとおり、私のように、指し将棋とプロの将棋観戦が専門で、芸術的な詰将棋の分野には全く無知な人向けに紹介された特集となっています 取り上げた作品のテーマとして、「裸玉」、「煙詰」、 「長手数」をチョイスしたところが素晴らしいです これなら、一般の人も食いつきます 私はモロに食いつきました(^^; 
「裸玉」では2004年に岡村孝雄氏が発表した「驚愕の曠野」 (こうや) 「煙詰」では1992年に添川公司氏が発表した「大航海」が紹介されています すさまじい出来栄えの作品で、詰将棋が芸術であることが存分に伝わりました 感動しました!

<特集5> 上野裕和の最新将棋事情 ~平成25年度を振り返る~ (分量14ページ)
これまた、素晴らしい特集となっております! 
上野五段と言えば、その著書「将棋・序盤完全ガイド」振り飛車編と相居飛車編が、あまりにわかりやすく読みやすいということで、一躍有名になった棋士です その上野先生がたっぷり14ページ使って最新の流行を解説してくれています 図面は序盤の駒組み段階が中心、進んでいても駒がぶつかった程度のものがほとんどですので、読み手のアマチュアを意識してくれています 相居飛車のほうは符号で進む手数が多めですが、これは仕方ないですね 今は、作戦の数がすごく増えている時代だと思うのですが、上野先生は一つの戦型に深入りすることなく、広く浅く、全体をバランスよく、紹介してくれていると思います 
それでももちろん、プロの最新形なので、読むほうもそれなりの努力は要りますよ(^^; ただ、もうこれ以上わかりやすく説明するのは無理、というくらい、きれいに整理してくれて、がんばって説明してくれているので、そこに読み手は感動するのですよね 上野先生、ありがとう!

さて、次は、巻末の棋士名鑑についてくるアンケートです 
質問の数を、例年の倍の20問に増やしたということですが、どうでしょうか? 質問を全部書き出そうかと思ったのですが、20問もあり相当長くなるのでヤメ(^^; ざっと、印象に残った答えだけ、書き出してみようと思います

森内竜王 Q、好きな駒と理由 「飛車 強い受け駒だから」
佐藤康光九段 Q、棋風を漢字一文字で 「謎」
塚田九段 Q、大笑い、涙したこと 「電王戦」
森下九段は、「特にありません」を5連発して、とにかく全ての質問に答えていました
深浦九段 Q、自分の将棋のどこを見てほしい 「根性」
神谷七段 Q、座右の銘 「老いても子には従わぬ」
長沼七段 Q、口癖 「取っておきますか」
中座七段 Q、大笑い、涙したこと 「民放で豊川さんのダジャレ解説をした番組を観て大笑い」
佐藤天彦七段 Q、この一年で心に残った書籍 「カラー版世界服飾史 勉強になりました」
木下六段 Q、自分の将棋のどこを見てほしい 「見ないで下さい」
窪田六段 Q、影響を受けた棋士 「武者野勝巳七段」
糸谷六段 Q、棋風を漢字一文字で 「変」
伊藤能六段 Q、口癖 「もう死にたい」
清水女流六段 Q、自分の将棋のどこを見てほしい 「初手」
竹部女流三段 Q、大笑い、涙したこと 「『女流棋界の汚れポジション、実はおいしいと思ってるでしょ?』と言われたこと」

んーーー、これくらいなんですよね 上記だけ見れば面白いと思えるかもしれませんが、約200人に20問ずつアンケートして、印象深かったのが、これくらい・・・ 正直、不作でした! 質問の数が多すぎましたかねえ もう、例年の10問でいいと思いますね 「棋風を漢字一文字で」、期待したのですが、難しすぎたのか、「わからない」、答えていない人が多数 そして不作な理由として、棋士のみなさんが質問に必ずしも全部答えてない、ということ むしろ、全部に答えてる人は、ごくまれです そして、受け狙いで全力で答えてくれている人がほとんど見当たらないことですね

さらに、なんと言っても、全く1問も答えてない棋士が大勢いる、ということ 藤井九段、先崎九段、橋本八段、野月七段、豊川七段などの、サービス精神旺盛と思える棋士たちが、アンケートを完全に無視 なんでかな?? この5人なんかは、TVやニコニコ動画の解説ではすごく楽しくしゃべってくれるのに・・・ 棋界のエンターテイナー、佐藤紳哉六段も「身長180cm、70㎏、O型 嫌いな食べ物 マヨネーズ」 答えてくれたのは、たったこれだけ マヨネーズの情報しかないじゃん 

さて、次は棋譜が載っているページの、空いたスペースを埋めている小さいコラムを紹介
「実戦終局次の一手」 実戦図から、詰ます問題が13問ありますが、これは私には全く不要でした こういうのは他の本にまかせて、年鑑は、棋譜並べをする人のために、途中図を増やしてあげるべきでは?

「棋士名鑑アンケートクイズ」 アンケートを元に取り上げたクイズが10問あります 例えば1問目はこんな感じ 羽生、渡辺、森内、康光の身長を、当てろというもの 4つ候補の数字が並んであり、それを4人と正しく結び付けよ、という形式 別のページに答えがある 正解は、羽生が171cm、森内が176cm、渡辺が165cm、康光が168cm・・・ こんなん、すぐ答えを教えてくださいよ 新四段の4人の苗字と下の名前を結び付けろ、というムチャなクイズもあるし・・・ 得られる情報が少なくなるクイズ形式にせず、質問のテーマ別に、ずらっと棋士の答えを並べてくれたら、とても読みがいがあったと思うんですけどね

「トップ棋士指し手分析」 これは、前の2つと違って、素晴らしい試みでした!
羽生、森内、渡辺、康光、郷田、深浦、久保、広瀬の8人、近年タイトル戦に出たトップ棋士を選び、今年指した全ての手のうちで、駒の種類別に、動かした割合を調べた、というものです 
例えば、「歩を動かした割合を示したデータ」 7人は30%付近でほぼ横並びなんですが、1人だけ24.5%と、ダントツで少ない棋士がいます それは誰か? 歩を動かさない棋士です ちょっと考えてみてください だいたい、予想がつくはずです ・・・そう、正解は久保です! 久保は歩を動かさず、他の駒を動かして、さばきにいっている、これがデータで示されているわけです これは画期的ですね 面白い!
他にも、と金を動かした割合が一番高いのは誰か、飛車より角を動かした割合が高い棋士が1人だけいるが誰か、という興味深い結果が出ています また、盤上のどこで戦っているかを調べるために、段、筋でも駒が動いた割合を調べています いや~、こんなデータが取れるんですね パソコンで棋譜管理している恩恵ですね ナイスな企画でした!

「プロ棋士なんでもランキング」 これは、アンケート結果を集計したものです
こういうのがあると助かりますね 自分で集計する必要がないですからね 載っているのも、棋士名鑑の空いたスペースなので、他の記事のジャマになっていません ランキングの中で、好きな食べ物を紹介しておきます 1位 寿司 (30人) 2位 焼肉 (13人) 3位 そば (11人) 4位 パスタ (9人) 5位 ラーメン (8人) そばとパスタとラーメンは麺類なので、寿司と麺類が多数を占めましたね その他のランキングとして、「血液型」 「好きな動物」 「よく観るテレビのジャンル」 「口癖」
「好きな駒」 「この一年で心に残った書籍」 「この一年で心に残った映画(ドラマ)」 「影響を受けた棋士」 「将棋上達法」 が集計されています アンケートで、20問は多すぎたのでは、とさっき私は書きましたが、一人ひとりは平凡な答えでも、集計してみると傾向がわかるので、20問も質問した意味があったかな、という感じですね 

さあ、最後は、今回の将棋年鑑への私の不満です 
これ、私、マジで怒ってます そして、あきれてます というのは、平成25年度の先手番の勝率がどこにも書いてない!!ということです 最初、私は何かの間違いだろうと思ったんです まさか、昨年度の先手の勝率がどれくらいだったか、書いてないなんてことはありえない、656ページもある本だから、見落としたんだろう、そう思って探しました でも、探せど探せど、見つかりません 結局、どこにも書いてないんです!! こんなの、ありえますか?? 昨年度のデータをまとめた本、それが将棋年鑑じゃないんですか? たかが、先手後手の勝率ですよ? 基本中の基本の情報じゃないですか! 
連盟、マイナビは何やってるんですか? もう何十年にもわたって作られている本で、ノウハウとかテンプレートとか、揃っているはずじゃないですか 本当に、信じられないですよ・・・

ちなみに、おととしの将棋年鑑には、巻頭特集の記事で、村山慈明六段の「プロ将棋最先端」の中で、「平成23年度の先手番勝率は5割4分1厘。22年度の5割4分とほぼ変わらず、前年に引き続いて後手番受難の年だったと言える。」とあります この記事で先手の勝率がわかりました しかし、おととしの将棋年鑑でも、データだけを別扱いとしてきちんと取り上げたページはなく、もし村山が文章に書いて触れてくれなかったら、わからないところでした 

ちゃんと、過去10年分くらいの先手後手の勝率差について、取り上げるページがないといけないでしょう こんなの、今はパソコンで管理しているので、一発で出てきます 実際、棋士別にどの駒をどれくらい動かしたかの割合すら、調べられて、現に載っているのですからね 先手番の勝率が載ってないって、ありえないですよ・・・

巻末には「対局日誌」があり、総対局数2813局(不戦・反則・千日手含む)とあり、男女全部の対局結果が載っています どっちが先手だったかもわかります 先手の勝率が知りたければ、これを全部手作業で集計しろってことですか? 冗談はよし子さんですよ

ちなみに、おととしの将棋年鑑のNHK杯の記事ところで、こんな文章を見つけました 「今期の先手勝率は57.1%と高率を示した。平均手数は111手。振り飛車戦が全対局の半数を超えた。」 こんな興味深い結果が出ているんじゃないですか 持ち時間の短いNHK杯で、先手勝率57パーセント・・・ もう3年前の2011年度のNHK杯の話ですけどね

とにかく、個人のデータを扱ったページしかなく、棋界全体の総合のデータを扱ったページが存在しない、というのが大問題です 読者が知りたい情報はいっぱいあるはずです

全体の先手後手の勝率はもちろん、平均手数、そして、どの戦型がどれくらいの割合で指されたのか 男子と女子では先後の勝率はどれくらい差があるのか タイトル戦での先手番の勝率はどれくらいか、先手後手があらかじめ決まっている順位戦ではどうだったか、持ち時間の短く、注目度の高いNHK杯では先手何勝、後手何勝だったか、さらに戦型別の勝率、例えば相居飛車なら先後でどれだけ勝率差があったか、対抗形の勝率は、そして戦法別の勝率、横歩取りの先手の勝率は、後手一手損角換わりの勝率は、などです

個人の成績でも、トップ棋士10人くらいは、先手後手の勝率差が知りたいです 私が以前持っていた、平成20年度版では、羽生の勝率が先手番は25勝5敗、勝率0.833  後手番は19勝13敗、勝率0.594 こんな衝撃的な数字が出ているじゃないですか
 
トップ棋士20人くらいについては、各人の飛車を振った割合もぜひ知りたいところです さらに、今年度の名人とA級棋士に関しては、お互いの対戦成績も載せて欲しいです A級は総当りなんで、絶対に対戦があるわけですからね 1ページ割く意味はありますよ こんなところです 本当に、総合的なデータ、統計を扱ったページが存在しないのは大問題です

マイナビの今年の将棋年鑑の宣伝文は、以下のようです↓
「1年間の将棋界の動きが丸ごと分かる、昭和43年から続く日本将棋連盟の定期刊行物です。対局についても、プロ棋士についても、これ以上ない情報量でお送りします。」

先手番の勝率も載せてなくて、「これ以上ない情報量」って・・・ マイナビさん、HPを見たら、何人もの編集者がさかんにブログを更新していらっしゃいますが、もっとちゃんと年鑑に基本情報を載せてから、ブログで遊んでくださいよ 頼みますよ ホントに!! プロ棋士の棋譜のデータベースは、一般のファンには公開されておらず、使えるのは関係者だけなのですからね

今年は、巻頭特集は良かったです 康光さんの電王戦、詰将棋、上野さんの最新形のまとめ、この3つは執筆者の気合いが伝わってきました 大満足の企画でした 私は来年も将棋年鑑を買おうと思ってます 来年は上記で要望したようなデータをちゃんと載せてください マジでお願いします、頼みますよ! 
平成26年版 将棋年鑑2014 レビュー前編
日本将棋連盟 発行 マイナビ 販売 4600円+税 2014年8月1日初版
棋譜以外の記事の評価 B

将棋年鑑を買ったので、レビューしてみたいと思います と言っても、棋譜以外のところです ネットのどこを探しても、案外、将棋年鑑のレビューというのがないので、やってみようというわけです

私は将棋年鑑は毎年買っているわけではなく、気が向いたら買っているという状態です 何しろ、私は棋譜を全く並べないので、データと読み物の所のためだけに5000円近くの本を買うのは気が引けるわけです で、おととしは買ったものの、読み物であまり良い記事がなかったです それで、去年は買いませんでした でも、今年は巻頭特集が良さそうだったのと、棋士へのアンケートの質問を、これまでの倍の20問に増やした、ということで、何かブログを書くときの参考になれば、ということで買いました マイナビのHPから、コンビニ払いで買いました 8月1日に家に届きました

棋譜以外の読み物の記事を、レビューしてみたいと思います 量が多いので、前編と後編に分けます

まず、プロ棋戦の結果の記事から
これは、昨年度の棋戦を振り返るのに、ちょうどいいですね 私はNHK杯と銀河戦と順位戦以外のことは、あんまりチェックしてないんですよ あれ、タニー、竜王戦の2組で優勝してたのか、とかね 各棋戦ごとの簡単な解説を読み、トーナメント表、リーグ表の結果を確認するのは楽しいです  

主要アマ棋戦についても結果が載っていますが、私はさすがにアマ棋戦までは関心はないです TVで放送とかがあれば観るんですけどね

さて、目玉の巻頭特集のレビュー
<特集1> 河口・先崎対談 2人の語り部が1年を振り返る (分量8ページ)
これは面白かったです 2人が話し言葉で7大タイトル戦を振り返ってくれ、読んでいて楽しいです 例えば、王座戦の羽生vs中村太地について、河口「これは今期一番いいシリーズだったね」 先崎「番勝負全部がいい将棋でしたね」
王位戦の羽生vs行方は、河口「今回羽生さんとやって、正直いいところなかったよね」 先崎「ちょっと行方さんに肩に力が入っているかな、という感じでしたね」 こんな風で、率直に言ってくれていて良かったです

しかし、里見香奈さんの話題になったときに、河口さんに次のような発言がありました 
河口「ものすごく頑張っていたから、三段に上がったときはすぐにでも四段になれるんじゃないかと思ったけど」
この発言は私は信じられませんでした すぐにでも四段??? 何を根拠に??? 奨励会は、三段になってやっと半分きた、という世界ですよ??? 一番最近の三段リーグで上がった2人は、星野三段が在籍14期(7年)、宮本三段が18期(9年)ですよ 河口さん、大丈夫ですか?  しっかりしてくださいよ・・・

それから、電王戦について、先崎さんが「今人間とコンピュータの棋力はいい勝負、棋力は同じだけど、神経をすり減らしながらやる人間は、そうでないコンピュータには勝てないんです」という趣旨の発言がありました  しかしこれは残念ながら私には全くむなしい、現役プロが言ってはいけない言い訳にしか聞こえませんでした 負ける、ということは相手より弱いということと同義、と現役プロなら自覚を持ってしかるべきでしょう 今後、コンピュータがもっと強くなっていっても、この言い訳を使い続けて、
「いやあ、勝てないけどプロは棋力では互角です」と言い続けるつもりなんですかね?

文句が多くなりましたが、対談自体は、とても面白かったんですよ(^^; 良かったです 対談形式でタイトル戦を振り返ってくれる特集、毎年あったらいいですね 

<特集2> 女流棋士40年の歩みと若手女流特集 (分量6ページ)
女流の歩みのページ、たった1ページか(^^; 簡単な年表と短い解説があるだけ その「女流棋界の変遷」と書かれた年表では、例によって女流棋士の独立問題、LPSAについては全く触れられていません 連盟にとって、もうその問題は、なかったこと、にしたいのでしょう 問題が起こったから、なかったことにして無視する、という態度、これはダメですねえ

そして、残り5ページは、若手女流5人に、1人1ページ使って「81の質問」をしています
長谷川優貴女流二段(18歳)、北村桂香女流1級(18歳)、山根ことみ女流1級(16歳)、竹俣紅女流2級(16歳)、和田あき女流3級(16歳)というメンバーです こりゃまた、若いを通り越して、幼いのいっぱい集めたなーー(笑)
 
プロとしての実績、あるのか? 昨年度までの通算成績は、長谷川さんは22勝17敗、北村さんは7勝6敗、山根さんは2勝1敗、竹俣さんは4勝8敗、和田あきさんは3級なので実績なし まともに実績と呼べる数字があるのは長谷川さんだけじゃん(^^;

81の質問の中で、印象深かったものは、Q最高で何手詰の詰将棋を解いた?というものです
長谷川 昔師匠に教えてもらいながら解いた45手詰  北村 たぶん25手くらい、かなり時間がかかりました(笑)  山根 忘れました(笑)  竹俣 37手詰  和田 45手詰

竹俣さんと和田さん、すげーな! ところが、和田さんは、Q対局前に必ず持っていくものは?という質問に、「3手詰ハンドブック」と答えていらっしゃる 45手詰を解いたことがある人が、3手詰ハンドブック持っていくんかい! これには笑いました 

あともう一つだけ、竹俣紅さんの答えで、Q今思いつく限り一番長いスペルの英単語は? という質問に、竹俣「Supercalifragiisticexpialidocious」 なんと、33文字! 調べたら、実際に確かに存在する単語 けど意味はわかりませんでした 竹俣さん、すげえー 他は特に面白い答えって、なかった感じです  とにかく、あまりにマニア向けな人選すぎたな・・・ 

< 特集3> 佐藤康光が語る第3回電王戦 (分量16ページ)
これは良かったです! トッププロの康光が、図面を使って5局について詳しく感想を述べてくれています
第1局 ▲菅井vs△習甦 
「戦前の予想を覆すコンピュータの完勝。習甦のMVPも十分うなずける。」
第2局 △佐藤紳哉vs▲やねうら王 
「前回も今回もコンピュータは穴熊に囲った将棋はなく、好感がもてる。 また、結果的に穴熊に組ませて勝った本局は、現代将棋に対する一つの問題提起といってもいいだろう。」
第3局 ▲豊島vs△YSS
「(事前の対策について)バグを見つけるためだけの作業は、時間の浪費と言わざるを得ない。」 「角交換して▲2一角と打った。この局面、プロ同士の対局なら、ほとんどの人はこうは指さないだろう。この順は無理というのがプロの第一感である。」 「彼の真摯な事前準備が勝利に結びついたことは間違いない。」
第4局 △森下vs▲ツツカナ
「ツツカナがどんな意図で指したのか分からないが、古い形に新しい風を吹き込んだもので、序盤戦術としては今回の5局の中で一番感心させられた。」 「危険そうでも一つ勝ちがはっきり見えていれば良いというのがコンピュータ的な勝ち方だったのかと思う。」 「序盤からの工夫もあり、非常に面白い内容の一局だったと思う。」 
第5局 ▲屋敷vs△Ponanza
「Ponanzaの指した手は△1六香。思いもよらぬ1筋に香が放たれた。ここで感じるのはコンピュータの多重性だ。人間でいえば性格に当たるものが、コンピュータの場合一つのソフトの中に多重的に存在しているように思う。後に見せる終盤の鋭い手に比べて、この香打ちは正反対。鋭い人は指さないタイプの手であるといってもいい。しかし、コンピュータの場合、このような2種類の手を同じソフトが指してくる。人間にとっては両方学ぶことは難しい。むしろ学ぼうとすると、両方とも取り入れられなくなってしまう危険性がある。」 
総括として、「コンピュータのレベルがかなりのところまで達していることはもはや疑いようがないだろう。」

この康光さんの文章を読んでの私の感想は、なんといっても第5局で取り上げた箇所です コンピュータが多重的な性格(棋風)を持つのに対し、人間は性格は一つしか持てない、こう言っている点です プロ棋士の中でも、飛びぬけて自由な発想を持つ康光さんがこう言及しているのは、非常に重いですね やはり、今後、人間がコンピュータに追いつこう、勝とうとするのはもう無理があるのではないでしょうかね

とりあえず、ここまででいったんUPしておきます
あとの 特集4、詰将棋の世界 ~看寿と現在~  特集5、上野裕和の最新将棋事情 棋士へのアンケート、その他のコラム等、それから、今回の年鑑の私の不満と今後への希望は、後編(あさっての土曜)まわしとします
女流棋士名鑑2014 ~女流棋士発足40周年記念~
著 公益社団法人日本将棋連盟 女流棋士会  1000円+送料200円 フルカラー全40ページ
ねこまどShop販売 本というか、厚めのパンフレットみたいな感じ 評価 B 

この本の存在を私が知ったのは、7月16日、阪田大吉さんの「将棋のブログ」の中の、将棋ニュースか、新刊案内のところだったと思います おー、こんなのがあるんだ、欲しいなと思って、売っている「ねこまどShop」のHPへ行ってみると、残り数が「11冊」 さっそくクレジットカードで注文しました 次の日、見たら、なんともう売り切れ! もう扱っていた跡形もなし 買っておいて良かった~ 

この本、今年6月に行われたファン約600人とのイベント、「駒桜 女流棋士会40周年記念パーティ」でそのときは限定100冊で販売されたものなんですね

コンテンツは、・女流名誉会長の関根さんと、現会長の矢内さんの「ごあいさつ」が1ページ
・タイトル保持者紹介として、里見二冠、甲斐二冠、香川女流王将が各1ページ(タイトル経歴と写真)、
・歴代女流棋士会会長対談として、関根紀代子、谷川治恵、矢内理絵子の対談が4ページ
・女流棋士のあゆみ、の年表が4ページ

・ミニインタビューとして本田小百合、安食総子、室谷由紀、竹俣紅に各1ページずつ
・女流棋士たちの普段の表情を写したフォトグラフィーが4ページ(全部で70枚くらい)

・女流棋士一覧として、写真と全員への質問が6つ
Q1得意戦法 Q2ライバル Q3好きなタイプ Q4女流棋士で誰の料理が食べたいか Q5あなたは女優、もし演じるなら何? Q6女流棋士でお嫁さんにするなら誰?

・女流棋士系統図がチャートで1ページにまとまっている
・さきほどの全員への質問の答えに対し、鈴木、藤田、山口の3人が、3ページ突っ込みを入れている
・最後のページには矢内会長の「英明果敢」のサインがドーンと書かれている

こんな感じです 女流棋士はめったにこういうのを作らないから、いきなり作ってもなかなかうまくできないのでは、と思ったのですが、そんなことはなく、よくまとまっているではないですか 作成委員の鈴木環那さん、藤田綾さん、山口恵梨子さんはよくがんばりましたね~ 

でも、もちろん、もっとこうしたら良かったのに、というのはあります
里見さんが「女流二冠」、甲斐さんが「女流二冠」と記されていますが、この書き方では何のタイトルを持っているのか、わからないです 里見さんは女流王座・女流名人だし、甲斐さんは女流王位・倉敷藤花と、書かなければダメでしたね そして、加藤桃子さんが女王のタイトルを持っていますが、彼女の存在にも触れ、女流棋士の会員ではない、奨励会員だと一言注意書きしてしかるべきでした (あとで2ページ目にそれらが書かれているのを発見しましたが、白抜きの字で実に見えづらかったです)

それから、里見、甲斐、香川の3人に、写真だけでなく、なんらかのインタビューが欲しいところでした NHK杯で司会をやっている清水さんにもコメントが欲しかったです

さて、大問題は、「女流棋士のあゆみ」です 時系列で入会女流棋士と、女流棋界の動きがまとめられていますが、LPSAおよびLPSAの女流棋士について、一切触れられていません! LPSAは2007年に発足しましたが、そのことについて全く書かれていないし、現LPSAの女流は、入会女流棋士の欄からもその名が消され、その存在が全くなかったことになってしまっています 藤森奈津子さんや中倉姉妹や石橋幸緒さん、そしてタイトル常連だった中井広恵さんまでが、記録上、いなかったことになっています これはあんまりな扱いでは・・・ まあ、この問題は私はあんまり考えたくもないですけど、何とか仲直りしてほしい・・・

あとは、一人ひとりへアンケートはいいのですが、「ファンのみなさんに何か一言」、これはぜひ設けて欲しかった項ですね

でも、最初にも書きましたけど、全体的によくまとまっている本なのですよ 普段の姿を撮った写真集もいいです 私は女流の写真は、男子プロのそれより見ていて楽しい(^^;

アンケートで一番面白かったのが、Q6の女流棋士でお嫁さんにするなら誰?という質問、1位が6票を獲得した安食総子さん! パチパチパチ 癒されるという意見が圧倒的 2位が5票を獲得した藤田綾さん! パチパチパチ 藤田さんを選んだ矢内さんの回答 「いつもニコニコしていて聞き上手 ちょっと天然だけど、癒し効果抜群!?」
ちなみに矢内さんは3票獲得でした 他には、山口恵梨子さん、北村桂香さん、中村真梨花さん、山田久美さん、高群佐知子さんというあたりが複数回答で上がってました
上司やファン(お客)からの評価ではなく、「同僚の評価」というのは、ある程度客観的な正しい評価が出るもの、と聞いたことがあります これは興味深いナイスなアンケートでした

あと、面白かったのが斎田さん Q3 好きなタイプは、という質問に、「さわやかでハンサムで頭が良くて楽しくて思いやりがある人」 ・・・斎田さーーん、女子中学生みたいな理想を持っていらっしゃる(^^; そんなだからまだ、いや、なんでもないです
矢内さんは、同じ質問に対して「面白くて、優しくて、頭が良くて、清潔感がある人」  ・・・矢内さん、こういう人を見つけたのかな 結婚おめでとうございます ちなみに清水さんは、同じ質問に対して、好奇心旺盛、あふれるユーモア、読書人と回答

あとは、竹俣紅さんの、Q4 誰の料理を食べたいかという質問に対する回答  「竹部さゆりさん 想像できないようなハチャメチャな創作料理を作ってくれそうだから(笑)」 これは笑いました 

さて、この本の最大の問題点は何か? それはあっという間に売り切れて、入手できない人がたくさんいる、ということでしょう  増刷をかけるべきでしょう!
こういう本は、欲しい人には手に入る状態にしておくべきだと思いますね そして、できれば毎年、でなければ2~3年に1回はこういう名鑑本は出して欲しいです 回を重ねるにつれ、ノウハウができて作るのも楽になって、完成度も上がると思いますしね 
毎年発売しても、1200円なら、私は応援するために買いますよ! 発足40周年記念と言わず、これからも頻繁に女流棋士名鑑を作ってね~
一点突破 岩手高校将棋部の勝負哲学
岩手中・高等学校 囲碁将棋部顧問 藤原隆史著   観戦記 大川慎太郎著
ポプラ新書 780円+税 2014年6月5日 第1刷発行
評価 A
コンセプト<生徒を伸ばし、大会に勝つための、今まで岩手高校で培ったノウハウの数々を名顧問が語る  そして、2013年全国高等学校総合文化祭の観戦記>

中学・高校の部活動が強豪であるかどうか、それは顧問の先生が熱心かどうかに懸かっている・・・ そんな風に思っているのは私だけではないでしょう
どんな部であれ、毎年、強い部があれば、それはもうほぼ100%、顧問の先生が熱心である部です この岩手高校将棋部も、そんな部です 顧問の藤原先生が、とにかくすごいです この本に書かれてある、これだけの哲学と、強くなることへの執着心を持っていれば、7年連続表彰台も理解できます とにかく、いいと思ってやれることは全部やる、といった感じです それも、部員も顧問も、日々楽しそうに部活をやって、結果を出しているところがすごいです 部活に出るかどうかも、その日何をやるかも部員の自由、学年での上下関係もない、革新的です

フジTVが同校を取材して放送した「ザ・ノンフィクション 偏差値じゃない ~奇跡の高校将棋部~」も、私は観ましたが、その中でも藤原先生は、部員の活躍をスポーツ新聞みたいな記事を作って壁に貼り出してやる気を出させたり、部員の中川慧梧君を乗馬クラブへ連れて行って馬に乗せて姿勢を良くさせたり、と、非常にユニークなやり方で指導していました 何より、弱く自信のなかった部員にわざと下級生たちの指導をまかせ、化けさせたのは感動的でした  

藤原先生は岩手高校のOBなのですが、自身は高校時代、「ペンフレンド部で、もの足りない3年間を過ごした」とのことでした  ご本人にそんな思い出があるからこそ、楽しく充実した部活にしてやりたい、という気持ちが強いのかもしれません そして、その超熱心な顧問に報いたい、団体戦に勝つことでお礼をしたい・・・ そういう部員たちの気持ちが、岩手高校将棋部の強さになっているのでしょう 

フジTV「ザ・ノンフィクション」の最後のナレーション
「人生の豊かさは、胸を熱くした思い出や、涙にくれた切なさの数で決まるはず 夢中になること、勝っても負けてもいいから何かに没頭すること 人生の行方を決めるのは、偏差値じゃない」
(今なら、ネットで検索すれば、この番組は観れます)

私も、こんな先生に出会いたかったですねえ・・・ 2013年の高校選手権の観戦記の記事も、よく出来ていて、団体戦の臨場感が味わえます 高校野球を観るのもいいですが、夏の高校将棋も観戦に値しそうだと思いました 囲碁将棋チャンネルで取材してくれませんかね そのための専門チャンネルでしょう

以下に、本文より、私が特に心に残った箇所を、挙げておきます

「私も授業以外に年間100日くらい部の遠征などで出張しているが、生徒たちの成長を実感できる楽しさがあって、これを辞めたいと思ったことは一度もない。誰かの成功例をそっくりそのまま真似するのは、極めてナンセンスだ。他人の成功例は参考程度でいい。(中略)「自分たちにできるやり方で一番よい方法は何か」を試行錯誤すること。そして体験から得た実感や反省など、自分でなければ知り得なかったことから多くを学ぶこと。成功の秘訣は、じつは他人でなく自分の中にある。世の中には、社会人になっても学校に嫌な思い出があって在籍していた歴史さえ抹消したいと思っている人もいるだろう。しかしいったん岩手高校で預かったからには、そんなふうにはさせたくない。(中略)とにかく「学校へ行けば仲間に会えるから」ということでだんだん楽しくなるような環境を作ること。楽しくなければ生徒は来ないのだ。」
第3回 将棋電王戦 棋士激闘録
池田将之・内田晶・滝澤修司 共著  発行 ビーエスクリエイティブ 販売 星雲社 1620円+税
2014年5月30日 第1刷発行
評価 B
コンセプト<観戦記者が、第3回電王戦に出場した棋士に迫ったドキュメント>

第3回電王戦を、棋士側の視点から取材したドキュメンタリーが中身です 現役の観戦記者さんが書いていますので、内容は安定していて、安心して読むことができます 
図面、符号はあまり使わない形式を取っています ポイントとなった局面だけ極力絞って載せています 図面や符号の印刷が薄くて見づらい、なんてことはありません(Amazonのレビューで、そういうことを書いた人がいるので) 写真も豊富に貼ってくれています(全部白黒で、小さめで数を多くしようとしてある)

「将棋世界」で、電王戦の記事があると、楽しみに読んでいる人(私がまさにそう)なんかには、おすすめできる本です ただ、図面、符号を満載して欲しい、という人にはあまりマッチしないと思います 全体的に見て、そんなに目新しい箇所はなかったのですが、よくまとまっている本だと思います 今年の電王戦がどんなだったか、思い出させてくれます

読んでいてびっくりしたのは、菅井五段に出場のきっかけを訊いたところ、
菅井が「自分は普段からソフトと対局することが多いので」と答えた部分 
ええー、ソフトと対戦を取り入れてるのか! (何のソフトと対戦してるかは書かれておらず) えー、もうこれからはそういう時代なのかなー 

あと、一番いい描写だと思った箇所は、佐藤紳哉六段の、人柄を書いたシーン 長いけど引用します
「佐藤と筆者(滝澤)は将棋連盟の野球チームで二遊間を組むことがある。 2人のあいだにフラフラと小飛球が打ちあがる。佐藤は一心不乱にすごい勢いでショートから突っ込んでくるのだ。 周りなど目に入らぬような猛ダッシュなので、こちらがスッと身を引くのが暗黙の了解になっている。 もうひとつ野球での話を。佐藤がネクストバッターズサークルに入る。 そこで軽く2~3回素振りをという言葉は佐藤にはない。 思いっきり5度ほどバットを振るのだ。ベンチで見ているナインは冷や冷やもの。 いつバットがすっぽ抜けてベンチへ飛んでくるか・・・。それくらいの勢いで振るのである。 打席ではなく、まだ準備の段階で、だ。佐藤は常に全力投球だ。」
こういう表現、面白いです さすが観戦記者ですよね

出場棋士5人のドキュメントのほかは、佐藤慎一四段と船江五段の具体的な図面を使ってあの手はどうだったこうだった、という対談、そして最後には谷川会長のインタビューがあります 一箇所だけ引用します
谷川「プロ棋士がソフトに局面を検討させているところを見ると、直感的に顔を背けてしまいます。 しかし、良いものを取り入れるという柔軟性も必要なので、なんとも言えないところです」
私はプロ棋士には、自力で考えて欲しいが・・・ もう時代遅れなのかも・・・(^^;

で、この本の問題点は何か? それは値段が高い!ということです 税込み1700円を越えちゃうで~ 普通の本、2冊分やん~ もっと安く抑えて、たくさんの人が読めるようにして欲しかったですね 評価がBになった理由になっております しっかりした作りの本です 値段以外は満足しております
ルポ 電王戦 人間vsコンピュータの真実
松本博文著 NHK出版新書 780円+税 2014年6月10日第1刷発行
評価 A 
コンセプト<図面や符号なしで、今までのコンピュータ将棋の歴史の総まとめをする>

楽しく、一気に読みました 面白かったです 個人的に特に良かったのは、この本の序盤のほう、ソフト開発の黎明期ですね まずは詰将棋を解くプログラムが作られたところから話が書かれてあって、そこらへんのところは全然知らないことが多く、興味深かったです

この作者の松本さんという人は、ソフトプログラマーの方たちが、どういう人なのか、職業とか履歴を(全員ではないけど)ちゃんと一人ひとり調べられていて、そこはすごいなと思いました

2005年のBonanzaの登場以前、以後と話があって、第1回の米長さんの電王戦から第3回の電王戦、そしてついこの前の5月のコンピュータ選手権まで話が網羅されています ただ、個人的には電王戦の話は、知っていることも多かったですけどね

「GPS将棋に勝ったら100万円」という企画に著者も参加し、全国のアマ強豪たちが、わんさと集まり、イベントが一種のお祭り状態になっていった、という話も、なんだか非常にワクワクして読みました そういう裏話が面白いんですよね

この本で図面はいっさい使われておらず、符号が使われたのは2回だけ、米長さんの△6二玉、豊島対YSSの△6二玉という手だけです どんな対局だったのか、他はすべて言葉で説明しています 
手前味噌になりますが、私は個人的にこのブログを書いているので、いったいどのように電王戦の対局を図面、符号を使わずに表現するのか、非常に興味あるところでした 松本さん、うまく表現できている対局もあれば、この表現では厳しいな~と思える箇所もあり、やはり図面、符号なしでは対局の様子を伝えるのは難しい、とも思いました

電王戦で棋士が大きく負け越したことについて、渡辺明二冠がこう語っています
渡辺「もし自分の息子がなれるのであれば、棋士は勧めたい職業でした。好きなことができ、自由で制約がない。でもこの先は、あまり人に勧められなくなるのかもしれません。自分は現在三十歳です。棋士になり、将棋を職業として、ギリギリよかった、という最後の世代となってしまうのかもしれません」 (P236より)
この渡辺の言葉が、全てを物語っていると思います プロ棋士、ピンチ・・・

筆者の松本さんは、なるべく中立的な立場で、客観的にプロvコンピュータの戦いを見つめようとしているのが好印象です  

松本さんはponanzaの作者の山本一成さんと親しいようで、本文中に山本さんの情報にけっこうなページ数が割かれているのですが、ponanzaが5月の選手権で優勝しなくて良かった、と思ったのは私だけではないでしょう
ponanzaの製品版、PonaXは、買った人から酷評されているので、もし選手権で優勝していたら、さらに売れてしまい、被害者が倍増したことが考えられますので(^^;

この本、よく出来ていて、今までの長年のコンピュータ将棋の歴史をざっくりと振り返るには、もってこいの一冊と言えます     
さて、これからプロvsコンピュータはどうなっていくのか?
今年4月の岡崎将棋祭りの石田和雄九段の言葉で、「これはもう、なるようにしかならんですね」というのがありました(^^; まあー、そうでしょうね コンピュータの進歩は止まりませんからね 
果たして、第4回電王戦はあるのか? 注視していきたいと思います
怒濤の関西将棋
谷川浩司著 角川書店発行 2014年3月初版発行 800円+税
評価 B コンセプト<連盟会長の谷川浩司が、関西将棋の歴史を振り返る>

棋書レビューです この本、符号はほとんど出てこない、図面は一切出てきません 完全な読み物です
対象は、プロ将棋界のファンですね 
関東の棋士はどうのこうの、それに対し関西は~といった話なので、プロ将棋界に興味がない人が読んでも、そんなに面白くないと思われます

阪田三吉、升田幸三、大山康晴といったところから話が始まっています 
よくまとまっていて、文章も読みやすくてスラスラ読めます

しかし、じゃあ、どこが特に面白かったか、と言われると困るんですよね
谷川会長にしか書けない文章、というのが、少なかったです
もっと、会長職の大変さとかを知ることができたら良かったんですけど、それだと題名と中身が違ってきますしね

P100より抜粋 「私の持論だが、将棋の棋士には『勝負師』『芸術家』『研究者』の三つの側面がある。 強い棋士は、その三つの素質を三分の一ずつバランスよく持っている。」
・・・んー、これも、私はすでにどこかで聞いたことがあったような気がします

最近の話、山崎隆之、豊島将之、糸谷哲郎、里見香奈といった名前も最後には出てくるのですけど、私はすでに知っている話がほとんどで、NHK杯の時に解説者が棋士紹介や雑談でしゃべるレベル以上の話は、書かれていませんでした 

そう、よくまとまっていて読みやすいんですけど、特に目新しいことは書かれていないんです(^^;
んー、私がもうマニアすぎるのかも? でも「関西将棋」っていう、マニア向けのタイトルだしなあ
プロ将棋界の歴史を調べて、こういう本を書けるっていうのは、会長としてはいいことなんですけどね

谷川会長には、B1からAへ復帰する、とか、まだまだプレーヤーとしてまた活躍してもらいたいものです
谷川会長51歳、ここからレジェンドになってください!
将棋指し57人の日常
著者の記述はなし 週刊将棋編 1540円+税 2014年3月初版発行
評価 B コンセプト<プロ棋士約50人に「自分の好きなもの」についてエッセイを書いてもらった>

棋書レビューです 2012年~2013年に週刊将棋に掲載された連載をまとめた本です
約50人もの棋士が、一人基本3ページ書いています 面白いものから、そうでないものまで色々です
図面なんかは、いっさい出てきません 表紙の盤駒の写真は、中身と合っていませんね(^^;

冒頭で、アニメ好きの高橋道雄九段が「『けいおん』にハマった。それも半端なく。」と書いておられます
私もじゃあ、ちょっとチェックしてみようと思ってYou Tubeで調べてみましたが、一瞬でアウトでした(笑)
この、モロに萌え系キャラ達の発するキャピキャピの声は、私の手には負えないです・・・(^^;

他で面白かったのは、佐藤天彦七段の宇宙戦艦ヤマトへの熱い思い、
杉本七段の、ウルトラマン人形を使ったほほえましい子育ての話、
そして西尾六段の、エレキギターの話です 8本ものギターを所有している理由を他人に熱く語ると、
完全に無視されるというくだりは笑えます

この本、とにかく色々な話が出てきていて、そしてすぐその話が終わり次の人の話、なので、
あー、もっと話の続きが読みたいのに、となってしまいます 一人当たり3ページは短い!

そして値段が問題です なぜ、税込みで1600円以上もしてしまうのでしょうね 高いです
それが評価Bにした大きな理由になっています 

読んだ後、強く思うのは「自分の趣味を他人に押し付けてはいけない、好きなものは人それぞれ」
ということです クラシック音楽、落語、ワイン、茶道、香水、城めぐり、もうホントバラバラですから(笑) 

期待しすぎず買うのがいいです そして、5分単位くらいの空き時間にちょっとずつ読むのが吉ですね
アップセットボーイズ 明日葉高校将棋物語 上・下
柳葉あきら著 ちくま文庫 上巻は950円+税 下巻は1000円+税 2014年3月初版同時発行
評価 A コンセプト<高校将棋部で成長していく主人公に、読み手が自分を投影し、
 高校将棋を仮想体験できる物語>

1997年から2000年に、週刊将棋に連載された将棋マンガです
なぜか今頃になって発売されました(^^;
よく出来ていて、面白いです 各キャラも、個性があっていいです
「対局の熱さ」がよく描けていると思います 
学生将棋という設定のためか、絵柄も内容からも、それほど古さを感じさせません

ただ、図面が頻繁に出てきて具体的な手順が示されるのですが、私としては図面や手順はなくして
対局者の心理描写だけで、描き切って欲しかったです ヒカルの碁はその方式で成功してますしね  
(ヒカルの碁でも図面は出てきますが、あくまで背景の一部)

学生時代に将棋部に所属していなかった人に読んでもらいたいですね (私も将棋部ではなかったです)
読み手が主人公の沢村君になった気分で、高校将棋部を仮想体験しよう!

ところで、今、週刊将棋で連載中の、この作品の続編「笑え、ゼッフィーロ」はいつ終わるんでしょうか
6年前に、2008年の春という設定で連載が始まり、未だに話が2009年の春までしか進んでいません
終わるまでには、倍のあと6年くらいはかかりそうですね・・・(^^;
オール・イン 実録・奨励会三段リーグ
天野貴元(あまの よしもと)著 宝島社 1238円+税 2014年3月初版発行
評価 A コンセプト<三段リーグを年齢制限で退会した、著者の半生を綴った手記>

著者は奨励会に10歳で入会し、16歳で三段にまで昇段、そして26歳で退会しています 1985年生まれとのことなので、現在は28歳か29歳ですね 子供の頃から、順に話が始まりますが、よくこれだけ出来事を覚えていたなあ、と感心させられます

プロになれなかったという結果を知っているにも関わらず、これからどうなるのだろう、と、とてもハラハラドキドキしながら読み進めました 読みやすい文章ですが、書かれてある内容の重さに、私は一気には読めず、途中で休み休みしながら読了しました 

文中より抜粋
「三段リーグの世界が一種の『狂気』に支配されていることは間違いなかった。それは勝つことによってしか脱出できない魔境である。」 
「でも、いまの自分から将棋を取ったら、いったい何が残るのか。いや、何も残らない。マイナスの思考が果てしなくループしていく。『そもそも、この人生において、将棋が強くなることにどういう意味があるのだろう』 僕はここにきて、完全に袋小路に入り込んだようだった。」

こう言っては悪いかもしれないんですけど、面白い、面白いです 将棋に青春を賭けた人のみが書ける文、読ませます!
この本、著者は苦しい思い出だったにも関わらず、よく書いてくれたものだと思います 私はこういう本を待ってました 出版してくれて感謝です 
大崎善生さんが名著「将棋の子」を発表したのが2001年、それ以来、実に13年ぶりにこういう本が出たのです 貴重な手記だと思います 奨励会がどんなところか興味ある人は、必読ですね 子供を奨励会に入れる予定のある親御さんもぜひ読みましょう  

雑誌「将棋世界」には、三段リーグを抜けた人が「四段昇段の記」というのを書くことになっています 他にも、順位戦の昇級者が「昇級者喜びの声」というコーナーがあります タイトルを取った人の記事なんかは、日常的です 要するに、勝った側の人の取材しか、ほとんどなされないわけです 負けた側の人にはスポットライトが当たらないんですね 

まあ、勝負の世界ですから、それはある程度仕方ないです それはわかっています でも、勝った人の記事ばかり読んでいると、バランス感覚がおかしくなっていくのですよね 勝った人がいるなら、必ず負けた人がいるわけです そして負けた人ほど、真剣にその将棋や物事を振り返っているはずです 
だから、三段まできて、年齢制限で退会する人にも何かしら、この本のような手記を書くコーナーが「将棋世界」に1ページくらいあってもいいんじゃないでしょうか もちろん、本人がOKすることが前提ですけどね

天野貴元さん、舌がんをわずらい、大変ですけど、将棋に賭けた青春の思い出を糧にして、これからの人生、がんばってください!!
遺言 ──最後の食卓
林葉直子著 中央公論新社 1200円+税 2014年2月発行
評価 A (人によって相当分かれると思います)
コンセプト<療養中の著者が、時々人生を振り返りながら、食に関して書いたライトなエッセイ>  

またまた棋書レビューです と言っても、棋書とは言えないですけど(^^;
林葉さん、エッセイうまいですねえ さすが、作家だけありますね
小一時間あれば、全部読めちゃう本です 立ち読みですませる人も多そう・・・
林葉さんのためには、買いましょう!(笑)
数年後にはブックオフで安く手に入るから買わない?
いやいや、林葉さん、リアルタイムで死にかけてるんですよ(^^;

この本の4ページのカラーページの中にはヘアヌード写真もあります
現在の林葉さんの風貌を知りたい方は、Yahooで「林葉直子 画像」で検索すれば出てきますよ

私には、林葉さんの真似は全然できませんね
こんなに自分自身を身売りするような人生は、私には送れません
林葉さんがこの本を出すまでやっていたブログの題名が、「人生、詰んでます。」というのを知ったとき、私は不覚にも大笑いしてしまいました(笑) 
今の林葉さんの健康状態は、肝硬変が悪化し、体重は38キロで、「500ミリリットルのペットボトルが重くて持てない」とのことですうわー、ホントにもう詰んでるやーん(^^;

12歳で女流プロ棋士になった林葉さん、激動の人生を送って、46歳で死んでも、
「まっ、しょうがないか、明るく死んでいこう」というのが伝わってきます
「死ぬからって、暗くなることもないじゃない?」という著者の生き様が、私には新鮮でした

で、林葉さんの将棋に関しては、私はあまり知らないんですよね
林葉さんと言えば女流王将10連覇なんですけど、どんな将棋を指したのか、知りません
(そう言えば本文に「女流王将を10連覇したけど賞金総額500万円に満たない程度」と書いてありました
女流の世界ってどうなってんの、1回タイトル獲っても50万円にもならない?)

囲碁将棋チャンネルにお願いですけど、もし林葉さんが亡くなったときには、特集番組を組んでくれないでしょうかね 林葉さんが指した棋譜を解説して欲しいです
「女流棋士・林葉直子」の棋譜を、解説付きで見てみたいと思うのは将棋ファンなら素直な欲求でしょう
米長邦雄さん追悼特集とか、村山聖さん追悼特集は、やってますからね ・・・無理かなー? 

林葉さん、今回の本は、昔の思い出も含まれてましたけど、食に関するエッセイ本でした
なんとか元気を取り戻し、今までの人生がどんなだったかを本格的に回想する本も、出してもらいたいものです 
こういう破滅型だけど芸術家肌の人を、私は応援したい気持ちが強いです
だって、みんなが背広を着たサラリーマンだったら、世の中つまらないじゃないですか

Amazonのレビューで現在のところ2人の方が書いておられますが、評価は星1つと星5つの真っ二つです(笑) 林葉さんの文章、独特ですからねえ  
この本を買おうかどうか迷ってる人は、林葉さんが2月の末に新しく開設させたブログがありますので、そこの文章を読んで、面白かったら買うといいと思いますよ
林葉さんのブログはここ→ http://hayashibanaoko.blog.jp/