将棋界の不思議な仕組み プロ棋士という仕事
青野照市著 創元社  2016年10月20日第1版第1刷発行 1400円+税
評価 A コンセプト<プロ将棋界周辺の知識をたっぷり紹介>

よくここまで情報を詰め込んで書いてくれたという感想です。充実した内容。
ひとつの質問につき見開き2ページで、答えてくれています。95個もの質問の数です。
どれも納得のいく回答がほとんどで、青野さんは常識のある人だと思いました。

(でも、本書が発行された2016年10月といえば、あの忌まわしき事件が起こりました。その後、青野さんは理事を解任されました。「疑わしきは罰せず」という常識は、青野さんには無かったようです。残念でなりません)

印象に残ったところをいくつか。
P61 Q プロになれなかった奨励会員の第2の人生は?
A 私の弟子のS君は、勝っても負けても退会という三段リーグの対局で、初手を1時間考え、なにも指さずに投了して去っていった。誰にも挨拶なしにである。マナーとしてはよくないが、私はそういうことより、ただひたすら<自殺などするなよ>の思いだった。
・・・ここは重くて、読んでいて気が落ち込みます。

P78 Q 棋士のふだんの勉強法は?
A プロ同士の練習将棋では、賭けるということではなく、負けたほうが勝ったほうに授業料を払うというやりとりがあった。
・・・ここはかなり笑わしてもらいました。言葉使いを変えただけで賭けてる(笑)

P196 Q 本で勉強するのと実際に指すのでは、どちらが強くなる?
A これはズバリ、両方同じくらい時間をかけてやらないと、バランスの悪い将棋になるおそれがある、と回答したい。
・・・これは当たっているでしょうね。

誤字などの箇所
P15 × 取った石の数で勝敗を争う囲碁   〇 囲った地の数で勝敗を争う囲碁
P77の(カッコ)の中でパーセンテージを表したところ、羽生と森内の勝率の差が0.08パーセントという書き方だが、これはおかしい。そんなに少ないはずがない。
P155 × 渡辺竜王とポナンザ戦  〇 ボナンザ戦
頂(いただき)へ 藤井聡太を生んだもの
中日新聞文化部 岡村淳司 編著  中日新聞社 発行  2018年3月17日初版発行 1200円+税
評価 A  コンセプト<藤井聡太に関わった周辺の人物を取材>

この本は図書館で借りました。また藤井聡太本か、どうせ同じようなことが書いてあるんだろう、と思っていましたが、この本は藤井本人よりも周りの人物、それもアマチュアを主に取材してあります。ですので他の本と内容がかぶっていません。
よくここまで調べたなー、と思える取材範囲の広さです。取材対象になった人がとても多い。
個人的には、ネットの24のことが書いてあり、席主の久米さんの写真が見れたのが高ポイント(笑)

藤井聡太はたしかにラッキーな環境に生きています。まず始めに祖母に将棋を教わった。祖母は初心者なので聡太が勝てる。
次にそこそこ指せる祖父に教わった。
自宅から車で5分のところに「ふみもと将棋教室」があった。そして東海研修会もあった。杉本という良い師匠がいた。
ただし、ライバルと呼べる相手はいなかった。強くなってからの練習相手も限られているように見受けられた。

本書のあとがきに「藤井五段がプロになったのは間違いなく天賦の才によるものだろう。ただし、中学生でプロになれたのは、早くから才能を発掘して育てる土壌をつくりあげた東海棋界の熱意があってこそだと日々の取材で確信した。」とあります。
本書を読んでいて、私も「そうだなー、これ、プロだけじゃなくてアマチュア(元奨を含む)たちもそうとう頑張って普及・指導をやってるな」と思わされました。

新聞記者の取材力を見せられ、プロの棋士というのもすごいが、プロの記者というのもすごいものだと、つくづく私は感心させられました。

誤字が一か所 P122 × 二つ目の黒星を献上  〇 二つ目の黒星を喫する
四間飛車がわかる本
高野秀行著 浅川書房 最強将棋レクチャーブックス
1400円+税 2008年6月30日初版 2016年1月10日第3刷発行
難度 ★★★★ 評価 B
コンセプト<四間飛車vs居飛車急戦の定跡本。高野プロがわかりやすく説明することに挑戦した>

もう11年前の発売された本のレビューを今頃することになりました。
Amazonで評価がとてもいいので最近、買ってみたのです。

この本、いいところと悪いところの両面がありました。
まず良い点から。
・親しみやすい言葉で著者の考えが述べられており、読みやすい。
・各章の冒頭にテーマ図と、進行の結論が書いてあるので、分かりやすい。
・各図面の下にも、解説が書かれてあり、分かりやすい。
・次の一手問題がときおり、はさんであり、読者に考えさせる手法が良い。
・各章の終わりにまとめが書かれてあり、分かりやすい。

悪いところ
・とにかく、教えようとしている定跡手順が深すぎて、難しい。
・対象棋力を初心者~四段としてある(本のカバー)が、初心者にこの本は難しすぎて地雷。
・玉頭銀の成功例の図に疑惑あり。

良いところもたくさんあるのですが、とにかく有段者向けの内容。
「まえがき」に「弱い人向けにできるだけ易しく書いた」ということが強調されているのですが、内容はバリバリの、一手の妥協も違いも許さぬ、修羅のごとき硬派な手順のオンパレード。
はっきり言って、私は打ちのめされました。私は初心者向けの定跡本にすら大苦戦するのか・・・。という挫折感を味わいました。

でも、最後までなんとか読めたので、良い本なのですが。面白かったんですけどね。いかんせん難しかった。
私にはこの本は手順を暗記するのではなく、出てきた手筋を参考にするという使い方がいいようです。

この本を読んでもらいたいのは、これから定跡本を書く人です。
本の構成や、なるべく言葉で説明する手法が参考になると思いました。

疑惑のP133の玉頭銀の成功例の図を張っておきます。9ページかけてこの図にたどりついてるので、重要な図となっています。
今、先手が▲2六飛と手持ちの飛車を打った局面。解説には「玉頭銀成功の図。図で△8九飛成には▲3四銀で十分」と書かれてあります。
しかし、激指15はPro+5の探索深さで-384で後手有利の判断。
将棋神やねうら王のtanuki-2018も、3分考えて711点ぶん、後手有利の判断。

将棋「観る将になれるかな」会議
著者 高野秀行(プロ六段) 岡部敬史(ライター) さくらはな。(漫画家)
扶桑社新書 2019年7月1日 初版第1刷発行 920円+税
評価 A  コンセプト<観る将のススメ>

前作、将棋「初段になれるかな」会議の続編。
飲み会でのトークが出発点のこのシリーズ、やはり第2作はこうなったかという感じ。
もう、上達は他の本にまかせればいいよね(笑) 上達するより観る将となり、雑学を学ぼうというコンセプト。

本から出ている雰囲気がいい。著者の3名が楽しんでいる様子が伝わってきて、こっちまで楽しくなる。
わいわいと本を作る、こういう形式の将棋本があってもいいよね。評価は甘めだがAとした。

誤字が二か所。
P73 4四に打った角で  ・・・盤上の角を動かしたので、「打つ」は間違い。
P106 電脳戦  ・・・ 「電王戦」が正しい。 
教養としての将棋 おとなのための「盤外講座」
尾本恵市・梅原猛・羽生善治・清水康二・飯田弘之・熊澤良尊・安次嶺隆幸・大川慎太郎 著
講談社現代新書 880円+税 2019年6月20日第1刷発行
評価 B コンセプト<盤外の様々な知識をオムニバス形式で紹介>

6章からなる、将棋に関する雑学本となっています。

第1章の梅原さんと羽生さんの対談。読んでいると「ふんふん、なるほど」となるのですが、テーマが決まっていないため、話があちこちに広がり、読後に「いったい何の話だったんだろう」と私はなってしまいました(^^;

第2章は考古学者から見た将棋の歴史について。今の将棋の原型は平安時代、11世紀にできたとのこと。
こういう話もいちおう知っておきたかったので、勉強になりました。このくらいの難度の書き方でもう私にはギリギリ理解できる範囲です。

第3章はボードゲームの面白さを公式で表そうという、飯田博士による論文みたいな文章。
・・・ヤバいくらい、私には分からないんですけどorz √(平方根)を出してきますか。
でも言いたいことを文章でも言ってくれてるので3割くらいは理解できました。

第4章は駒師による駒作りの話。どうやって将棋の駒を作っているのかを文章と写真にまとめてます。
純粋に「へえー」ってなりました。この駒師さんの作った書体の「無双」というのが私はすごく気に入りました。

第5章は教師の体験談で、子供に将棋を教える話。「負けました」と言うことを「かっこいいこと」と教えるやり方。
これはほんと、私も同感で、「将棋は負けたほうが偉いのだ」というのが私の常々思っていることです。
勝って気分よくなれるのは負けた人のおかげです。ただしアマチュアの話であり、プロはまた別。

第6章は観戦記者の大川さんが「テクノロジーの進歩と観戦記」について語っています。
いつもながら安定感が抜群の文章力でした。
でも気になったのが、「2019年で最強のソフトとトップ棋士が戦ったら、平手ではもちろん、飛車落ちのハンディをもらってもプロ棋士が勝つことは難しいかもしれない。」と書いておられること。
飛車落ちなら、さすがにプロが勝つんじゃないかな? まさか飛車落ちで負ける? ・・・うーむ(^^;

図面は3枚のみ。(内訳は煙詰めとその詰め上がり図。あともう一題、詰将棋)
評価BかAかそうとう悩みました。テーマがバラバラというのがBにした理由となってます。でもどれもそれなりに面白い話題でした。
「序章」と「おわりに」もうまく書いておられます。時間とお金に余裕があればどうぞ。
弟子・藤井聡太の学び方 
杉本昌隆著 760円+税 PHP文庫 2019年4月9日 第1刷
評価 S コンセプト<杉本さんは師匠として藤井聡太にどう接したか>

奥付に「本書は2018年2月にPHP研究所より刊行された作品に、加筆・修正したものです」とあります。

本書は図面は一切なし。「杉本さんによる、師匠はどうあるべきか論」になっています。
これが実に素晴らしいと思えました。
P42「これまで先人たちが培ってきた勝率のいい指し方や、型にはまった手筋を教えても、(藤井には)百害あって一利なしだと思ったのです。」
杉本さんのスタイルは、この一文に凝縮されています。とにかく、「よけいな手だしはしない」これが杉本師匠の藤井に対するモットー。
とりわけ技術的なことは教えない。これが随所に書かれていて、気持ちいいほど。
私はこの考えに大賛成です。こと将棋においては、凡人が天才に技術的なことを指導すべきではないと思います。

杉本さんの半生も書かれていて、面白いです。板谷進師匠との昔の思い出話や、振り飛車党に転向した話。
そして藤井以外の、辞めていった弟子の話も実に興味深く読みました。

師匠はどうあるべきか論では、まず弟子がどんな人材なのか見抜くことが必要で、それに合わせてどういうアドバイスをするべきかが変わってくる、と書いてあります。これが当然の意見に思えて、なかなかできない。
一般的に、師匠やコーチや先生が持論を頭ごなしに、すべての弟子や生徒に押し付ける。そうなってしまいがちだからです。

杉本さんは技術的なことを教えないかわりに、弟子が将棋に集中できるように環境つくりに気を使っておられ、模範になる師匠だと思いました。「師匠である自分が真摯に将棋に打ち込む姿を見せることが、弟子に一番伝わる指導法となる」など。

本書で一番感動した箇所を抜き出しておきます。プロ棋士になるために奨励会に入り人生をかける意味はあるか、ということころです。
P208「納得づくで挑戦し、たとえば大学進学を機にプロになることをあきらめる。でも挑戦しない子よりも、はるかにみんな納得して奨励会をやめていきます。(中略)大人の側はどうしても、プロの道を目指してプロになれない場合、何年かを無駄にしたと考えがちです。でも人生の一時期を自分の夢に捧げるのは、はたして無駄でしょうか。テレビを見る時間や友達と遊ぶ時間はなくなるかもしれません。でも何かを犠牲にすることを覚悟した上でなら、挑む価値のある世界だと私は信じています。」

ここは一番私の琴線に触れました。でもただ、奨励会時代が5年までくらいならこの意見でもいいんですけど、10年以上かけてプロになれないとなると、それは厳しいと思いますが・・・。

一か所だけ、それは違うだろうというところがあります。
P258「将棋を指すようになると、物事を論理的に考えるようになるので、算数・数学が得意になります。」
という箇所。これはそんな言いきれるような話ではないので、信じられません。
私は算数・数学がめちゃ苦手ですから(笑) 将棋は大好きでも算数が苦手というパターンも絶対あるはずです(^^;

全体にとても面白くて一気に読みました。いろいろな藤井聡太の関連本が出ていますが、これは特におすすめです。
藤井聡太の鬼手 デビューから平成30年度まで
日本将棋連盟発行 著者は書籍編集部 2019年5月31日初版第1刷発行 1540円+税
評価 S  難度 ★★~(棋力の低い人でも、チャレンジして読んでみる価値あり)
コンセプト<藤井将棋のエッセンスを堪能しよう> 

鬼手は、「きしゅ」と読むものなんだそうだ。 
藤井の絶妙手のオンパレード。楽しい。面白い。素晴らしい。ビューティフル。ワンダフル。
冒頭から、29連勝を一局ずつ追っていってるので、読んでいるとこっちまで連勝の臨場感にワクワクしてくる。

次の一手形式となっている。藤井がその局面でどう指したか、読者がまず考えることができる。
「鬼手の背景」という説明文があるので、それをヒントにすればいい。
この説明文がかなり良い具合のできだと思った。今どういう局面なのか、把握するのにすごく役立った。
中には、「それを言っちゃー、答えを言ってしまったも同然ではないか」というものもあるのだが、棋力の低い人に向けて書いてあると思えば、しかたないだろう。
そうかと思えば、「そんな軽い説明ぐらいじゃ、次の手がわかるわけないだろう」という局面もとても多い。

私の正解率は2割ぐらいだったか。多くのものは、めっちゃ難しい。
藤井の指した次の一手に正解しても、その後の読みまで正確に見抜くのは至難の業だ。無理ゲーというやつだ。
自分と藤井聡太の棋力の違いをあからさまに感じることができた(笑)

解説で10手くらい一気に符号の連続で進めていることも頻繁。そこは読み手にある程度の棋力が必要とされる。
でも、棋力が低い人も、ソフトを使えば助けになると思う。私は激指を5~6回使った。
読み手は、どうせ何割かは理解できないことを前提にしよう。
解説はもっと詳しく書くのが理想だが、1題につき1ページに収めるとなるとこれが限界だろう・・・。

もう名人がソフトに超えられたが、プロ将棋界には藤井聡太がいる。
これであと数十年は将棋連盟も安泰だろう。藤井聡太の将棋は、そう思わせるものがある。

「藤井の指し回しを堪能したいけど、棋譜並べってめんどうだからなあ」と思っているファンにピッタリな本だ。まさに私にうってつけであった。

さて、この本の問題点。
表紙の写真、先手後手のマークの表示に問題がある。
絶妙の☗4四桂、戦慄の☖7七同飛成、棋史に残る☖6二銀
これが正しいのだが、☗と☖が逆に見えてしまうのだ。
表紙の写真では藤井が黒の背広を着ていて、そこの上に文字が白抜きで書いてある。
「反転」という書き方だ。その反転を☗と☖にもしてしまったものだから、逆に見えてしまう現象が起こっている。
本の中でもその反転の現象がある。
「図は91手目☖4一銀まで」などと101局面分、あるのだ。
それが、後手が指し終えた局面のはずなのに、先手が指し終えたかのようなのだ。これは失敗だ。
こんな基本的なところでミスするってどうなの。
(幸い、説明文と解説文は反転されていないので大丈夫)

あと、訂正すべきところ。
P10 ☗2一銀不成から飛車を × ・・・☗8一銀不成から飛車を 〇
P10 プロ2勝目をあげた × ・・・プロ3勝目をあげた 〇 
(以上2箇所はAmazonのレビュー者の指摘)
P118 後手が悪いわけではない ×  ・・・先手が悪いわけではない 〇
P179 先手陣の急所を見抜いた ×  ・・・後手陣の急所を見抜いた 〇
P166 ☗4四香から、一気に × ・・・将棋DB2で調べると、☗4五香が正しい 
アマチュアの将棋上達法 (棋書レビュー)
clickshogi著 電子書籍 Kindle 版 2019年5月2日発売 250円 分量38ページ
評価 S  対象棋力は、主に中級者以上向けだが、かなり幅広く対応

「将棋が上達したい」と真剣に考えているアマなら、250円を払って読むべき本です。
特に「どういう勉強法がいいんだろう」と悩んで、レートが長く停滞している人にピッタリです。
図面はいっさい出てこない上達指南の理論本です。

私はこの本の著者さんと似た将棋歴であり、本書に書かれてあることに「そうだ」と同意したり、「そうか」と気づかされたことが多くありました。9割方、この本に書かれてあることは正しいと私には思えました。

ただ、私自身は何年も前から、「指す将」から「観る将」に移行しました。
それどころか今は「燃え尽き将」となっているので、この本が正しいことを身をもって証明することができないのが残念です。
24で指しまくっていた2000年頃の私にこの本を読ませたいです。
まあ私は当時、実戦対局や友人とのチャットなどを楽しみまくったクチで、それはそれで楽しかったですが・・・(^^;

この本を読んだら、上達する方法は分かります。
著者さんの独りよがりな点も少しありますが、それは個々に自分なりにアレンジしていけばいいんです。
結局、本書の内容を肯定しようが否定しようが、どっちでもいいんですよ。この本が考えるきっかけになれば。
実際に著者さんが何をどれだけやったか、が書かれていないのがやや残念ではありますが。

よくこれだけの内容を読みやすくまとめてくださった。
この本は将棋界の宝だと思います。評価Sです。
clickshogiさん、Good Job!!

(細かい点ですが、級を表す数字ですが、五級とか二級と書かれてありますね。
そこは漢数字ではなくアラビア数字に直すべきだと思います。)
こんなレベルの低い将棋見たことがない!
安藤たかゆき著 Kindle版 756円 4話までネットで無料で読める
2019年2月21日 電子書籍発行 イーストブレス社
評価 A

ド素人たちが将棋を指す様子をまざまざと見せつけてくれる、貴重なマンガです。
囲いを知らず居玉のまま、駒の利きを忘れる、角交換のとき取り返さず角丸損、そして二歩。
面白いったらありゃしない。
特に1話が私にとってはツボに入り、10回くらい読みました。

この作品、賛否がクッキリと分かれたということですが、私は真ん中のストライク。
個性的な絵も私は好き。
この作品には、ほとばしる熱いパトス(情念)がある。光るギャグセンスがある。

ただ、3話あたりから下ネタが入ってきたのが残念といえば残念でした。

そして、あらためて将棋というゲームの「受け皿の広さ」には、感心させられます。
「将棋って、すごく弱くても楽しめるゲームなんだ」ということです。
将棋は奥が深いだけじゃない。初心者でも充分楽しめる包容力を持ったゲームなんだ、ということに気づかされます。

この作者のファンになり、「どどどもる私。」と「こころを病んで精神科病院に入院していました。」も読みました。
どちらも興味深く読ませてもらいました。どれも、すごく面白かった。「こころを~」は私はS評価です。おすすめ。
(精神科病院に入院といえば、先崎さんを思い出しました。)
安藤たかゆきさん、これからますますの活躍を期待しています。
・・・と書きつつ、「安藤たかゆき」で検索すると、ニコニコ静画で未発売の作品が見つかりました。読もうと思います。
将棋「初段になれるかな」会議
著者 高野秀行(プロ六段) 岡部敬史(ライター) さくらはな。(漫画家)
扶桑社新書 920円+税 2019年1月1日第1刷発行
評価 B  推奨棋力 ★☆ (初級者向け)

この本はタイトルに「会議」とある。そして帯に「シンプルに強くなる方法、みんなで考えました」とある。
だから、私は「どういう勉強法をすれば、初段になれるのか、アマとプロが集まって侃侃諤諤(かんかんがくがく)」、議論した本なのだろう」、と思って購入。
ところが実態は違っていた。一言でいうと高野プロの意見ばかり。高野プロの手筋講座と言ってもいいような内容だった・・・orz

聞き手のアマ2人は将棋ウォーズ3級と1級程度の腕前なのだが、この人たちは高野先生の生徒と言うべき役割。
高野プロのアドバイス集とでも言うべき内容となっている。どこが「会議」なのか。「議論」になっていない。タイトルを「高野教室」にしたほうがいい。

まあでも、悪い本ではないのだ。丁寧な解説で、これからアマ初段を目指す初級者が、読むと参考になると思う。
きちんと愛情をもって書かれた本であることは確か。「詰みより詰めろを意識」とか、「差がないときは攻め急がない」とかいうアドバイスは的を得ていると思う。プロが指すような横歩取りの戦型は、高野いわく「やっちゃいけません、あんな難しいの」というのは私も同意だ。

ルールを覚えた次に読む本がなかなかないが、その隙間を埋める本として存在意義がある。
読みやすさは二重丸。きちんと作られた本なのに、タイトルのつけ方でもったいないことをした。 
四間飛車上達法 
藤井猛著 浅川書房 2017年12月25日初版発行 1400円+税
評価 A  難度★★~★★★★ コンセプト<最速有段者への道!藤井理論で四間飛車の真髄を体感せよ>

本書は、みなさんがすでにAmazonや棋書ミシュランで大抵のレビューはしてある。私はそれらとかぶらないようにしたい。

この本のカバーの後ろのページによると、本書は中級向けということだ。
そして、初心者~四段向け、とも書いてある。わざと棋力対象を広くした内容となっている。
私が知りたいのだが、実験で、初心者にこれを読ませたらどうなるかということ。
駒の動きを覚えた、一手詰みを覚えた、対戦もそこそこやった、じゃあ次は戦法か?と普通はなるだろう。
そこで早々にこの本を読ませちゃう。
すると何人かに一人くらいは、四間飛車の真髄をあっさり悟り、ぐんぐん棋力を伸ばすのではないかということ。
本書はそういう期待をさせてしまう内容だ。
本書は他の四間飛車関連本を読むときの助けにもなる。

もちろん私自身、面白く読ませてもらった。第2章の急戦編は最高に楽しかった。
持久戦編は、実戦編が「もっと典型的な棋譜はなかったのか」と思えてしまった。

評価がSでなくAにとどまった最大の理由として、やはりボリューム不足はいなめない。
藤井先生が何度も言う「四間飛車の幹(みき)」or「四間飛車の軸(じく)」が作られるにはこの分量では足りない。
まあそこは他の本で補えということなのだろう。

対抗形の四間飛車側というのは、軸を作りやすい戦法なのだと思う。
この軸というのが作られてないと、いつも行き当たりばったりになってしまう。
実戦が事前の研究(軸)どおり行かないのは当然なのだ。しかし軸を作っておくことで、応用が利く。
野球のバッティングで言えば、まずど真ん中のストレートを打つ練習をする。
あるいはティーバッティングやトスバッティングで打撃のフォームを固める。
それができてのち、変化球を打つ練習や実戦をする。上達を考えれば、これが当然だ。
将棋もそうあるべきだというのが藤井理論の真髄だと思う。

S評価にしたいのだけど、ボリューム不足と、「相振りはどうすんねん問題」があるんで、Aになってます。

以下、初版本で私が確認した誤記
↓ P92 D図 ▲6六飛までの図面。後手番。
「△6四歩には▲7四歩」と本文にはありますが、▲7四歩以下△同銀▲6四飛△6三銀▲6六飛と普通は進みますが、それは元のままの局面で千日手コースです。振り飛車が有利なので千日手は損です。△6四歩には▲7四歩以外にすべし、との激指14とtanuki-2018の検討結果です。

四間飛車上達法P92

P151 第10図 後手の持ち駒に歩があるはず。(図面は省略)
先崎学&中村太地 この名局を見よ!21世紀編 
先崎学・中村太地著 
マイナビ将棋BOOKS 1540円+税 2018年11月30日 初版第1刷発行
評価 A  難度★★☆~  コンセプト<2人が名局を14局選んでポイントを解説>

まず、前作の「20世紀編」を私は買っていない。
この本を読むにあたり、私は盤と駒を用意し、「さあ、久々に棋譜並べをするぞ」と気合を入れていた。
しかし、読み進めるにしたがって、「別に盤駒は必要ないわ」となっていった。

この本の一局ずつの取り上げ方は、一番見せたいテーマ図を冒頭に持ってきていて、なぜその一局が選ばれたのか、読者にわかりやすくなっている。
符号に対して図面の割合も多い。普段「将棋世界」を読んでいる人なら、「図が多いのでありがたい本だな」と思えるだろう。
そのため私は、わざわざリアル盤駒を出して並べようという気が全然起きなかった。
ありがたいといえばありがたいが、拍子抜けといえば拍子抜け。
この本は棋譜並べ用の棋譜集ではなく、読み物だ。(総譜も章末には載ってるが)

冒頭に、次の一手を考えさせる問題図(そこがテーマ)がある。このやり方はとてもいい。読者が自分の頭で考える機会も必要だ。
先崎と中村太地のコンビネーションは安定している。感情を出しボヤく先ちゃんに太地が理詰めでフォロー。グッド。

この本の欠点としては、図面と次の図面が符号ではつながっていない箇所がある。(つまり読者は、突き放される)
そして解説がどの図面からの話をしているのかが、わかりづらい箇所も少々あった。

本の難度だが、5手詰ハンドブックをがんばれば解けるくらいでないと、この本を理解できるかが不安だ。
ただいつも思うが、私は24の初段付近であり、私にはこの本は楽しく読めた、という他ない。
低級者が理解できるかは、実際に低級の人が読んでレビューするしかないと思う。

14局の中で私が1番面白かったのが、▲松尾vs△藤井猛の一局。(2014年7月17日・順位戦B1)
これは藤井猛の「居飛車版・藤井システム」と呼びたくなるような指し回しが炸裂。
先崎と太地、よくぞこれを取り上げてくれたと、拍手ものだ。パチパチ。
2番目は中田功の三間飛車。▲elmo対△Ponanzaも良かった。

先崎さんは「21世紀編というタイトルをつけるということは、もう先はないようである。俺たちの旅はまだはじまったばかりだ!といわせてもらって、シリーズ化を秘かに画策したい」と書いておられる。
棋譜というのは、料理で言えば「食材」だと思う。食材をどう料理するかは、先崎さんのような語り手たる「シェフ」にかかっている。
良質な棋譜はもう山のようにあり、今も毎日量産されている状態だ。
先崎さん、これは美味しい宝の山を見つけたかもしれん。          
出版社・連盟・対局者・著者・読者、全員がWin-Winの関係でシリーズ化なるか?
ひと目の角換わり 
長岡裕也著 マイナビ将棋文庫 2015年2月初版発行 1100円+税
難度 ★☆~★★★★(初級から有段向け)
評価 A
コンセプト<角換わりを次の一手形式で学ぶ>

次の一手が180題。角換わりの基本、棒銀、早繰り銀、腰掛け銀の4章からなります。
最初のほうは、簡単な問題が続いており、「24の有段者をナメんなよ」と私は感じて解いていました。
しかし、腰掛け銀に進んでから、どんどん難しくなりました。
最後のほうは「すいません、私は角換わりをナメてました、もう難しい問題はかんべんしてください」となってしまいました。
本当にムズイ、途中から手に負えない・・・。ただ、長岡先生も第166問では「ここからは定跡化されている非常に難しい終盤戦となります。一手一手正解するつもりではなく、盤にならべながら雰囲気を感じ取ってください」と書いておられます。
24の高段者でも全問正解は到底無理でしょう。
相腰掛け銀は盤全体に戦いが及び、考えることが非常に多い。ちょっとの駒組みの手順前後で攻め方が変わってきます。
そしてギリギリの攻めをつなげる技術も要求されます。
本のタイトルが「ひと目の」ということなのに、この難しさはどうなってんの(^^;

この本では定跡はあまり扱っていません。たとえば棒銀で△5四角と打つ変化などは全く触れられていないです。
角換わりの定跡を学ぶにはまた別の定跡本が必要。この本は次の一手本と割り切るべきです。
角換わりでの次の一手本はこの本ぐらいしかないので評価が高くAとしました。

角換わりのエッセンスが詰まっていると感じました。
今私は一周しただけですが、何週もして身につけるべき本だと思います。
コンピュータは将棋をどう変えたか? 
西尾明著 マイナビ出版 2018年10月31日初版第1刷発行 1800円+税
難度 ★★★★~ コンセプト<コンピュータの新しい指し方をまとめた本> 
評価 A

コンピュータは(主にプロの)将棋をどう変えたか。ワクワクして読みました。
内容は期待どおり。勝又教授の新手年鑑に似ています。
本書はプロの最先端の研究と言ってもいいので、凡人が理解するのに苦労します。それはもう仕方ないですね。
中でも激ムズのところは、相矢倉。ここは難度最高で、私の脳レベルではどうにもならず、もう投げ出しました。
そもそも相矢倉の従来の定跡がわからないわけだから、それをコンピュータがどう変えたか、なんて・・・。

ただ、たくさんコンピュータの新手を見れるので、必ずしも理解できずとも私はそれなりに楽しみました。

振り飛車についてのところはかなりボリューム的に寂しく、21ページ分しかありません。(全310ページ)
あとは全部相居飛車についてです。

もうね、コンピュータがプロに影響を与えまくり。新手、新戦法、新構想が、たっぷりです。
コンピュータが全部の戦型に影響を与えてるのがわかります。

電王戦の棋譜をはじめとして、私が知っている棋譜がかなり紹介されています。
知っている棋譜が出てくるとうれしいのはなぜ(^^;
西尾はフラッドゲートからも大量に取材しており、西尾さんはよくがんばるな~と尊敬してしまいます。

これだけコンピュータが新しい指し方を示すと、ため息が出ます。
人間が自分たちの考えだけで指していたら、あと100年かそれ以上、気づかなかっただろうと思える指し方をコンピュータがバンバン見つけてくる。人間はそれをありがたく拝借する。
今後の将棋は、人間はコンピュータの下請け作業をやっているようなものになってしまいませんかね?
これからどうなるのか、心配してるんですけど。

ただ、まだしも救い、なのが、コンピュータによって作戦の幅が狭まるのではなく、あれも有力これも有力、となってきていることです。将棋の可能性はまだまだ広い。それをこの本から感じたのは良かったです。
リボーンの棋士(1) 小学館 2018年10月3日初版第1刷発行 591円+税
鍋倉夫著  棋譜監修 鈴木肇
評価 A

毎週月曜にスピリッツで連載されています。しかし休載される週も多いです。
そしてスピリッツ自体が合併号のときもあるので、毎週は読めません。
私はコンビニで立ち読みするのを楽しみにしているのです(^^;
で、コミックスが出たので買って読んだら、やっぱりとても面白い!買って良かった。
ちなみに私の母にも無理やり読ませたところ、かなり好評でした。

(いまのところ)このマンガは、挫折を経験した人たちの人間模様を描いてます。深い心理描写が持ち味。
元奨で暗い性格のほうのキャラがツボに入りました。いかにも居そうな性格で。
そして、東大出のエリート商社マンも、ナイスなキャラ設定。奨励会に挑戦することを許されなかったという経歴。このキャラの少年時代のエピソードは心に沁みました。

私のレビューよりも「棋書ミシュラン」のレビューが素晴らしいので、そちらを読んでください。
このマンガ、これからもこの調子で頼みます。
ここから安易なサクセスストーリーにならないようにしてほしいです。
サブキャラでのスピンオフ作品を今から期待してます。